公開:2026.07.29

61歳・再雇用で働く夫は即リタイアしたい!老後資金は大丈夫?

※この画像はイメージです。

会員が実際に対応した相談事例を取り上げるこのコーナー。今回は、再雇用で働いているものの、すぐにでもリタイアしたい61歳の夫と、会社員・53歳の妻からの相談です。夫がすぐにリタイアしても老後資金は不足しないか。CFP®認定者で、キャリアコンサルタントの資格も持つ高村浩子さんがアドバイスします。

ヒアリングシート

相談内容・プロフィール

Aさん夫婦の家計データ

年間収支

155万円

収入

782万円

Aさん給与(額面)

583万円

Aさん妻の給与(額面)

244万円

支出

627万円

日常生活費

432万円

住居費(固定資産税) ※1

8万円

保険料 ※2

15万円

社会保険料・税金

172万円

金融資産合計

7,761万円

預貯金 ※3

5,962万円

株式

289万円

債券

1,510万円

※1 持ち家(一戸建て)、ローンなし
※2 妻の医療保険、自動車保険2台分
※3 退職金1,792万円を含む

相談者プロフィール

Aさん(61歳・夫・会社員)、妻(53歳・会社員)。子どもは2人おり、すでに独立。夫婦とも両親は他界している。

相談内容

Aさんは60歳で定年を迎えたあと、再雇用で勤務している。趣味を楽しみたいので、すぐにでもリタイアしたいが、老後資金は大丈夫だろうか。ゆくゆくは夫婦で一緒にサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に入居し、自宅は売却するつもり。数年前にもリタイアする時期について別のFPに相談したことがあるが、預金額なども変化したため、改めて相談したい。実は妻もキャッシュフロー表(以下CF表)を作成してみたが、抜けがありそうで自信がない。また夫は医療保険を解約、妻は継続しているが、続けた方がいいか。

この相談のポイント

  • すぐリタイアし、将来はサ高住。妻86歳時には残高がマイナスに
  • サ高住以外の可能性も含め、余裕を持たせる
  • 妻が楽しみながら就労を継続することで夫の即リタイアは可能

1.すぐリタイアし、将来はサ高住。妻86歳時には残高がマイナスに

夫がリタイアしても老後資金に問題がないかを知りたいAさん夫婦。将来はAさんが80歳頃を目安に、ともに健康な状態で施設入居、具体的にはサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に入居したいと考えています。そうしたライフプランに沿って、自らCF表を作成していました。

「CF表は、夫のAさんは62歳でリタイア、妻は60歳まで働く想定で作成されていました。Aさん105歳・妻97歳時点で金融資産残高が1,600万円程度という結果になっており、そのとおりにいけば、Aさんはいつでもリタイアできそうです。しかし入力に誤りがある、サ高住の費用が曖昧であるなどの不備も散見されました。そこで、改めてお二人の希望を踏まえたCF表を作成することにしました」

サ高住についてはAさんの現在の住まいの周辺にある施設の相場を確認。自宅からの引っ越し費用なども含めて入居時の費用を350万円程度、その後のサ高住の費用を含む生活費は年間約460万円程度と仮定しました。

またAさんは一戸建てを保有しており、施設入居の際、自宅は売却する意向です。Aさんは地元不動産会社に確認したことがあり、売却代金は700万円程度(80歳売却時の築年数を考慮した査定)、諸費用を約410万円程度と見込んでいます。

高村さんは、以上の想定でCF表を作成。すると、Aさん94歳、妻86歳時点で金融資産残高はマイナスに転じる見込みであることがわかりました。

「65歳までは雇用延長などで働く必要があると考える方が多いようですが、Aさん夫婦の場合はCF表を見る限り、夫がすぐにリタイアしても、しばらくの間、家計はなんとかなるように見えます。ご夫婦には相談時点で7,800万円近い金融資産があること、住宅ローンの返済が終わっていることなども、その助けになっていると考えられます。とはいえ、妻86歳の時点で金融資産はマイナスになります。さらに計画外のことが起きたり、施設利用料の値上がりや、医療費や介護費用がかさんだりすることも考えられ、対策が必要といえます」

2.サ高住以外の可能性も含め、余裕を持たせる

「計画通りにいかないこと、予想外の費用がかかること」の1つとして高村さんが挙げるのが、将来の暮らし方です。「健康状態によっては、80歳時に夫婦とも自立した状態でサ高住に入所できるとは限りません」(図表1

図表1 Aさん80歳時点の夫婦の希望と現実

※高村氏への取材を基に日本FP協会作成

サ高住でも、介護保険を利用して介護サービスを受けることは可能ですが、特別養護老人ホーム(特養)や有料老人ホームなどで施設介護を受けた方が暮らしやすい可能性もあります。施設介護を受ける場合には、特養や有料老人ホーム、認知症ではグループホームなどの選択肢があり、施設や要介護度、所得、資産状況などにより自己負担額が異なります。

また特養などでは原則として要介護3以上が入居の条件であり、どちらかが要介護状態、もう一方が自立など、夫婦の健康状態が異なると、1人は特養、1人は自宅居住などとなることも考えられます。「状況によっては、サ高住に夫婦で入居するより費用がかさむ可能性があることも、想定しておきたいところです」

将来、どのような高齢者施設を利用することになるか、現時点では確定できません。そこで「どんなケースでもある程度対応できるよう、資金に余裕を持たせることが望ましい、とお話ししました」(高村さん)

キャリアコンサルタントの資格も持つ高村さんは、Aさんがすぐにでもリタイアしたい理由を確認しました。すると、Aさんは山登りが趣味で、登山ガイドの仕事をしたいという希望を持っていることがわかりました。「再雇用で収入が大きく減ったのが我慢できない、仕事にやりがいないなどの理由でリタイアすると、時間を持て余したり、心身の健康を損なったりする可能性もあります。Aさんには具体的にやりたいことがあり、経済的に無理がなければ希望を実現させるのがよさそうです」

一方、妻に働き方や意欲について確認すると、趣味に通じる仕事をしており、施設入居するまではペースを落としながら仕事を続けたい意向であることがわかりました。

そこで高村さんは、Aさんは61歳で退職、妻は施設入居を想定している72歳(Aさん80歳時)まで働く想定でCF表を作成してみました(図表2)。妻の収入は54歳から287万円、61歳からは200万円、65歳からは100万円、70歳からは50万円とします。「Aさんも、登山ガイドで月数万円の収入が得られる可能性もあるそうですが、ご本人の意向もあり、収入は見込まないこととしました」

図表2 Aさんの即退職と妻72歳までの就労を反映した場合のキャッシュフロー表

出所:高村氏への取材を基に日本FP協会作成

CF表条件

【収入】
● Aさん給与収入:61歳/538万円
● Aさん公的年金:65歳~終身/177万円
● 妻の給与収入:53歳/244万円、54~60歳/287万円、61~64歳/200万円、65~69歳/100万円、70~72歳/50万円
● 妻の公的年金:65歳~終身/120万円
【支出】
● 日常生活費:Aさん80歳まで/432万円、81歳(施設入居)~終身/456万円
● 保険料:Aさん80歳まで/15万円、81歳~終身/10万円
● 住居費(固定資産税):Aさん80歳まで/8万円
● 車買い替え費用:Aさん63歳、73歳/350万円
● リフォーム代:Aさん70歳/200万円
● 夫婦施設入居費用:Aさん81歳/350万円
【金融資産】
● Aさん61歳時年末残高/7,761万円(内訳は家計データのとおり)
【自宅売却】
● 売却代金/700万円、諸費用(家財処分・解体費用)/408万円
※変動率は考慮していない。

3.妻が楽しみながら就労を継続することで夫の即リタイアは可能

以上の想定でCF表を作成すると、妻100歳時にも約700万円の金融資産が残ると試算されます。「楽しみながら長く収入を得るのは健康面においてもプラスの効果があります。ほかに支出を抑えることでさらにCF表を改善することもできます。またAさんは株式や債券も保有していますが、それらの運用益は考慮しておらず、実際にはさらに余裕ができる可能性もあります」

Aさんは、妻の医療保険についても気になっています。

Aさんは、高額療養費制度で医療費には上限があることや、貯蓄に余裕があることなどから、医療保障の必要性は低いと考え、すでに医療保険を解約していました。医療保険を解約する際に、一時払いの終身保険(500万円)に加入しており、これを医療・介護費として予定しているといいます(CF表には計上していない)。

一方、妻は医療保険を継続しており、それを解約するかどうか、迷っています。

「高額療養費制度で医療費の自己負担は軽減されますが、差額ベッド代や病衣、リネンのレンタル費用など、医療費以外の費用もかかります。そうしたことを踏まえて解約するか、継続するかを検討されるよう、アドバイスしました」

現在は健康状態も良好なAさん夫婦。施設入所はまだ先のことといえそうですが、「サ高住やその他の高齢者施設について、情報を集めて費用を確認したり、見学に行ったりして、候補をある程度絞っておくと安心です。サ高住、有料老人ホームとも、夫婦用の居室は多くはありませんので、予約が可能かなども問い合わせておくといいでしょう」(高村さん)

お話を伺った方

CFP®認定者

高村 浩子 氏

ライフ支援パートナーOne Step代表。国家資格キャリアコンサルタント。お金・キャリア・生き方の視点から、一人ひとりの主体的な成長と豊かな人生を支援。地域に根差した活動を展開するほか、従業員のウェルビーイング向上を通じた「選ばれる企業づくり」にも力を注いでいる。

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