FP・専門家に聞く
2026.08.25
【資産形成】「なんとなく」入った生命保険、どう見直す?(平井美穂氏)
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公開:2026.08.25
今回の「資産形成」では、生命保険を見直すために知っておきたい必要保障額の考え方や、見直しのポイントについて解説します。
家計を改善し、資産形成を加速させるためには、生命保険の見直しは必要不可欠です。私のもとに来られる相談者も、多くの人が「生命保険に入っているけれど、本当にこれでいいのだろうか?」とお悩みです。
今の保険にどのようにして加入したのかという経緯を伺うと、「保険会社に就職した先輩を通じて加入した」「保険会社に勤めている親族から勧められた」など、お付き合いで加入している人もいらっしゃいます。また「子どもが生まれたのをきっかけに、相談窓口に行って加入した」という話もよく聞きます。
そして、肝心の保障額については、保険会社や保険代理店の担当者から提案を受けて、そのまま契約している人が多い印象です。加入者の家計の実情に応じて、具体的な数値で必要保障額を算出しているかというと、すべてがそうとは限りません。「いくらくらい家族に残してあげたいですか?」「だいたい皆さんこれくらいの保険金額で加入されています」と、なんとなくの感覚で保障額を決めている方も多いでしょう。
そのために、必要以上に保険に入ってしまい、毎月の保険料に圧迫されている家計や、逆に必要な保障が足りておらず、いざというときに危うい家計は珍しくないのです。
本来、生命保険は「万一のときに家計ではカバーしきれない部分を補う」ものです。つまり、保障額は感覚で決めるのではなく、その家計に合わせて、必要な額を計算して決めるのが本来の考え方です。
以降、生命保険を検討するうえで優先度が高い死亡保障について考えてみたいと思います。
例えば、本人が会社員で、配偶者と子どもがいる家庭を考えてみましょう。本人が亡くなった場合、残された家族には毎月の生活費、住宅費、教育費など、さまざまな支出が続いていきます。一方で収入面はというと、亡くなった人の給与はなくなりますが、配偶者の就労収入のほかに、遺族年金など、新たな収入もあります。この支出から収入を差し引いた「不足する金額」が、本当に必要な生命保険(死亡保障)の保障額です(図表1)。
この「不足する額」を具体的に把握するためには「遺族のキャッシュフロー表」を作成するのがお勧めです。キャッシュフロー表は、将来にわたる収入と支出を時系列で整理した家計の設計図です。住宅を購入するときはもちろん、生命保険の見直しでも非常に重要な資料になります。
生命保険の見直しの場合は、
①残された配偶者は就労収入をいくら得られるか、さらに遺族年金や勤務先から支払われる保障など、「将来見込める収入」を計上します。
②残された家族の生活費はいくら必要か、子どもの教育費はいくらかかるか、住居費はどれくらいか、住宅ローンが残る場合はローン返済額も含め、「必要な支出」を計上します。
遺族の「将来見込める収入」と「必要な支出」には、次のようなものがあります。
会社員や公務員が亡くなった場合、遺族には公的年金から遺族年金が支給されます。
子どもの人数や年齢、加入していた年金制度によって金額は異なりますが、年間100万円以上支給されるケースも少なくありません。ただし、2028年4月に遺族年金の見直しが予定されており、男女ともに子がいない場合は原則5年間の有期年金となるなど、大きな変更点が生じるため注意が必要です。
配偶者が働いている場合はもちろん、現在専業主婦(主夫)であっても、いざとなったら働き始める可能性があります。ただし、これまで両親で子育てをしていたのがひとり親となることで就労にさける時間が短くなるケースもあるので、慎重に見積もる必要があります。
会社によっては、社員が亡くなった際に死亡退職金や弔慰金が支給される制度があります。
金額は企業によって異なりますが、1,000万円以上支給される場合もあります。勤務先の就業規則や福利厚生制度を一度確認してみるとよいでしょう。
現在保有している預貯金や投資信託なども重要な財産です。亡くなった人の証券口座や確定拠出年金に積み立てている資金も、遺族が受け取ることができます。
夫婦共働きで、残された配偶者が働く場合でも、子どもが幼い時期はベビーシッターを頼むなど、家事・育児を外部委託する必要があるかもしれません。そうすると生活費が減るどころか増えるケースもあるので、生活の変化による費用も盛り込む必要があります。
賃貸住宅であれば、毎月家賃の支払いが必要です。一方、住宅ローンの団体信用生命保険に加入していた債務者が亡くなった場合は、保険金でローンが一括弁済され、遺族の住居費はほとんどかからなくなります。ただし、夫婦ペアローンで借り入れしているケースでは、残された配偶者の住宅ローンは残るので注意をしてください。
子どもがいる家庭では、教育費も必要です。進学先によってかかる教育費は異なりますが、子どもが幼いときほど、その後にかかる教育費の総額は大きくなります。場合によっては奨学金の利用なども併せて考えていきます。
上述のような項目を確認し、遺族のキャッシュフロー表を作成してみると、その家庭の「不足額」=「本当に必要な保障額」が明確になります。
遺族のキャッシュフロー表で「不足額」が明確になったら、それを補うのに最適な生命保険の商品を検討します。
例えば、まだ子どもが幼く、子どもが独立するまでの約25年間、平均して年間100万円前後が不足するという家庭であれば、月額10万円の保障額の収入保障保険に加入するのもいいでしょう。
収入保障保険は掛け捨て型の死亡保険です。遺族が毎月決まった金額を受け取れるため、月々の生活費や教育費をカバーするのに向いています。この保険の特徴は、加入してから時間が経つほど、受け取れる保険金の総額が少なくなることです(図表2)。
例えば、加入してすぐに亡くなった場合は長期間にわたって保険金を受け取れますが、契約満了が近づいたタイミングで亡くなった場合は、受け取れる期間が短くなるため、保険金の総額も少なくなります。
そのため、契約期間中ずっと同じ保障額が続く一般的な掛け捨ての定期保険に比べて、必要な保障をより安い保険料で準備できるのが大きなメリットです。
保険料は年齢や健康状態、保障額などによって変わりますが、35歳の男性が60歳まで年金月額10万円で契約した場合、健康優良体・非喫煙者であれば月額1,500円程度で備えられる保険もあります。
すでに定期保険などに加入していて十分な保障がある場合は、収入保障保険に加入した後に定期保険の解約も検討できるでしょう。また定期保険の保障額を減額することもできます。
反対に、保有している資産や将来に見込める収入で生活費や教育費が十分にまかなえそうであれば、思い切って生命保険を解約するという判断もあります。
生命保険は「社会人になったから(子どもができたから)、とりあえず入っておく」というものではありません。万一のときにも家族が安心して生活を続けられるようにするのが本来の目的です。そのためにはキャッシュフロー表を作成し、「将来見込める収入」と「必要な支出」を整理したうえで、不足額を保険で補うという考え方が最も合理的です。
また加入して10年、20年と時間が経過すると、家族構成や年齢の変化につれて必要保障額も変わってきます。特に子どもが独立すると教育費は不要になり、住宅ローンを完済すれば住宅費の負担も軽くなります。若い頃の必要保障額が、そのまま老後まで必要なわけではありません。
もし、人に勧められるままに生命保険に加入して、その後に保険証券を何年も見ていないという人は、この機会に一度、「今のわが家に本当に必要な保障額はいくらなのか」を数字で確認してみてはいかがでしょうか。
| 第1回 | 住宅ローンの「50年ローン」は是か非か |
|---|---|
| 第2回 | 資産運用、正しくできていますか? |
| 第3回 | 「なんとなく」入った生命保険、どう見直す? |
| 第4回 | 公開をお楽しみに! |
| 第5回 | 公開をお楽しみに! |
| 第6回 | 公開をお楽しみに! |
CFP®認定者
平井 美穂 氏
平井FP事務所代表。宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー、証券外務員1種。大学卒業後、新築マンションの販売会社に就職。用地仕入れ後の商品企画からモデルルームでの営業まで経験。その後、銀行およびモーゲージバンクへ転職し、融資業務・金融商品販売に従事する。出産を機に独立系ファイナンシャル・プランナーとなり、公正中立な立場で「住宅の正しい買い方、ローンの借り方・返し方、資産形成の方法」をコーチしている。5,500件超の相談実績を誇る、実践派のファイナンシャル・プランナー。
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