公開:2026.08.20

【不動産調査】登記事項証明書・図面から読み解く不動産のリスク~法務局調査の基本と実践(置鮎謙治氏)

チャット風吹き出し最終決定版(中央寄せ修正版)

ベテランFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。

置鮎謙治氏

顧客が不動産を安全に購入・賃借するためには、現地調査や役所調査に加えて、法務局での調査が欠かせません。連載第3回目となる今回は、法務局で取得できる書類の全体像から、登記事項証明書や各種図面の正しい読み解き方、そして書類の記載から見えてくる権利関係のトラブルやリスクについて、FPが実務で押さえておくべきチェックポイントを解説します。

登記事項証明書から物理的状況と権利関係を正確に把握する

法務局で取得できる主な書類は、大きく分けて「登記記録(登記事項証明書など)」「図面類(14条地図、公図、地積測量図、建物図面など)」の2種類です。顧客が不動産を利用したり、購入や賃借を通じて収益を得たりするためには、対象不動産を「誰が所有しているのか」という権利関係と、「どのような広さや形状なのか」という物理的状況を正確に把握することが大前提となります。

FPとしては、安全な不動産取引のために法務局での事前調査が不可欠であることを顧客に説明し、書類の取得を促すか、必要に応じて司法書士などの専門家へつなぐという橋渡しの役割が求められます。

まずは法務局調査の基本となる「登記事項証明書」の構成と、FPが確認すべきポイントを図表で整理しましょう。

図表1 登記事項証明書の構成とFPの確認ポイント

構成記載される主な内容FPの実務における確認ポイント
表題部不動産の物理的な状況
(所在、地番、地目、地積、家屋番号、構造、床面積など)
・「住居表示」と「地番・家屋番号」の違いに注意する。
・未登記の増築などがないか現況と照合する。
権利部(甲区)所有権に関する事項
(所有者の住所・氏名、差押えなど)
・現在の名義人が真の所有者か(相続登記漏れがないか)を確認する。
・差押えや仮登記などトラブルの芽がないかチェックする。
権利部(乙区)所有権以外の権利に関する事項
(抵当権、根抵当権、地上権、賃借権など)
・住宅ローンを完済しているのに、担保権の登記が残ったままになっていないか確認する。
出所:置鮎氏監修のもとに日本FP協会作成

図表1のとおり、登記事項証明書は大きく「表題部」「権利部(甲区・乙区)」に分かれています。

実務上、FPが直面しやすく特に注意すべきなのが、表題部の確認における「住居表示(普段使っている住所)」「地番・家屋番号」の違いです。これらが合致していないケースは多いため、顧客には事前にその違いを理解してもらう必要があります。

住所はわかっても地番がわからない場合は、法務局に設置されている住居表示から地番を検索できる端末を利用します。建物の家屋番号であれば証明係の窓口へ電話で直接問い合わせることで特定できる場合があります。

また、権利部においては、名義人がすでに亡くなっているにもかかわらず名義変更が行われていないケースに注意が必要です。2024年4月より相続登記が義務化されましたが、過去の分が未登記のまま残っているケースも少なくありません。

さらに乙区において、債務を完済しているのに担保権(抵当権など)を抹消する登記が行われずに記載が残ってしまっているケースも散見されます。担保権の有無は不動産の取引価格に大きく影響するため、実体としての債務が存在しているのかどうかまで含めて確認しておくことが重要です。

図面類の役割と、現況との差異に潜むリスク

登記事項証明書と併せて確認すべきなのが、法務局で取得できる各種図面です。それぞれの図面が持つ役割と特徴、そして実務上の注意点を図表2にまとめました。

図表2 法務局で取得できる主な図面類の特徴と注意点

図面の種類役割と特徴実務上の注意点
14条地図土地の位置や形状を正確に表す図面。現地復元性が高く極めて正確だが、全国すべての地域で整備されているわけではない。
公図14条地図が整備されていない地域で、その代わりとして備え付けられている図面。明治時代の地図がベースのため必ずしも正確ではないが、隣接状況や形状のおおまかな把握には有用。
地積測量図土地の面積(地積)や境界標の位置などを測量に基づいて表示した図面。分筆や地積更正などがされていない土地には備え付けられていない場合が多い。図面がない場合、新たに測量費用等が発生する可能性がある。
建物図面・各階平面図建物の位置や形状、各階の床面積を表す図面。新築・増築時の登記申請に必須。建物図面と現地の建物の形状が異なる場合、未登記の増築や改築の可能性がある。
出所:置鮎氏監修のもとに日本FP協会作成

図面を確認する際、FPが顧客へアドバイスすべき重要なポイントとして「床面積の計算方法の違い」が挙げられます。

戸建て住宅の場合は、壁や柱の中心線で面積を測る「壁芯(へきしん)面積」が用いられます。一方、マンションなどの区分所有建物の登記では、壁の内側で面積を測る「内法(うちのり)面積」が採用されます。

広告パンフレットなどでは建築基準法に基づき壁芯面積で表示されるため、マンションの場合は登記事項証明書(内法面積)の数値のほうが、広告よりも5〜7%ほど小さくなる点にあらかじめ注意が必要です。

さらに、これらの図面と現況に差異がある場合、トラブルのサインである可能性があります。たとえば、地積測量図がなく公図しかない場合、公図上の形状と現況が大きく異なることがあります。

また、建物図面に記載されていない形状の建物が現地に建っている場合、未登記の増築や改築が行われている可能性があります。このような違いを発見した際には、顧客に対して表題登記や変更登記の申請を行うよう促すことが求められます。

差押えや仮登記など、見落としがちな権利関係のトラブルの芽

登記事項証明書を一見して問題がなさそうに見えても、FPとして見落としてはならない、将来の深刻なトラブルにつながる表記があります。

第一に、甲区に記載される「差押え」「仮差押え」です。これは、所有者が借金などの返済を滞納し、債権者によって不動産が競売公売任意売却に向けての手続きが進んでいることを意味します。差押えの登記がある不動産をそのまま購入してしまうと、後日強制執行が行われ、買主が所有権を失うという甚大なリスクを負います。手を出さない方が安全な物件と言えます。

第二に、「仮登記」の存在です。仮登記は、所有権移転などの本登記を行うために必要な情報が揃っていない段階で、登記の優先順位を確保するために行われます。仮登記自体に第三者への対抗力はありませんが、後日、仮登記の権利者が本登記を実行すると、それ以降に行われた所有権移転登記などはすべて抹消されてしまいます。

通常の健全な売買取引において仮登記がなされることはほとんどなく、トラブルに巻き込まれる可能性が非常に高いため、購入は避けるようアドバイスするのが無難でしょう。

第三に、土地の地番と家屋番号の関連性における勘違いです。過去に土地が分筆された場合などは、分筆前の家屋番号がそのまま残り、現在の土地の地番と建物の家屋番号が一致しなくなることがあります。「番号が似ているから、この土地の上の建物だろう」と早合点せず、図面等と照らし合わせて本当にその土地の上に目的の建物が存在するのかを慎重に確認する必要があります。

また、土地を借りて建物を建てる「借地」の場合、土地の賃借権が登記されることは実務上まれです。登記事項証明書を見て、土地の所有者と建物の所有者が異なっている場合は、借地である可能性を念頭に置いて状況を整理していく視点を持つとよいでしょう。

不動産取引において、顧客自身がこれらの複雑な権利関係やリスクに精通しているケースは多くありません。FPに求められるのは、顧客がマイホームの購入や土地活用を検討する際に、法務局の書類を通じて正確な現状把握を行うよう促すことです。そして、調査の過程で少しでも不安や疑義が生じた場合には、専門家への相談を提案することが、顧客の大切な資産を守る役割につながります。

アコーディオン目次

お話を伺った方

CFP®認定者、不動産鑑定士、住宅ローンアドバイザー、おきあい事務所代表。

置鮎 謙治 氏

福岡県福岡市出身。早稲田大学商学部を卒業後、政府系金融機関において住宅ローン業務全般に携わる。その後、大手監査法人勤務を経て、不動産鑑定事務所にて不動産の鑑定・デューデリジェンス等、評価業務全般に従事。2008年におきあい事務所を設立し、不動産鑑定やコンサルティングを中心に活躍。実務経験に基づいたわかりやすい解説で、研修や執筆活動も精力的に行っている。

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