公開:2026.07.23

【不動産調査】建物の建築可否を左右する、道路、ライフライン、法令制限~役所調査の概要:後編~(置鮎謙治氏)

チャット風吹き出し最終決定版(中央寄せ修正版)

ベテランFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。

置鮎謙治氏

顧客が不動産を購入し、希望どおりの建物を建築するためには、用途地域などの都市計画や建築規制だけでなく、「道路」や「ライフライン」、その他の「法令制限」に関する調査が不可欠です。本連載の第2回目は、役所調査の後編として、不動産取引においてトラブルになりやすい道路の接道義務や私道の取扱い、さらには埋蔵文化財や土壌汚染などのリスクについて、FPが知っておくべき実務のチェックポイントを解説します。

建築計画に直結する接道義務と、道路調査の重要性

前回は役所調査の中でも、その土地にどのような建物が建てられるかという、都市計画や建築関係の規制を中心に解説しました。今回は、それに付随して極めて重要となるその他の調査事項について解説します。中でも、不動産調査において最も慎重に行うべきなのが道路に関する調査です。

前面道路の状況は、建ぺい率や容積率といった建物のボリュームに影響を与えるだけでなく、そもそも「そこに建物を建築できるのかどうか」という根幹に関わってきます。都市計画区域および準都市計画区域内においては、建築基準法上、「建物の敷地は道路に2メートル以上接していなければならない」というルールがあります。これを「接道義務」と呼びます。もしこの接道義務を満たしていなければ、どれほど広くて立派な土地であっても、原則として建物を建てることはできません。

道路の調査を行う際、まずはその道路の種類を確認します。市町村道などの公道であれば、役所の道路管理を担当する部署で認定幅員や路線番号を確認します。ただし、役所で把握している認定幅員と、実際に現地で測った現況幅員が異なっているケースも少なくありません。現地の方が狭い場合、建物の設計においてどちらの幅員が採用され、容積率などにどう影響するのかを建築指導課などの建築担当部署で確認する必要があります。

一方、前面道路が私道の場合は、より一層の注意が必要です。私道の場合、役所は現地の正確な幅員まで把握していないことが多いため、現地に足を運んで幅員を調べ、そのうえで建築担当部署にて建築基準法上の道路として認められているかどうか(位置指定道路など)を確認しなければなりません。

また、建築基準法が施行される前から建ち並んでいる市街地などでは、幅員が4メートル未満の道路も多く存在します(いわゆる2項道路)。このような道路に面した敷地に新たに建物を建てる場合、道路の中心線から2メートル後退(セットバック)した線が道路の境界とみなされます(向かい側が川や崖などの場合は要件が異なります)。セットバックした部分は敷地面積に算入できなくなるため、結果として希望していた規模の建物が建てられなくなる可能性があります(図表1、図表2)。

図表1 2項道路におけるセットバック(道路後退)の仕組み

項目内容影響・注意点
対象となる道路      建築基準法第42条第2項の道路(幅員4m未満の道路)古くからの市街地などに多く存在。役所での確認が必須。
セットバック基準「道路の中心線」から水平距離で「2メートル」後退した線を道路の境界線とみなす。向かい側が川や崖の場合は、向かい側の境界線から4メートル後退。
敷地面積への影響セットバックした部分(後退部分)は、建物の「敷地面積」に算入できない。有効な敷地面積が減るため、建ぺい率・容積率に基づく建物のボリュームが小さくなる。
建築等の制限セットバック部分には、建物だけでなく「門・塀・擁壁」なども建築・設置できず、駐車場としても使用できない。建築基準法上道路とみなされ、私物の設置等は不可。
出所:置鮎氏監修の基に日本FP協会作成

図表2 2項道路におけるセットバック(道路後退)の仕組み(現状の道路幅が3メートルの場合)

現状の道路の中心線から敷地境界までの距離1.5メートル
確保すべき距離2.0メートル
後退(セットバック)が必要な幅0.5メートル
出所:置鮎氏監修の基に日本FP協会作成

現地調査で発覚する道路のトラブルと「ライフライン」の確認

道路の調査においては、役所での図面確認に加えて、現地の状況と照らし合わせることが不可欠です。特に私道の場合は、思わぬトラブルが潜んでいることがあります。

例えば、役所の図面では幅員4メートルの位置指定道路として登録されていても、現地に行ってみると、一部の住民が道路部分に鉢植えや自転車などの私物を置いており、実際の通行に支障をきたしているようなケースがあります。図面上の情報だけを信じて購入してしまうと、後々ご近所トラブルに発展しかねません。

また、私道の所有形態が複雑な場合も要注意です。1本の私道を複数の住民が細かく分割して所有していたり、全員の共有名義になっていたりすることがあります。この場合、新たに建物を建てるために水道管やガス管などのライフラインを引き込む工事を行う際、道路の掘削に関する承諾を所有者全員から得なければならないことがあります。

もし1人でも承諾してくれない人がいれば、工事が進まず、最悪の場合は建築計画そのものが頓挫してしまうおそれすらあります。こうしたリスクを回避するためには、法務局で私道の所有関係を事前に把握しておくことが望ましいでしょう。

併せて、「ライフライン」自体の調査も欠かせません。上下水道や都市ガスが前面道路まで配管されているか、敷地内への引き込みが済んでいるかを確認します。すでに都市化が進んでいる市街地であれば大きな心配はありませんが、郊外や一部の地域では、前面道路に本管が通っていなかったり、浄化槽の設置が必要になったりすることがあります。

ライフラインの引き込み工事をゼロから行うとなると、多額の追加費用が発生し、顧客の資金計画を大きく狂わせる原因となりますので、水道局や下水道局などの担当部署で埋設状況をしっかり確認することが大切です。

スケジュールや費用を狂わせる、その他の法令制限

役所調査では、道路やライフラインのほかに、その他の法令に基づく制限にも目を向ける必要があります。対象物件が該当してしまうと、資金計画やスケジュールに甚大な影響を及ぼす可能性があるためです。

代表的なものが、文化財保護法に基づく埋蔵文化財包蔵地の確認です。日本全国には、過去の遺跡や遺物などが埋もれていると認識されているエリアが多数あり、これを周知の埋蔵文化財包蔵地と呼びます。もし購入予定の土地がこれに該当する場合、土木工事等に着手する60日前までに教育委員会などの文化財担当部署へ届出を行わなければなりません。

その結果、試掘調査が行われ、本格的な発掘調査が必要と判断された場合、工事の着工が数カ月単位で遅れることになります。さらに、発掘調査にかかる費用(1㎡当たり数万円にのぼることもあります)を土地の所有者が負担するよう求められるケースもあります。建物を建てる前から多大な時間を取られ、多額の費用負担を強いられることになるため、役所での事前確認は絶対に怠ってはなりません。

もう一つ気をつけておきたいのが、土壌汚染対策法に関する調査です。過去にクリーニング店や自動車の修理工場、ガソリンスタンドなどとして使用されていた土地は、土壌汚染のリスクが疑われます。都道府県や一部の市の環境担当部署において、要措置区域などに指定されていないかを確認します。土壌汚染が判明した場合、汚染物質の除去に膨大なコストがかかるだけでなく、かつて汚染があった土地という心理的影響(スティグマ)によって、将来的な資産価値が著しく低下するおそれがあります。

ここまで述べてきたように、道路の接道状況や私道にまつわる権利関係、そして埋蔵文化財や土壌汚染といった法令制限は、不動産の活用や建築計画に決定的な影響を与えます。これらが建物の建築計画を具体的に進めた後から発覚した場合、後戻りすることが難しく、顧客に多大な不利益をもたらすことになります。

FPに求められる役割は、顧客からマイホーム購入や土地活用の相談を受けた初期の段階で、こうした潜在的なリスクの存在をアドバイスすることです。希望の間取りが描けるか以前の問題として、「そもそもこの土地は建物を建てられる道路付けになっているか」「ライフラインの引き込みに余計なコストがかからないか」「埋蔵文化財のエリアに入っていないか」といった点に注意を向けさせることが重要です。

仮にリスクが存在したとしても、顧客が「それでもその場所に建てたい」と強く希望するケースもあります。その場合は、事前に調査すべき項目や想定される追加費用、スケジュールの遅延リスクを客観的に提示し、納得したうえで判断できるようにサポートすることがFPの役割です。また、これから購入する方に限らず、相続した実家などの売却を検討している方に対しても、接道義務を満たしていない物件などは売却が難航したり、資産価値が下がったりする現実を早めに伝え、不動産会社などの専門家に相談するよう促すことが大切です。

アコーディオン目次
【不動産調査】 第1回~第6回はコチラ (置鮎謙治氏)
第1回「物件」にまつわるトラブルを未然に防ぐ! 不動産調査の全体像と役所調査の概要:前編
第2回建物の建築可否を左右する、道路、ライフライン、法令制限~役所調査の概要:後編~
第3回公開をお楽しみに!
第4回公開をお楽しみに!
第5回公開をお楽しみに!
第6回公開をお楽しみに!

お話を伺った方

CFP®認定者、不動産鑑定士、住宅ローンアドバイザー、おきあい事務所代表。

置鮎 謙治 氏

福岡県福岡市出身。早稲田大学商学部を卒業後、政府系金融機関において住宅ローン業務全般に携わる。その後、大手監査法人勤務を経て、不動産鑑定事務所にて不動産の鑑定・デューデリジェンス等、評価業務全般に従事。2008年におきあい事務所を設立し、不動産鑑定やコンサルティングを中心に活躍。実務経験に基づいたわかりやすい解説で、研修や執筆活動も精力的に行っている。

あわせて読みたい

関連コンテンツ 4x2 レイアウト

ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • いいね数
  • コメント数

24時間中にアクセスが多かった記事です。