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【リタイアメントプラン】50代が持つお宝・個人年金保険。 年金額をさらに増やすには?(深田晶恵氏)

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公開:2025.07.31
更新:2025.08.28
ベテランのFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。「家計管理」第2回目は、ラクに貯めて楽しくお金を使う「逆算貯蓄」について解説します。
家計相談に来られた方とお話をしていて、私が心の中で「もったいないな」と思うことがあります。それは家計管理を頑張っていても、夢や目的のために楽しくお金を使えている人が少ないから。
例えば「お金が貯まったら海外旅行に行きたい……」と言いながら、なかなかお金が貯まらない人がいます。一方で、実現するための貯蓄は充分にあるのに「せっかく貯めたお金を使うのがもったいない」と、結局行動できない人もいます。さらには、楽しみにしていた旅行に行ったはずなのに「あ~あ、旅行に行ったらお金がなくなっちゃった。せっかく貯めたのに……」と、落胆や後悔の念を感じてしまう人もいます。これでは何のために貯蓄をしているのかわかりませんし、お金を使うことが楽しくありません。
お金を「貯めること」が目的になっていると、お金を使って残高が減ったときに、喪失感や罪悪感を抱くようになってしまうことがあるのです。
そこで、楽しくお金を使い、気持ちよく夢を実現するためにおすすめしたいのが「お金が貯まったら使う」ではなく、「使うためにお金を貯める」という発想の転換です。つまり、使う目的を明確にして、そこから逆算してどうやって貯めて使うか、を考えるのです。これを私は「逆算貯蓄」と呼んでいます。
逆算貯蓄の第一歩は、「いつ」「何に」「いくら」貯めたいのか明確にすること。
例えば、「いつか家族で海外旅行に行きたい」という希望があれば、時期や行き先をできるだけ具体的にイメージしてみてください。一口に海外旅行といっても、近場の韓国や台湾の旅行費用と、遠いヨーロッパでの予算は大きく異なります。同じ行き先でも、夏休みやお正月といったハイシーズンに行くのか、オフシーズンに行くのかでも、2倍ぐらい金額が違ってきます。
また幼いお子さんがいる家庭なら、「お金が貯まる10年後」と想定すると、子どもの費用も大人料金になってきますし、受験と重なってその時期は難しい……などと気づくこともあります。できるだけ夢のイメージを具体化しながら時期や予算額を明確にしていきましょう。具体的な目標を仮設定してから、月々の貯蓄額を逆算して算出するのです。
例えば、「5年後に予算100万円でハワイ旅行へ行く」という目標を立てたとします。
毎月の積み立て額は、予算を年数で割り、さらに12カ月で割るだけです。「5年後に100万円」が必要なら、「100万円÷5年÷12カ月」で、1カ月当たり約1万7,000円を積み立てると、5年後に約100万円になります。これを実行すれば、100万円という大きな出費も確実に用意でき、安心して使うことができます。
月々だけで目標に合った積み立てができれば問題ありませんが、家庭によっては毎月1万7,000円の積み立てが難しいこともあるでしょう。そんなとき、ボーナスがある人は、月々の積み立てにボーナスを組み合わせた貯蓄計画を考えましょう。
この場合、まずは「毎月いくらなら無理なく積み立てできるのか」を考えます。「毎月5,000円なら無理なく貯められる」という場合は、「毎月の積み立て額×月数×年数」で計算します。
「5,000円×12カ月×5年」で、5年後には30万円貯まりますが、目標の100万円には足りません。この足りない金額をボーナスで用意します。
ボーナスで貯める金額は、「目標額-毎月積み立ての総額」で計算できます。この例では「100万円-30万円」で、70万円です。ボーナスは年2回の会社が多いですから、「70万円÷5年÷2回」で計算するとボーナス1回当たり、7万円を貯めると目標達成となります。
つまり毎月5,000円、ボーナスでは約7万円を上乗せして5年間積み立てると、100万円を貯めることができるのです。 一度に100万円を準備するとなると大変に思えますが、毎月5,000円、ボーナス1回7万円なら、達成できそうな気がしてきませんか?
さらに共働きであれば、この積み立て額を夫婦で分けることもできます。夫は月々4,000円とボーナス時3万円、妻は月々1,000円とボーナス時4万円とすれば、実現が一層近づいて見え、ワクワクしてきませんか?
「逆算貯蓄」のコツは、放っておいても貯まる“仕組みづくり”をしておくこと。つまり、給与から自動積み立てできる金融商品を選び、月々、ボーナス時の自動積み立てを開始しましょう。
また、貯蓄目的は1つとは限りません。海外旅行以外にも、子どもの教育資金や住宅・リフォーム資金、老後資金といった必要時期までの期間が長いお金もありますし、家電・家具の買い替え、車の買い替えといった数年おきに発生する支出もあります。それぞれの目的や貯める期間、引き出しの頻度などに合わせて、金融機関や金融商品を分けて積み立てをしていくと、管理がしやすくなりますよ。
旅行資金や車の買い替えなどの積み立て期間が比較的短く、元本割れしては困る貯蓄や、家具・家電の買い替えのように、積み立てしながら頻繁に途中引き出しをする貯蓄には自動積立定期預金が向いています。勤務先に給与天引きの財形貯蓄制度がある場合は、それを活用するのもいいでしょう。
一方で、しばらく使う予定がない貯蓄やリフォーム費用、老後資金など積立期間が長期にわたる場合は、運用益が非課税のNISA制度を使った投資商品が活用できます。また、老後資金目的なら、職場の企業型確定拠出年金(DC)のマッチング拠出や選択制の活用、iDeⅭo(個人型確定拠出年金)が適しています。
NISAは1人1口座しか開設できませんが、目的別に投資商品を分けることで、目的別の投資もできます。家計管理アプリを使っている人なら、メモ機能を使って、商品Aは教育資金用、商品Bは老後資金用、商品Cはリフォーム用とメモしておけば、自分で覚えておかなくても、投資商品ごとに使用目的がわかり、必要な分を売却できるので便利です。
「逆算貯蓄」の注意点を挙げるとすれば、目的をあまり細かく分け過ぎないことです。 私が逆算貯蓄についてお話しすると、真面目な方は、ものすごく細かく目的を設定されることがあります。「家にエアコンが3台あるから、エアコンの買い替えで15年ごとに40万円、冷蔵庫が10年ごとに20万円で、洗濯機が……」という具合です。そうすると、目的が多くなりすぎて管理も複雑になってしまいます。
もし目的を分けて逆算貯蓄を考えるのであれば、教育資金、住宅・リフォーム資金、老後資金、家電・家具の買い替え、車の買い替え、旅行費用、医療・介護費用など、多くても5~7種類くらいでよいと思います。
また、人生には予期せぬことも起こりますから、目的や目標額が途中で変わってもかまいません。大事なことは、「仮」でもいいから貯蓄目標を決めて、積み立てをスタートすること。自動で積み立てる仕組みをつくってしまえば、後は何もしなくても確実に貯まります。 あらかじめ家計から「将来使うためのお金」を取り分けて積み立てておくと、日々のお金の管理で「いくら貯めたらいいのか、生活費にいくら使っていいのか」と、もやもやするストレスからも解放されます。何より、目標を達成したときには「やった~! 目標額が貯まったから○○ができる!」と、幸せなお金の使い方ができるようになりますよ。
CFP®認定者、株式会社Cras代表
前野 彩 氏
J-FLEC認定アドバイザー、MBTI認定ユーザー。中学校・高校の養護教諭から2001年FPに転身。2008年にFPオフィスwillとして独立、2014年に株式会社Crasを設立。金融商品を扱わない独立系FPとして個人相談を中心に活動。近著『本気で家計を変えたいあなたへ〈第6版〉~書き込む“お金のワークブック”~』(日経BP日本経済新聞出版)をはじめ、著書は全21冊。
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