著名人インタビュー
2025.11.10
【元サッカー日本女子代表/澤穂希さん】トップアスリートから母へ。ライフプランも大きく変化(後編)
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公開:2025.11.10
さまざまなフィールドで活躍する方々に、自身を成長させてくれた学びや人生における挑戦、夢や目標の実現について語っていただく本企画。今回は、日本女子サッカー界のレジェンド、澤穂希さんのインタビューを前後編でお届けします。後編では、プロサッカー選手を引退されてからの生活やライフプランの変化、挑戦した学びについてお話を聞きました。
——2015年に現役を引退されて、結婚・出産とライフステージに大きな変化がありました。ご自身のライフプランやキャリアに対する考え方が変わったと感じることはありますか。
“サッカー一筋”の生活が一変して、「家族との時間を大切にしたい」と感じるようになり、セカンドキャリアやライフプランについてもいろいろと考えるようになりました。
ワールドカップなどの大会で、長年「ダブルボランチ」としてコンビを組んでいた元日本代表のチームメイトがいるのですが、彼女は「資格マニア」を自称していて、難関資格の行政書士、宅地建物取引士の試験に一発合格しているんです。ほかにも、2級FP技能検定にも合格しています。彼女にいろいろ話を聞いてから、FP資格に関心を寄せるようになりました。
現役のスポーツ選手で「引退後のセカンドキャリアをどうするか」ということまで考慮している人は、そう多くないと思います。さらに今、高額の年俸をもらっていたとしても、その稼ぎは引退後もずっと続くわけではありませんよね。「お金の話」をするのを敬遠する人もいますが、「現役引退後のアスリートのセカンドキャリアやマネープラン」について考えるのは、とても大事なことだと思っています。
引退後、長いセカンドライフをどう過ごしていくのか。まずは自分のやりたいことを見つけるというのも大切ですが、そのためにはやはり準備が必要。女性であれば結婚・出産という選択肢によっても、その後のライフプランが大きく変わってきますし、税金や年金、保険、不動産、相続といったトピックは、まさに自分の「ライフ」に直結することですから。その点、FP資格はそういった分野を網羅していますから、今後の自分に必要な知識なのではないかと興味をちょうど持ち始めたところです。
——澤さんご自身も2023年に「スポーツ栄養プランナー」「子育て心理アドバイザー」「食生活アドバイザー®3級」と3つの資格に挑戦し、すべて一度で合格されたそうですね。
この3つの資格はどれも、家族のために取ったものです。普段、夫は福島県に単身赴任しているのですが、週末は私たちが住む仙台に帰ってきます。家族で食卓を囲むときは、なるべく栄養バランスのいい食事を出してあげたいという思いから、食や栄養に関わる資格を取得しました。
子育て心理アドバイザーは、子育てするうえで自分に必要だと思い、勉強を始めました。
資格の勉強は、1日2時間など時間を決めてとにかく集中。長い時間をかけるよりも、短時間で集中して勉強したほうが身に付くタイプですね。

——娘さんに「お金との付き合い方」などを教える機会はありますか。
まだ小学3年生なので、お小遣いはあげていないのですが、夫とともにいつも口を酸っぱくして言うのは「ものを大事にしなさい」ということ。「何不自由なく暮らせるのは、当たり前のことではないのだから、今の環境に感謝の気持ちを忘れないで」と伝えています。
ほかにも、娘が5〜6歳のころから「お父さんとお母さんはお金を一切残さないから、自分で生きていく力を身に付けなさい」ということは言い続けていますね。「あなたが大人になって自立したら、お父さんとお母さんが一生懸命働いて貯めたお金は自分たちの老後のために使います」とはっきり宣言しています(笑)。
——娘さんの夢や目標にはどのようなスタンスで向き合っているのでしょう。
自分で「やりたいこと」を見つけられること自体が、素晴らしいと思うんです。だから、娘がやりたいことを発見できたら、親としてはあたたかく見守ってあげたい。彼女らしく生きるためにも、好きなことを続けさせてあげるのが一番いいんじゃないかと感じています。
うちは母親がずっと私たちきょうだいに対してそういうスタンスだったのですが、いざ親になるとなかなか「口出しせずに見守る」って難しいなと実感しています。まだ小さいので、「将来の夢」はその時々の興味によってコロコロ変わるんですけども、何か彼女なりの夢や目標が定まったなら、精一杯応援してあげたいですね。
——若いころはリスクを考えずにチャレンジすることができても、年齢を重ねるにつれ、新しいことへの挑戦に臆病になる気がしています。
確かに年齢を重ねると、どうしても「守り」に入ってしまいますよね。でも、人生一度きりですから、何歳になっても「やらないで後悔」するより「やって後悔」したほうがいいと思います。私自身も、サッカーから離れ、初めて挑戦する資格の勉強などを通じて感じたのは、「学ぶのって面白い」ということ。今は「自分の知らないことを学ぶ楽しさ」を、新鮮な感覚で味わっています。
迷ったり、悩んだりするときは、それが本当に「自分のやりたいこと」だという証拠です。チャレンジして、その結果が自分の望んだものでなかったとしても、また違う形で次につながると思うんですよね。だから、迷ったときはとにかく挑戦して、壁にぶつかったら思う存分もがいてみる。どうしようもなくなったら、立ち止まる勇気を持って、いったん休憩すればいい。長い人生、焦らずにマイペースで「自分のやりたいこと」を突き詰めていけばいいんじゃないでしょうか。
元サッカー日本女子代表
澤 穂希さん(さわ・ほまれ)
1978年生まれ、東京都出身。兄の影響で5歳からサッカーを始め、12歳で読売(現・日テレ)ベレーザに入団し、15歳でサッカー日本女子代表入りを果たす。2011年、FIFA女子ワールドカップ・ドイツ大会ではチームの司令塔として「なでしこジャパン」を初優勝に導き、大会MVP・得点王に。同年度のFIFA年間最優秀選手賞も受賞する。2015年に現役を引退し、現在は一児の母として子育てに取り組みながら、スポーツ普及のためさまざまな活動を行っている。
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