公開:2026.02.19

【住宅購入】不動産広告はここを見る!表示規約改正と省エネ性能ラベルで変わる賢い物件選び(橋本秋人氏)

チャット風吹き出し最終決定版(中央寄せ修正版)

ベテランFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。

橋本秋人氏

不動産広告情報の正しい読み解き方は、住宅購入後の生活満足度や将来の資産価値に直結する重要なスキルです。「住宅購入」の第3回目は、近年の不動産広告における表示規約の改正と、2024年から開始された「省エネ性能表示制度」について解説します。

実生活を反映した「リアルな表示」への進化

不動産広告のルールはこの数年で大きく変化し、より消費者の実生活に即した「リアルな情報」が求められるようになっています。その転換点となったのが、2022年の「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」の改正です。
今回の大きな変更点の1つが、「所要時間」の表示ルールです。
改正前は、「通勤時の所要時間が平常時の所要時間を著しく超えない」ときは平常時の所要時間のみ記載すれば良かったのですが、改正後は「朝の通勤ラッシュ時の所要時間」を明示することが義務付けられました。なお、平常時の所要時間を併記することは可能です。

また、乗り換えを要する場合、以前は電車に乗っている時間のみを表示すれば良かったのですが、現在は「乗り換えにおおむね要する時間」も含める必要があります。それにより、私たちが広告で見る所要時間は、より現実に近い感覚になります。

さらに、大規模なマンションや住宅団地における距離や所要時間の表示も厳格化されました。これまでは敷地内の「最も近い地点」を基準にすれば足りましたが、現在は「最も近い棟(区画)」と「最も遠い棟(区画)」の両方を表示する必要があります。大規模開発地では、棟や区画によって数分から十数分といった差が生じることも珍しくないため、この変更は購入後の生活イメージとのギャップを埋めるうえで、意義のあるものといえるでしょう。

また、昨今の住宅ストック活用市場を背景に、「一棟リノベーションマンション」という区分が新設されたことも押さえておきたいポイントです。これは既存の共同住宅を一棟丸ごと改修して分譲するものですが、新築と誤認されないよう、「新築同様」といった曖昧な表現は禁止され、リノベーションの内容や竣工時期の明記が求められるようになりました。このように、広告は単なるPR媒体から、正確な比較検討のための「仕様書」へと進化しているのです。

広告表示が厳格化され、以前のような「広告の落とし穴」は少なくなりました。しかし、だからこそ重要になるのが「現地」と「現物」の確認です。特に中古住宅の購入においては、広告や図面だけではわからない建物の劣化状況を把握するため、専門家による「インスペクション(建物状況調査)」の活用を強くおすすめします。また、広告や重要事項説明書などの資料では把握しにくい「夜間の帰り道の雰囲気」や「通勤時の電車の混み具合」などを実際に購入者自身が体感・確認することで、後悔のない物件選びが可能になります。

「省エネ性能ラベル」で省エネ・断熱のレベルを見える化

2024年4月からスタートした「建築物の省エネ性能表示制度」により、住宅の売買・賃貸の広告に「省エネ性能ラベル」の表示が求められるようになりました。対象は、2024年4月以降に建築確認申請を行う建物ですが、住宅選びにおいてこの制度を念頭に置くことは新しい常識になりつつあります。法的には努力義務ですが、表示しない場合は国土交通大臣の勧告・命令・公表の対象となるため、実質的には半強制に近いものになっています。これまで目に見えにくかった「省エネ性能」や「断熱性能」のレベルを、星や家のマークで可視化することで、消費者は性能で物件を比較できるようになりました。

ラベルを見る際のポイントは大きく2つあります。1つ目は「エネルギー消費性能」を示す「星マーク」です。太陽光発電などの再エネ設備がない住宅は星の数0から4の5段階、再エネ設備がある住宅は星の数0から6の7段階で評価します。国の省エネ基準に適合している住宅は星1つですが、そこから削減率が10%向上するごとに星が増えます。また、再生エネ設備がある場合は、6つの星のうち3つの「強調マーク付き星」は太陽光発電によるエネルギー削減分を示しています(図表)。

2つ目は「断熱性能」を示す「家マーク」です。こちらは家の数1から7までの7段階評価で、家の数が多いほど熱が逃げにくく、外気の影響を受けにくいことを示します。
この「星マーク」が3つ以上かつ「家マーク」が5の評価以上でZEH(ゼッチ)水準となります。

なお、ラベルの表示方法は意図的に複雑な数値を排除し、星や家のマークといった誰もが直感的に理解できるビジュアル表現に統一されています。これは消費者の理解のしやすさを最優先にした考え方からきています。

実は、日本はこうした性能表示において欧州に後れを取ってきました。例えば、フランスではすでに15年以上前から最高Aランクから最低Gランクまで7段階のラベル表示が義務化されています。さらに厳しいのは、省エネ性能が低い物件に対するペナルティです。2022年からF、Gランクの物件は家賃の値上げができなくなり、Gランクの物件は2025年から賃貸に出すことさえ禁じられました。Fランク、Eランクについても2034年までに順次賃貸禁止になる予定です。そのため、オーナーは資産価値を維持するために断熱改修などの対応を迫られています。

日本でも、このラベル表示制度の導入は、近い将来、住宅の省エネ性能による物件の選別が進む流れの序章といえるでしょう。今後は「立地や間取りは良いが、省エネ性能が低い」といった住宅は、市場で選ばれにくくなる可能性があります。

図表 省エネ性能ラベル

出所:国土交通省資料より(橋本秋人氏提供)

資産価値を守る「出口戦略」としての広告の活用

これから住宅を購入する際、広告情報の読み解きは、将来の「出口戦略」、つまり売却時の成否に直結します。2025年4月からの省エネ基準適合義務化により、定められた基準を満たさない住宅は原則として新築できなくなりました。つまり、今後の住宅市場には高断熱・高気密な住宅が「標準」として供給され続けることになるのです。

将来、自宅を売却しようとした際、旧来の低性能な住宅は「安くしか売れない」、あるいは「買い手がつかない」というリスクを抱える可能性があります。

省エネ性能の高い住宅を選ぶことは、単に光熱費というランニングコストを下げるだけではありません。「我慢しない快適な生活」を叶えながら、かつ「環境に配慮したエシカルな選択をした」という心理的満足感(ステータス)も得られます。そして何より、将来的な資産価値を維持できるという経済的なメリットが大きいのです。

FPの皆さんが顧客にアドバイスをする際、これまでは資金計画やローン選びが主なテーマだったかもしれません。しかし今後は、「この広告のこのマークは、将来の売りやすさを担保するものです」といった、物件の質に踏み込んだ助言が求められます。入口である広告の見方を正しく伝え、省エネ性能という視点を持つよう促すこと。それが、顧客の長期的な家計と資産を守る、頼れる専門家としての付加価値になるはずです。

次回の【住宅購入】分野は、「生前贈与を上手に活用した頭金づくり」について解説します。
アコーディオン目次
【住宅購入】 第1回~第6回はコチラ (橋本秋人氏)

お話を伺った方

CFP®認定者、1級FP技能士、公認不動産コンサルティングマスター、FPオフィス ノーサイド 代表

橋本 秋人 氏

早稲田大学卒業後、大手住宅メーカーに30年以上勤務。在職中は、顧客の相続対策や資産運用としての賃貸住宅建築など、不動産活用の実務に長く携わる。独立後は、不動産活用、相続・終活、住宅取得などを中心に、講演や執筆、コンサルティングを通じて、実務経験に基づいた実践的なアドバイスを提供している。

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