公開:2026.09.08

【経済動向】パワーカップルってどのような人たち?―家族構成、働き方、住まい、資産の現状を分析(久我尚子氏)

チャット風吹き出し最終決定版(中央寄せ修正版)

ベテランFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。

久我尚子氏

今回の「経済動向」では、日本国内で増えつつあるパワーカップル世帯の家族構成や働き方、住まい、資産の現状などについて解説します。

パワーカップルは過去10年で2倍に増え、49万世帯に

若い世代で共働きが一般的になりつつある中で、夫婦ともに高収入の共働き夫婦であるパワーカップルが増加傾向にあります。ニッセイ基礎研究所ではパワーカップルを「夫婦ともにおおむね年収700万円以上」と定義しています。

パワーカップル世帯は近年増加傾向にあり、夫婦ともに年収700万円以上の世帯は、過去10年で約2倍に増え、2025年で49万世帯に達しています(図表1)。なお、共働き世帯(夫婦ともに就業者の世帯)に占めるパワーカップル世帯の割合は約3%、総世帯に占める割合は約1%となっています。世帯数としてはわずかではあるものの、消費の牽引役として注目されています。

図表1 ■世帯類型別に見たパワーカップル(夫婦ともに年収700万円以上)世帯数の推移

出所:総務省「労働力調査」を基に久我氏作成

では、パワーカップルはどのような世代が、どこに住み、どのような暮らしを営んでいるのでしょうか。ニッセイ基礎研究所の「生命保険マーケット調査(2025)」を用いて、パワーカップルの特徴を明らかにしました。なお、データの制約上、配偶者の年収条件を設定できないため、妻の年収が700万円以上の世帯について分析を行いました。妻の年収が700万円以上の世帯では、約7割で夫の年収も700万円以上であるため、パワーカップルの傾向を捉えられると考えられるからです。

小中学生中心の子育て世帯が4割強を占める

まず、年代分布を見ると、パワーカップルが含まれる妻の年収700万円以上の層は、40歳代が35.1%、50歳代が31.1%で、全体の66.2%を占めています。ここから一定のキャリアを積んだ管理職層などが中心であると考えられます。

パワーカップルというと、従来はDINKS(Double Income No Kids:子どものいない共働き世帯)をイメージする傾向がありました。しかし、「生命保険マーケット調査(2025)」からは、子育て世帯が44.6%を占め、最も多いことがわかりました。特に「第一子小学校入学」(16.2%)、「第一子中学校入学」(12.2%)が全体と比べて多く、パワーカップルは小・中学生の子どもを持つ世帯が中心となっています。この背景には、年収700万円以上に到達するには一定のキャリアを積む必要があり、その時期が子育て期と重なることがあげられるでしょう。パワーカップルは大きく、下記の3つのタイプに分けることができます。

・DINKS層(結婚期、子育て前期):23%
 キャリアを築きながら、自己実現や趣味に時間とお金を使う自由度の高い層

・子育て層(小中学生中心):44.6%=パワーファミリー
 キャリアの発展期と子育て期が重なり、仕事と育児の両立に奮闘する層

・ポスト子育て層(子が大学生、独立以降):32.5%
子育てが一段落し、時間的・経済的余裕を活かして、キャリアと暮らしの充実を図る層

扶養する子どもの人数は「2人」が最も多く37.5%で、「3人以上」の世帯も20%あります。「3人以上」の多子世帯は、調査対象全体(11.0%)の約2倍にのぼります。この理由として、年齢的な要因に加えて、経済的なゆとり、大企業勤務が多い(後述)ことによる育児支援制度の充実、さらに夫婦の協力や外部サービスを活用しながら子育てとキャリアを両立できる環境が多いことが考えられます。また、子どもの人数が多いからこそ、夫婦ともに働き続ける必要性が高まるという側面もあるでしょう。

8割強が都市圏に集中し、持ち家率も8割にのぼる

パワーカップルが含まれる年収700万円以上の既婚女性の職業ですが、正規雇用者は半数(50.0%)にとどまるものの、「公務員」は12.2%と多い傾向があります。雇用者(正社員・正職員)と役員(経営者・役員)に勤務先の企業規模をたずねた結果では、半数(50.0%)が従業員規模1,000人以上の企業に勤務しています。賃金水準の高さに加え、育児休業制度や時短勤務、フレックスタイムなど仕事と子育ての両立を支援する仕組みが充実しており、キャリアを継続するうえでの重要な基盤が整備されているからこそ、働き続けられるといえそうです。

居住地域について前述の「生命保険マーケット調査(2025)」を見ると、パワーカップルを含む年収700万円以上の世帯では、「南関東(東京・神奈川・千葉・埼玉)」が最も多く、約6割(59.5%)となっています。次いで、「東海」(13.5%)、「近畿」(12.2%)と続き、8割強が三大都市圏に集中していることがわかります。パワーカップルの女性の約半数が大企業勤務や公務員として働いており、こうした職場が都市圏に集中している影響が大きいといえるでしょう。

居住形態は、「持ち家(戸建て)」が52.7%と最も多く、次いで「持ち家(集合住宅)」(28.4%)と、持ち家率は8割にのぼります。40・50歳代中心という年齢構成に加えて、高い収入による資産的余裕、多子世帯の多さなど、子育て環境の安定を求めるニーズが背景にあると考えられます。

経済的余裕がある層が7割超だが、余裕がない層も約4分の1存在する

パワーカップルを含む、妻の年収が700万円以上の層では、金融資産が「2,000万円以上」の割合が過半数(55.4%)に達します。「4,000万円以上」も35.1%と、全体(14.1%)の2倍以上にのぼっています。パワーカップルの世帯では、40・50代を中心とするキャリアの継続や、大企業や公務員といった制度的に安定した職場での就業、共働きによる家計の余裕が、確実な資産形成につながっていると考えられるでしょう。

主たる家計管理者については、「夫婦での共同管理」が23.0%と約4分の1を占めています。夫婦双方が高収入を得ていることで、家計の意思決定を共有し、協力して運営する姿がうかがえます。

経済的な余裕感については、パワーカップルを含む妻の年収が700万円以上の世帯では、「余裕がある(たいへん余裕のある方だ)+(やや余裕のある方だ)」と回答した割合が74.3%を占めています(図表2)。ちなみに、「余裕がある」という回答は、専業主婦の世帯では42.5%、共働き世帯で妻の年収が300万円未満の世帯では48.0%、年収300万~700万円未満では54.0%です。

図表2 ■既婚女性の経済的余裕感

出所:ニッセイ基礎研究所「生命保険マーケット調査(2025)」を基に久我氏作成

その一方で、共働き世帯で妻の年収が700万円以上の世帯で「たいへん余裕がある」は18.9%にとどまり、中心は「やや余裕がある」(55.4%)となっています。また、約4分の1(25.7%)は「余裕がない(「やや余裕のない方だ」+「まったく余裕のない方だ」)」と回答しており、必ずしも収入水準がそのまま経済的な余裕感につながっているわけではないようです。

余裕を感じにくい背景には、支出の大きさが考えられます。パワーカップルの約6割が子どもを2人以上扶養しているため、教育費負担が重いといえるでしょう。持ち家率8割という住宅事情から住宅ローンを抱える世帯も多く、さらに老後資金など将来への備えも欠かせないという事情もありそうです。

攻めには積極的だが、守りの知識は相対的に低め

金融リテラシーに関して、パワーカップルを含む妻の年収が700万円以上の世帯では、「金融や経済の仕組みに普段から関心をもっている」「よい金融商品・サービスがあれば積極的に利用を考える方である」といった、金融行動に関する「関心・行動意欲」をたずねる項目について、約7割が「あてはまる」と回答しています(図表3)。

図表3 ■既婚女性の金融意識

出所:ニッセイ基礎研究所「生命保険マーケット調査(2025)」を基に久我氏作成

「株式・債券などの証券投資の知識・経験がある」「株式や債券、外貨建資産などの投資に伴うリスクについて理解している」といった資産運用の知識・経験に関わる項目では、約6割が「あてはまる」と答えています。

ただし、「生命保険や損害保険についてはひと通りの知識を持っている」「預貯金や保険、投資について、利用者や消費者を保護するためにどのような仕組みがあるか知っている」といった、家計を守る金融商品や制度については、「あてはまる」と回答した割合は5割程度にとどまります。

ここから、パワーカップル層は、金融への関心や行動意欲が高く、投資関連の知識・経験もある一方で、保険や消費者保護といった家計を守る知識についてはパワーカップル層でも必ずしも十分ではなく、金融リテラシーの中でも強い部分と弱い部分が混在する姿が浮かび上がります。攻めには積極的な一方で、守りの知識は相対的に弱いともいえるでしょう。

日頃の情報源については、「個別企業サイト」や「専門誌・業界紙」「セミナー・イベント」といった目的意識を持ってアクセスする情報源の利用が他層と比べて多く、能動的に情報を収集する姿勢が強い様子がうかがえます。

パワーカップルは、共働き社会の先行指標にもなりうる存在だと考えます。金融リテラシーに関する項目への回答から、パワーカップル層は、高い能力と意欲を持ちながら、時間という制約の中で最適解を模索している様子が見受けられます。この層が限られた時間の中で質の高い判断ができるよう、情報環境を整えることがますます重要になっていくのではないでしょうか。

■まとめ
・夫婦ともにおおむね年収700万円以上のパワーカップルは約49万世帯
・パワーカップルの4割強が子育て世帯
・経済的な余裕がない世帯も約4分の1存在する
・攻めには積極的だが、家計を守る金融商品や制度の知識は相対的に弱め
■FPへのアドバイス
・パワーカップルは共働き社会の先行指標になりうる存在
・万一の保障や消費者保護の制度に関する情報提供を充実させる必要もある
アコーディオン目次

お話を伺った方

ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員

久我 尚子 氏

2001年早稲田大学大学院理工学研究科修了(工学修士)。2001年株式会社NTTドコモ入社、2007年独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用、2010年ニッセイ基礎研究所入社。2021年7月より現職。総務省「統計委員会」委員。専門分野は消費者行動、心理統計、マーケティング。著書に集英社新書「選ばない消費―AI時代の暮らしと価値観」(2026年6月)など。

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