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2026.10.08
【年金】“年金相談のリアル” 事実婚でも遺族年金はもらえる?「受給の明暗」を分けるポイントとは(菅野美和子氏)
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公開:2026.10.08
本シリーズでは、3,000件を超える年金相談に向き合ってきた経験から、現場でよくある質問や誤解をテーマ別に紐解いていきます。遺族年金は申請したが受給できなかった、諦めざるを得なかった、というケースが目立ちます。しかし、ちょっとした知識、準備で受給につながることもあります。多くの遺族年金相談で受給につなげてきた事例からそのポイントを確認していきましょう。
相談者:内縁関係で長年同居してきたパートナーが闘病の末、亡くなりました。事情があり、彼には法律上の妻がいます。やはり私は遺族年金を受け取れないのでしょうか?
菅野:遺族年金の受給は、法律婚・事実婚に関係なく「生計維持関係」があったかどうかが問われます。客観的な証拠があれば、受給につながる可能性が高まります。ただ、さまざまな事情で証明が難しかったり、時間がかかったりする場合も多いので、申請の前にまずは専門家に相談することをお勧めします。
私に依頼される遺族年金に関する相談は事実婚のケースや、法律婚で長年別居していたケース、DVに遭っていたケースなど、なんらかの事情があり、受給が難しいと思われる例ばかりです。経験上、初回の申請で不支給とされると、再申請(審査請求)で覆すのは困難ですし、年単位で時間がかかります。それだけ家計に影響する可能性も高くなります。しかし、少しの知識と準備で、受給につながりやすくなるポイントがあります。
最初に確認することは「保険料納付要件」です。年金保険料が未納で免除の手続きをしていなかったケース、ほかの要件は満たしているのに納付要件だけ満たしていないために遺族年金が受給できなかった、という例が見られます。遺族年金の保険料納付要件を判定するのは「死亡日の前日において」ですので、普段から保険料を納付する、納付できないときは免除の手続きをするなど、気をつけておきましょう。
事実婚を証明するのに最もスムーズなのは、住民票の続柄に「妻(未届)」、または「夫(未届)」と記載してもらうよう届け出ることです。この住民票で同居していた事実が証明されるので、他の証明類は原則として不要になります。いろいろな事情をクリアしてから婚姻届を出そう、と思っていて結局そのまま時間が経過する、というケースもありますが、後から続柄変更も可能なので、まずはここから行動してみましょう。
この点を知らずに「事実婚だから遺族年金は受け取れない」と思っている人、「そんな届出の仕方があるなんて知らなかった」という人が結構います。役所の窓口では個人の事情までは聞きませんから、事実婚のカップルなのか、親戚や単なるルームメイトなのかまではわかりません。「未届の妻・夫として届け出るための証明がないのですが」、と心配する人もいますが、原則として自己申告でよく、特別な証明書類は必要のない自治体が大半です。これは若い人で結婚する前に同棲をしてみる、という場合などで住民登録する際にも知っておきたい点です。
また、高齢の再婚で家族が反対するから、相続でもめたくないから、といった理由であえて入籍せず、事実婚のままという人も少なくありません。実際、遺族年金ではそういう方からの相談が目立ちます。このように、事実の積み重ねが大切になります。
生計維持関係があり、同居していたことを証明するための補助書類としては、連名での賃貸契約書、連名での郵便物、入院時の同意書(続柄欄)、病院・施設側の証明などがあります。冒頭に紹介した相談の場合、法律上の妻か、事実婚の妻か、どちらが遺族年金の受給権者になるかが問題になります。
事実婚の妻が年金請求した場合、法律上の妻にも事実関係の確認のため、連絡が入ります。過去、事実婚の妻から依頼された案件で、法律上の妻から「夫からは毎日電話がありました」、だから夫婦関係は破綻していなかった、と主張されたことがありました。夫は亡くなる直前、病院に入院していたので、その病院に問い合わせをして、自分で電話をかけられる状態でなかったことを病院の日誌から証明しました。結局、事実婚の妻側に受給が決定されました。
事情があって、同居していても住民票は別世帯、別住所になっている場合。これはさらに受給の難易度が上がります。私が社会保険労務士(以下、社労士)として、顧客から遺族年金の手続きの依頼を受ける場合は、領収書、生活状況の記録、第三者の証明などで同居や共同生活の実態を示す証拠を、可能な限り多角的に収集し、所定の窓口に提出します。病院などで付き添ったりお見舞いに行ったりしていれば、第三者から見て「夫婦」に見えるため、実態として証言してもらうこともできるでしょう。
法律上の妻に住所を知られたくない、という理由から、夫が自分の経営する会社の住所に住民票を置いたまま、長年経過しているケースがありました。事実婚の妻は住民票からは同居を証明できず、生計維持の実態も不明ということになり、結局不支給になりました。事情は理解できますが、いかに客観的に証明できるかが大切か、わかる事例だと思います。
法律婚で別居の場合、「私は戸籍上の妻だから、夫が亡くなったら当然遺族年金をもらえる」と考える人がほとんどです。しかし、別居状態のままでは生計維持関係の証明が必要になります。生活費を夫が出していた場合、仕送り記録(通帳)、病院への見舞いや看取りの記録、葬儀手配の事実などでその関係性を補強して申請するのがポイントになります。
20年という長期間別居しているケースを扱いましたが、前述のような交流や証拠を積み上げていくことで受給に至ったので、諦める前に相談しましょう。
かなり困難なのは、DVが絡むケースです。居場所を知られたくないという理由からシェルターに滞在するケースなどです。5年ぐらい経って、夫が亡くなり、受給を申請したものの、初回は不支給となったケースを扱いました。当然生活費などの仕送りはなく、連絡もしていませんでしたが、行政や支援団体などへの相談・保護記録が決め手になり、不服申立てで受給が決定したのです。ただしこれには約2年かかりました。本人には責任がないので気の毒なのですが、長期化の可能性が高くなるのは否めません。
ちなみに遺言書は遺族年金受給決定の直接の要件ではありませんが、特に複雑な事例では強力な補助証拠となり得ることも知っておきたいポイントです。
このように遺族年金の場合、単に年金を受給する手続き、というだけの話ではなく、受給につながるまでに、どうやって今までの夫婦関係を証明していくかが問われることにもなります。「不支給」という判断が出ると、そこで諦める人がほとんど。自分で不服申立てをする人もいますが、やはり社労士などの専門家に依頼するほうがいいでしょう。
もちろん、いったん不支給と判断されてから、再申請で支給が認められるのは簡単ではありません。最初の年金請求時にどれだけ手を尽くすかが重要です。最終的な判断はご本人に任せますが、遺族年金が収入の大きな割合を占めるようなら、家計に影響しますから、専門家の手を借りて再度申請してみるのも選択肢です。諦めず、まずは相談してみることをお勧めします。
CFP®認定者、社会保険労務士、すがのみわこコンサルティングオフィス代表
菅野美和子 氏
2002年独立開業以来、企業顧問のほか、セミナー講師、年金相談員等を務める。西日本新聞連載コラム「やりくり家計術」を担当中。著書に『ねんきん定期便がよくわかる本』『年金1年生』等がある。福岡市在住
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