公開:2026.07.13

更新:2026.08.14

【暗号資産課税の見直し】申告分離課税適用後の税率はいくら?

ビットコインやイーサリアムをはじめとする暗号資産(仮想通貨)は、近年私たちの生活に少しずつ浸透しており、ニュースなどで価格高騰の話題を耳にして、興味を持ったことがある方も多いかもしれません。また、投資の選択肢の1つとして考える方もいるのではないでしょうか。

しかし、これまで多くの個人投資家が暗号資産への投資をためらっていた大きな理由の1つが「税金」です。暗号資産の取引で得た利益は、給与所得など他の所得と合算されて税金が計算されるため、利益が大きくなればなるほど税率も高くなり、所得税と住民税を合わせて最大55%という非常に高い税率がかかる可能性がありました。この税負担の重さが、個人投資家が暗号資産での資産運用を敬遠する大きな要因となっていました。

2025年末、暗号資産(仮想通貨)の税制について「2026年度(令和8年度)税制改正大綱」にて、抜本的な見直しが盛り込まれました。FPとして顧客の資産形成をサポートするうえで、この改正は今後のポートフォリオ提案やタックス・プランニングに影響を与える重要なトピックです。

ここでクイズ

改正後、暗号資産の取引で得た利益に対する税金(所得税・住民税の合計)はどのように変わる?

※特定暗号資産の現物取引等、復興特別所得税を除く

A. ②一律20%の申告分離課税になる

解説

今回の改正により、これまで最大55%の税率がかかる可能性があった税制が改められ、上場株式等の投資などに近い仕組みへと見直されることになります。具体的にどのような変更があるのか、図表1に概要をまとめました。

【図表1】暗号資産の税制改正の概要

注1:「特定暗号資産」を対象とする 注2:別途、復興特別所得税が加算される
出所:財務省「令和8年度税制改正大綱」、国税庁資料を基に日本FP協会作成

今回の改正の最大のポイントは、暗号資産(特定暗号資産)取引に係る所得が「申告分離課税」の対象となる点です。

図表1のとおり、これまでは「雑所得」として総合課税の対象であったため、所得水準の高い層にとっては暗号資産で利益を出すと半分以上が税金で引かれてしまい、極めて税負担の重い資産クラスでした。

しかし改正後は、金融商品取引法上の登録業者(国内取引所)で扱う「特定暗号資産」の現物取引やデリバティブ取引などを対象に、他の所得と分けて一律20%(所得税15%、住民税5% ※別途、復興特別所得税が加算され20.315%)の申告分離課税が適用されることになります。

【図表2】総合課税の累進税率イメージ

※課税される所得金額に千円未満の端数があるときは、その端数を切り捨ててからこの表を適用する
出所:国税庁「所得税の税率」を基に日本FP協会作成

図表2のとおり、例えば総合課税では課税所得金額が330万円を超えると適用される税率(超過部分の税率)が20%を上回り、住民税との合計では30%を上回ります。総合課税では、暗号資産の利益が給与所得など他の所得と合算され、その「合計額」に対して税率が決まります。そのため、本業の所得が高い層は、暗号資産の利益が少額であっても、高い税率が適用されていました。

しかし、申告分離課税が導入されると、暗号資産の利益は他の所得とは完全に切り離され、税率が一律20%に固定されます。そのため、高所得者層をはじめとする投資家にとって、税負担が大幅に軽減される見込みです。

さらに、株式投資などと同様に「損失の繰越控除」が認められる点も、実務上極めて重要です。暗号資産はボラティリティ(価格変動)が大きく、単年で大きな損失を計上するリスクが伴います。これまでは損失を出しても翌年以降に繰り越すことができず、ある年に大損をして翌年に利益が出た場合、トータルでの収支がマイナスであっても翌年の利益に対しては全額課税されていました。

しかし改正後は、確定申告を行うことで、生じた損失を翌年以降「3年間」にわたって利益と相殺(繰越控除)できるようになります。これにより、利益が出た年の税負担を平準化することが可能となります。

2026年度の税制改正大綱による見直しによって、暗号資産への投資環境は劇的に変化します。高い税率や損失が繰り越せないといった税制面での懸念から暗号資産への投資を避けていた人にとっても、株式投資などと同じような感覚でチャレンジしやすくなるでしょう。

ただし、注意点も存在します。まず、税制が有利になったといっても、暗号資産特有の大きな価格変動リスクは変わりません。次に適用時期です。申告分離課税の実際の適用は関連法案の施行等を待つ必要があり、現時点では2028年(令和10年)1月以降となる見通しです。新税制の適用前に利益を確定させてしまうと現行の総合課税が適用されるため、今後のタックス・プランニングには十分な注意が必要です。

もう1点は、対象となるのが国内の登録業者が扱う「特定暗号資産」等に限定される見込みという点です。海外取引所などでの取引は引き続き総合課税となる可能性があります。もちろん、暗号資産同士を交換したタイミングや、暗号資産で買い物等をしたタイミングでも利益が確定したとみなされる点はこれまでと変わりません。

今後、新しい制度の具体的な適用開始時期や詳細なルールについて、国税庁などから随時発表される予定です。投資の幅を広げる良い機会として新しい税制のルールを正しく理解しつつ、ご自身や顧客のライフプランやリスク許容度に合った無理のない範囲で、資産形成の1つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。

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