公開:2026.09.10

【損害保険】車両保険は必要?! 万が一に備える自動車保険(竹下さくら氏)

チャット風吹き出し最終決定版(中央寄せ修正版)

ベテランFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。

竹下さくら氏

若年層の取得率は低下しているものの、16歳以上の人口に対する取得率は75%を超える自動車運転免許。地域によっては日常生活に欠かせないものですが、ひとたび事故を起こしたら一生を左右することにもなりかねません。【損害保険】第4回は、万が一の事故に備える自動車保険について紹介します。

強制加入の「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」とは

自動車事故による損害を補償する保険には、自動車を使用する際に法律で契約が義務付けられている「自動車損害賠償責任保険、または自動車損害賠償責任共済(以下、自賠責保険)」と、民間の損害保険会社などが販売する「任意の自動車保険(以下、自動車保険)」の2種類があります。

自賠責保険は自動車損害賠償保障法に基づいて、原動機付自転車、電動キックボードなどを含むすべての自動車に強制加入が義務付けられていて、加入していない状態で走行すると罰金や免許停止といった罰則が科されます。新車・中古車の登録時や車検時には自賠責保険への加入や更新を確認する仕組みになっているので、車検制度がある車の場合は基本的に未加入が発生することはありません。

法律に基づいて加入義務がある強制保険のため、保険料は契約者の属性や事故歴などに関わらず車種ごと一律に設定されています。地震保険と同様にノーロス・ノープロフィット原則が適用され、損害保険会社の利益を含まない最低限の保険料で、いずれの会社で加入しても保険料は同じです。

自動車による人身事故の被害者救済を目的としているため、保険金が支払われるのは他人を死傷させたことによる損害賠償の場合に限られます。また、被害者1人当たりの支払保険金についても限度額が設けられています(図表1)。

図表1■「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」で支払われる保険金の限度額

(保険期間の始期が2022年10月1日以降の契約の場合)

 

出所:(一社)日本損害保険協会「日本の損害保険 ファクトブック2025」

任意保険への加入はなぜ必要なのか。補償範囲と保険金

自賠責保険へ強制加入しているにもかかわらず、多くの人が自動車保険に加入するのはどうしてでしょう。自動車に関わる損害の種類と対応する保険を分類した(図表2)を見るとわかるとおり、自賠責保険でカバーされるのは「相手を死傷させた」場合のみで、保険金額についても限度額が設定されているため、損害額が高額になった場合は不足してしまう可能性があります。ですから、自賠責保険だけでなく自動車保険で万が一に備える必要があるのです。

図表2■損害の種類と対応する自動車の保険

 

出所:(一社)日本損害保険協会「日本の損害保険 ファクトブック2025」

各損害保険会社は、様々なタイプの自動車保険を発売しています。内容を大きく分類すると7種類の補償があり(図表2/任意加入)、基本補償として必ず含まれているのが「対人賠償責任保険」と「対物賠償責任保険」です。

対人賠償責任保険は自動車事故で他人を死傷させて法律上の賠償責任を負ったとき、自賠責保険の保険金限度額を超えた分を、対物賠償責任保険は自動車事故で他人の物を壊して法律上の賠償責任を負った場合の損害を補償する保険です。日本損害保険協会の「日本の損害保険 ファクトブック2025」によると近年の判例の認定総損害額の最高額は、人身事故が約5億3,000万円、物件事故が約2億6,000万円です。人身事故の場合は死亡よりも後遺障害、物件事故は鉄道が絡むと高額になる傾向があるようです。ですから、保険金限度額は「1億円」「2億円」などといった選択肢もありますが、保険料に大きな違いはありませんから「無制限」にしておくと安心です

そのほかの補償をまとめたのが(図表3)で、これらは商品によって基本補償に含まれるものと、特約として付帯する場合があります。この中で、特に正しく理解しておきたいのが「人身傷害保険」と「搭乗者傷害保険」です。

人身傷害保険は、保険契約をした乗車中の人が死傷した場合、契約時に決めた保険金額を限度として、治療費や後遺障害による損失などを実損払いで補償します。実際にかかった医療費などに基づいて支払われるため給付までに時間はかかりますが、費用が高額になった場合でも安心です。また、過失割合に関わらず保険金が支払われるため、示談解決を待つ必要もありません。補償範囲は契約時に特定した自動車に乗車しているときだけでなく、ほかの自動車へ乗車しているときや歩行中であっても補償する商品もあります。

これに対して、搭乗者傷害保険は保険契約をした乗車中の人が死傷したとき、契約時に決めた保険金額を限度に、部位や症状に応じた定額の保険金が支払われます。保険金は一律なので治療終了を待たずに保険金が支払われるため、事故後すぐに経済的なサポートを受けられます。 そのほか支払われる保険金の種類も異なりますから、加入に当たっては内容の違いを正しく理解する必要があります。

図表3■自動車保険の自分や同乗者への補償

 

出所:竹下さくら氏作成

選択肢が多い自動車保険。特約の補償内容も確認を

自動車保険は基本補償に含まれる内容や対象となる範囲だけでなく、自動付帯サービスや特約など商品によって様々な違いがあります。主な特約をまとめたのが(図表4)です。

他人の車を運転中に事故を起こした場合、運転していた車の保険を使うとノンフリート等級が下がり、翌年の保険料が割り増しになってしまいます。車の所有者に負担をかけないためにも、他人の車を運転する機会が多い人は「他車運転危険補償特約」の付帯を検討するといいでしょう。

事故の加害者になった契約者に代わって相手方と示談交渉を行い解決までのサポートをする「示談交渉サービス」は、ほとんどの自動車保険に自動付帯されています。ところが、自身の過失がゼロで被害者となったときはこのサービスを使えません。このような場合に備えられる特約が「弁護士費用特約」です。限度額はありますが、法律相談費用、弁護士報酬、訴訟費用等が保険金として支払われます。

「ドライブレコーダー特約」は機器を購入して取り付ければ不要と考えるかもしれませんが、高齢者にはぜひ勧めたい特約です。自動車保険の特約として付帯すると、運転中の映像を保存するだけでなく、運転状況をデータで見える化して分析したり、事故発生時には警察や登録した家族などへ連絡するといった、単なるドライブレコーダー以上の機能を備えています。保存された運転データは家族にも共有されますから、運転免許の自主返納を承諾しない高齢者を説得する材料にもなりそうです。

図表4■自動車保険に付帯できる主な上乗せ特約

 

出所:竹下さくら氏作成

値上がりが続く保険料には、どう対抗する?

先進装備車の増加や部品代の上昇による修理費の高騰、自然災害(雹災)の多発による車両保険金の増加などから、保険料は2024年以降値上がりを続けています。今年6月にも損害保険料率算出機構は保険料算出の基となる参考純率を平均14.4%引き上げる届け出を金融庁へ提出したことから、2027年も各保険会社で値上げが相次ぐことが想定されます。

そんな中で、自動車保険料の値上げに対抗するためにはどのような方法が有効なのでしょう。自動車保険は1年単位での契約が主流のため、火災保険のように長期契約をすることで保険料を抑えることが難しい商品です。

そこで、まず更新日の3~2カ月前になったら、自分が加入している保険会社が含まれているインターネットの保険料一括見積サイトを探して、現在の加入条件を基に見積りをします。そこで上位候補を数社に絞り、さらに各社のホームページで見積もりを行います。というのは、自動車保険は特約やオプションの種類が多いため、各社独自のシミュレーションでないと正確な保険料を算出することができないことがあるからです。また、早めのタイミングで更新すると保険料が割引になる会社もありますが、あまり早すぎても正確な保険料が算出されません。更新に当たっては、2カ月前など適切なタイミングで手間を惜しまず見積もりを依頼することがポイントです。

補償内容の中で、保険料を抑える余地が多いのが「車両保険」です。一般的なプランとエコノミー型などと呼ばれる補償内容を限定した2プランを設定している会社が多く、エコノミー型は相手が自動車の場合に絞り自損事故を補償の対象外にすることで保険料を安くするといったプランが多いです。当て逃げについては補償しない会社が多いなど、エコノミー型については各社で補償内容が異なるので、検討する際は必ず内容を詳しく確認してください。

免責金額を設定することでも、保険料を軽減できます。車両保険の保険金額は時価ベースのため、購入から年数が経過した車は車両保険を外すことを考える人もいるようですが、駐車中に大雨で水没したり雹災に遭うこともある時代です。まずは、外す以外の選択肢を検討してみましょう。

運転者の範囲や年齢を限定することで保険料を軽減する「運転者限定特約」、「運転者年齢条件特約」はいずれの商品にもある特約ですが、会社によっては「先進安全自動車(ASV)割引」、「走行距離割引」「エコカー割引」など様々な割引を設定しています。自分の車が割引対象になっている商品を探すといった細かな工夫の積み上げが、保険料の節約につながります。

交通事故は損害保険の対象になる事故や災害の中でも、発生の頻度が高いトラブルです。事故の際は自身が加入する保険会社、または相手方の保険会社とやり取りをすることになりますが、示談で解決できなかったり解決内容に合意できないことが起きるかもしれません。そんなときは「そんぽADRセンター」や「公益財団法人 日弁連交通事故相談センター」へ相談してみましょう。

次回の「損害保険」は、日々の暮らしを守る「個人賠償責任保険」・「自転車保険」について解説します。
アコーディオン目次

お話を伺った方

CFP®認定者

竹下 さくら 氏

独立系のなごみFP事務所を運営。個人のコンサルティングを柱に、セミナー講師や執筆活動も行う。千葉商科大学 基盤教育機構 特任教授。『1 時間でわかる やれば得する! 保険の見直し 100の鉄則』(技術評論社)など著書多数。

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