公開:2026.06.12

日経平均株価上昇は「バブル」なのか?~業種別格差から見る日本経済~【トレンド+plus】

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日経平均株価上昇は一律の底上げか?

6月に入って、日経平均株価には不安定な動きがみられます。今までも「株価上昇にはバブル的な感じがする」という話をよく耳にしてきました。そこで、実情を見るためにすべての業種の株価が上がっていたかどうかを調べてみました。

結論から言うと、すべての業種の株価が上がっている訳ではありませんでした。業種によっては下落している分野もあったのです。
特に強い株価上昇の追い風が吹いていたのはAI関連に集中していました。それとは反対に、イラン攻撃による原油高騰の影響を受けやすい業種は、株価がマイナスに傾く傾向がありました。

業種別時価総額の「ばらつき」から見る日本経済

今回筆者が行った分析としては、まず、日経平均株価がここ数年で3万円→4万円→5万円→6万円台後半へと上がっていく中での業種別時価総額が、どう変化したのかを調べました。
図表は、株価が+1万円ずつ値上がりしたときに、業種別時価総額がどう変化したのかを調べたものです。このデータの業種別のばらつきから、この期間における日本経済の変化を読み取ることができます。

図表■業種別時価総額の変動

出所:日本取引所グループ「業種別時価総額表」を基に日本FP協会作成

日本取引所グループが公開している直近の業種別時価総額は、2026年5月末のものです。5月末時点の日経平均株価は66,329円でした。ここと比較するのは、日経平均株価が5万円を超えた直後の2025年10月末です。つまり、日経平均株価が5万円から6.6万円に変化したときに、業種別に株価がどう変化したのかを見てみます。2025年10月末から2026年5月末のこの約半年(7か月間)で、時価総額は205兆円ほど増価しています。増価分のうち、43%は電気機器(+87兆円)でした。これは、AI関連と呼ばれる特定の銘柄の株価上昇によるものと推察されます。これには意外感が全くない方も多いでしょう。

意外なのは、全33業種の中で5業種の時価総額が減少していたことです。ここから、時価総額が上昇局面であっても、業種別に見ると「ばらつき」が生じていることがわかります。
具体的には、輸送用機械、ゴム製品、その他製品、陸運、情報・通信の5つが下落しています。これらの多くは、原油高でダメージを受けている業種です。例えばゴム製品は、石油由来の合成ゴムを扱っている企業です。一頃、医療用手袋が不足していることが話題になりました。

また、業種の中で、ほとんど時価総額が横ばいのものには、鉄鋼(0.6%)、空運(1.2%)、サービス(2.6%)があります。航空、旅行・宿泊サービスも原油高のダメージが大きいと考えれば、「ああそうか」と納得感があるでしょう。

世の中では「株価がバブルっぽい」と言われていても、細かく見ると株価が上昇していない業種がいくつもあることは見落とされてしまいがちです。反面、個別株をよく取引している方は、下落している業種が複数あることをみて、「そう言えば」と思い当たる節があるかもしれません。繰り返しになりますが、株価が5万円を超えて6万円台後半に向かって上昇していく現在の局面では、銘柄による株価変動にはかなり大きなばらつきが生じているという特徴があるのです。

株価が急上昇している業種をさらに見ていくと、電気機器(筆者は半導体関連だと考えています)以外にもいくつの業種があります。電気機器が+43.6%になっている一方で、非鉄金属が+93.4%、ガラス・土石が+62.2%と電気機器以上の著しい伸びを見せています。非鉄金属は銅価格の上昇を受けていると推察されます。また、ガラス・土石が伸びるのは、半導体の絶縁体に使われるガラス繊維の供給を行っている企業がこの中にはあるからという側面もあるでしょう。ここからも半導体需要の高まりが感じられます。株価をみれば、半導体市場の周辺にある小さな市場で追い風がより強く吹いていることがわかります。

そのほか上昇している業種には、銀行業+39.0%、鉱業+27.9%、化学+27.8%、その他金融27.2%、石油・石炭+25.7%、卸売+24.2%、保険業+24.2%があります。銀行業、保険業、その他金融は、長期金利が上昇して運用収入が増えていることが追い風になっていると考えられます。現在の株価上昇は、半導体だけではなく、金融分野にも追い風が吹いているのです。

最後に、昔、ドイツの建築家が語った「神は細部に宿る」という言葉をご存知でしょうか。株価変動について、業種別のばらつきのような細部を調べていくと、日本経済で今、何が起こっているかがよくわかります。「株価上昇のバブル的なところ」は一部のAI関連の銘柄が極端に上がっているだけで、もっと幅広い業種別株価変動を調べると、業績の好不調や地政学リスクの偏在が顕著に表れていることがわかるのです。

記事の内容は、取材先や執筆者等の見解を示したものであり、日本FP協会の意見・方針等を示すものではありません。

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