公開:2026.08.31

金融の世界における「守破離」【トレンド+plus】

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芸事で伝わる「守破離」

芸事を学んで身につけようとする過程を表す言葉として、「守破離」というものがあります。
初心者の頃は、師の言いつけや型を忠実に守り基本を身につける「守」の段階です。
一通り、知識を身につけたら、次は主流派の意見を批判的に捉えて、型を破る中で新しい発見・気づきを得ます。批判すれば、必ず反論を受けますから、反論に耐えて自説を鍛えます。「破」という言葉には攻撃的なニュアンスがありますが、批判を通じて応用力を修得することが「破」の意味です。
そして、最後が「離」です。これは、師匠や自分の流派・派閥から離れて、自分自身の流儀を打ち立てることを意味します。

自分独自の見解を確立して、他の見解と伍していくのは並大抵ではありません。これこそ、達人の領域です。
「守破離」を提唱したのは千利休で、考え方は千利休の前に世阿弥が提唱している……という話もありますが、誰が最初に使ったのかは正確には不明です。ただし、伝統を重んじる人々が、この言葉を熟達のための口伝として残してきたことは確かです。

金融における「守破離」

さて、金融の世界における「守破離」について筆者なりに考えてみました。
株式、為替の知識がゼロだから、今から勉強したいという人はどんなことから始めればよいのでしょうか。

筆者がまずお勧めしたいのは、経済・マーケット番組を毎日見る習慣をつけることです。はじめのうちは市場や経済の解説についていけず、「意味がわからない」と思うことも多いかもしれません。しかし、その意味不明の話を3カ月間ずっと見続けていると、何となくわかってくるのです。そのころには、相場に向き合っている人たちが何に関心を持っているかがわかるようになるでしょう。そして、この3カ月間のがまんを、後から振り返ると最も効率的なトレーニングだったと感じられるはずです。これが、私が提唱する「守」です。

次の段階の「破」とは、十分に知識を付けた後、さらに専門家のレポートを読んで、批判的な見方でそれを分析することです。経済レポートが掲載されているサイトを見て、そこから関心のあるトピックスを選んで読むことから始めてみるといいでしょう。少し慣れてきたら、関心のあるトピックスから少し手を広げてみてください。例えば、日本の株価に詳しくなりたい人でも、米国の金融政策を勉強してみると思わぬ形で知見が広がることがあります。批判的に情報を読むことは、自分の知識のグレードを格段に高めます。あくまで筆者の感覚にはなりますが、この「破」の段階は金融知識を勉強して、3年以上の人が対象になると思います。

資産運用に役立つ金融知識の身につけ方は、実際に自分で資金を動かして売買経験を増やすことも確かに大切ですが、それだけでは危険です。相場が思いもよらぬ展開になったとき、経験と勘だけではやっていけないと筆者は思います。金融知識は、攻めと防御に分けると、防御です。柔道で言えば、受け身と同じでダメージを負ったときにそれをコントロールする術でもあります。

最後に、「離」ですが、世の中に流布する運用ノウハウを超えて、自分なりの相場との付き合い方ができる人がこの域だと思います。筆者自身、まだそれを語る資格が十分にあるとは思えません。

芸事でも、金融でも境地に達するまでの道のりは果てしなく、「離」まで到達できる人はほんのわずかなのかもしれません。ですが、それを身につけようと「守」から始めてみることこそが重要なのではないでしょうか。

記事の内容は、取材先や執筆者等の見解を示したものであり、日本FP協会の意見・方針等を示すものではありません。

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