FP・専門家に聞く
2026.07.16
【損害保険】大規模な自然災害が頻発する時代。火災保険料の値上がりは続く!?(竹下さくら氏)
Share
公開:2026.06.04
年金相談の現場では、「働くと年金が減るのでは?」という不安の声が後を絶ちません。本シリーズでは、3,000件を超える年金相談に向き合ってきた経験から、現場でよくある質問や誤解をテーマ別に紐解いていきます。第1回目は在職老齢年金について、2026年の制度改正を踏まえてお伝えします。
相談者:年金をもらいながらスーパーでパートをしています。会社から、「もう少し働く時間を増やすことはできないか」と言われています。だけど、「あまり働くと年金を減らされてしまう」と聞きました。私の場合、いくらまでなら年金を減らされずに働けますか?
菅野:収入と年金額から見て、働く時間を増やしたとしても年金が減らされる心配はほぼありません。希望する働き方をして大丈夫です。ちなみに、年金の減額は必ずしも損ではありませんよ。
2026年4月に「在職老齢年金制度」が改正されました。改めて自分の働き方に応じた収入と年金のバランスを見直すきっかけでもあります。
年金を受け取りつつ、仕事をしているシニアは少なくありません。そんな人からよく聞かれるのが「65歳になって年金をもらい始めるけれども、働き続けたい。そのときに年金を全額もらえて、自分の希望する時間働ける、“ちょうどいい働き方”って、給料はいくらまでですか?」といった質問です。
判断するキーワードとしてはまず基準額です。この基準額が4月から大幅に引き上げられました。
これまで年金が支給停止になる基準額は51万円(2025年度)でした。その基準額が65万円(2026年度)になり、これまでより多くの人が年金を減額されなくなりました(図表)。
出所:厚生労働省資料より抜粋
「いくらまで働いても大丈夫か」という質問をされると、まずは給料(収入)と年金額、働く時間を増やした場合は給料がいくらぐらいになるかをお聞きするのが基本です。ただ最大限年金を多く見積もってもその基準額(65万円)よりも明らかに少ないようなら「心配することはないですよ」とお答えしています。基準額のギリギリ、微妙な方にはさらに詳しくお聞きしますが、多くはおおよその見当がつくのが実際のところです。
では、この「年金が減らされるかもしれない」という不安はどこからくるのでしょうか。
かつて、在職老齢年金の支給停止の基準額が60歳代前半(低在老)28万円、65歳以降(高在老)47万円など、低い基準の時代がありました。そうすると正社員で働いているような人だと在職老齢年金の支給停止に該当するケースが珍しくなかったのです。そういった話を会社の先輩から聞いて、いつの間にか「働きすぎると年金が減らされる」という情報だけが一人歩きしたのかもしれません。また、「年金をもらいながら働いていると、年金がカットされる可能性がある」といった一般論的な報道に触れて不安になる人も多いようです。
こういった方にはおおまかな金額を例に出して説明しています。在職老齢年金に関係するのは厚生年金の報酬比例部分だけですが、相談者のようなケースだと老齢厚生年金が毎月15万円ある人はほとんどいません。例えば、パートの収入20万円、年金が 10万円、合計30万円とします。2025年度は基準額が 51 万円なので、収入を21万円増やしても減額されませんでした。さらに2026年度は65万円に引き上げられましたから、増やせる収入は35万円。パートの働き方でそこまで収入が増えることは滅多にありませんから、「パートの時間を増やしても大丈夫」といえます。このような説明をすると、自分のことと結びついて安心されるようです。
一方、もともと在職老齢年金の支給停止に該当する、あるいは境界線上の人からの質問には慎重な対応が必要です。私は中小企業の経営者のご相談にのるケースも多いのですが、役員報酬が100万円などという人もいます。そういう方に「今のままだったら全額支給停止になりますよ」と話すと、「では役員報酬をいくらまで下げたら年金が停止されずに全額もらえますか」と聞かれます。こうした相談には、年金事務所から正確な年金額を算出してもらい、そのうえで報酬をいくらにしたら年金額がどう変わるか、という試算を提示しています。個別条件に基づく支給見込額の試算が正確にできるため、年金事務所での確認は境界線の判断に必須といえます。とはいえ制度は変わっていくので、将来ずっとこのとおりいけるとは限らないことは念を押しておきます。
注意点はほかにもあります。4月改正といっても、実際に年金支給額に反映されるのは6月支給分だということ。これまで支給停止の対象だった人が4月の支給額を見て「年金が増えると思ったのに増えていない」とか、6月に「今までと年金額が違う」と初めて気がつく人もいるかもしれません。65歳以降も厚生年金に加入する人は厚生年金保険料が控除される一方、在職定時改定により毎年10月分の年金が増額される仕組みがあります。改定のタイミングはさまざまです。
予定していなかった一時金(ボーナス)などが出ることによって、想定より受給が減る事例もかつて経験しました。「どうして一時金をもらうと年金が減るんだ。年金が減るぐらいなら一時金をもらわなければよかった」と。そういう仕組みだということを説明するしかないのですが、事前説明が不十分だとトラブルになります。そのため、特に基準額の境界線上の場合は十分な事前説明が必要です。
通知(年金額のお知らせ)をしっかり読んでいない人も目立ちます。年に何度も通知が届く場合もあるので、さらにわかりにくくなっている事情もあります。通知には書いてあるのですが、65歳以降も厚生年金に加入する多くの人が単に「保険料が引かれるだけ」と誤解しています。そのため、「どうして65歳になって年金を受給しているのに、給料から厚生年金料が引かれるのか」という疑問になります。そういう意味でも通知文の読み方をガイドしておくとよいでしょう。
65歳はまだまだ元気です。人手不足のおり、やはりベテランの人に働いてもらいたいという企業もどんどん増えています。その中で、65歳になって、どうしようかなと迷われる方の多くが気にされているのが「年金」です。
「もう働きたくない」という人は別にして、働くことによるメリットはたくさんあります。多くの人は年金がカットされなくなっていますし、働くことによって、厚生年金に加入し年金も今よりも増やせます。私は老後のお金が心配で働くのが可能であれば「働くという選択を前向きに考えられたらどうですか」とお話ししています。「年金が減る=損」と考えるのではなく、“全体の収入で考える”ことが重要です。
| 第1回 | “年金相談のリアル” 「年金が減るのはイヤ。給料いくらまで働けますか?」在職老齢年金の不安に答える |
|---|---|
| 第2回 | 公開をお楽しみに! |
| 第3回 | 公開をお楽しみに! |
| 第4回 | 公開をお楽しみに! |
| 第5回 | 公開をお楽しみに! |
| 第6回 | 公開をお楽しみに! |
CFP®認定者、社会保険労務士、すがのみわこコンサルティングオフィス代表
菅野美和子 氏
2002年独立開業以来、企業顧問のほか、セミナー講師、年金相談員等を務める。西日本新聞連載コラム「やりくり家計術」を担当中。著書に『ねんきん定期便がよくわかる本』『年金1年生』等がある。福岡市在住
この記事の閲覧は
日本FP協会会員限定です。
ログインすると下記の機能が利用できます。
関連タグ
24時間中にアクセスが多かった記事です。
1週間中にアクセスが多かった記事です
先週1週間中にいいね数が多かった記事です
1週間中にコメント数が多かった記事です
FPトレンドウォッチ
2026.07.15
知っておきたい休職時にもらえる手当と給付金
FPトレンドウォッチ
2026.07.17
あなたの乗り方は大丈夫?自転車の「青切符」と「保険」の新常識
FPトレンドウォッチ
2026.06.04
キャッシュレス化はどこまで進んだ?統計でみるお財布事情
FP・専門家に聞く
2025.11.13
【生命保険】“働けない”は“死”よりも怖い!?関心が高まる就業不能保険(平野敦之氏)
FPトレンドウォッチ
2026.05.29
【若手社員必見】生命保険どう選ぶ? 0からわかるポイント解説
FP・専門家に聞く
2026.02.19
【住宅購入】不動産広告はここを見る!表示規約改正と省エネ性能ラベルで変わる賢い物件選び(橋本秋人氏)
FP・専門家に聞く
2025.07.24
【住まい】35年超の住宅ローン、その選択は本当に「アリ」?(有田美津子氏)