FP・専門家に聞く
2026.06.18
【不動産調査】「物件」にまつわるトラブルを未然に防ぐ! 不動産調査の全体像と役所調査の概要:前編(置鮎謙治氏)
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公開:2026.06.18
顧客からマイホーム購入や不動産の有効活用について相談を受けた際、対象となる物件が抱えるリスクや制限を適切に把握することは、将来のトラブルを未然に防ぐために欠かせません。不動産調査をテーマとした本連載の第1回目は、不動産調査の全体像やFPが担うべき役割、そして調査の中でも重要なウエイトを占める役所調査の基本について解説します。
私たちが不動産を購入したり借りたりするのは、その物理的な空間に居住して快適な生活を送ることや、店舗を構えて収益を上げるためです。しかし、その目的が達成できるかどうかは、対象となる不動産を取り巻く周辺環境や、その土地にどのような建物が建てられるかという地域ごとの規制によって大きく左右されます。
例えば、閑静な住宅街で穏やかに暮らしたいと考えていても、近くに大きな商業施設や工場が建てられる地域であれば、理想の生活は実現しにくくなります。また、将来的に住宅を建て替えようとした際に、現在の法律の制限に引っかかってしまい、いまと同じ規模の建物が建てられない、場合によっては建物そのものが建てられない、といったことも起こり得ます。こうした予期せぬ事態や不動産の活用制限を事前に把握するために、不動産調査は非常に重要な意味を持ちます。
加えて、不動産を安全に取引するためには、権利関係の確認が不可欠です。購入や賃貸の契約を結ぶ前に、対象物件の所有者が誰なのか、抵当権などの担保が設定されていないかなどを法務局で登記事項証明書や公図を取得して確認することで、後々の深刻なトラブルを未然に防ぐことができます。
このように、不動産調査は大きく分けて「役所での建築規制の調査」「法務局での権利関係の調査」、そして「現地での確認」という三本柱で構成されます。FPが顧客から不動産に関する相談を受けた際には、これらすべての調査をFP自身が代行する必要はありません。しかし、相談者がどのような目的で不動産を取得しようとしているのか、何を一番気にしているのかを丁寧にヒアリングし、その目的に応じて「ここは事前にしっかり調べておいたほうが安心ですよ」と調査の必要性を説明し、本人に促していくことが、FPに求められる役割といえます。
不動産調査の中でも、建物の建築に関する制限を調べるために欠かせないのが、市役所や区役所、町村役場などで行う役所調査です。
役所調査の最大の目的は、その土地に「どのような建物が建てられるのか」「どのような制限が課せられているのか」を確認することにあります。例えば、用途地域の指定によっては、建てられる建物の種類や規模が厳しく制限されます。住宅や公共施設などしか建てられない地域もあれば、店舗や工場が混在できる地域もあります。
また、建物の規模を決める建ぺい率や容積率も重要な確認事項です。これらは対象となる土地の面積だけでなく、敷地が接している前面道路の幅員(幅)によっても、最終的に建てられる建物の広さの上限が変動することがあります。そのため、役所に備え付けられている道路台帳などを確認し、接道状況を正確に把握することが建築計画において大きな意味を持ちます。さらに、防火地域や準防火地域の指定(防火規制)があれば、木造や鉄筋コンクリート造といった建物の構造にも制約が生じ、建築コストに跳ね返ることもあります。
こうした都市計画に関する各種の制限について、FPが建築士のように詳細な数値まで完璧に把握する必要はありません。しかし、「用途地域や前面道路の状況によって、建てられる建物の広さや用途が影響を受ける」「防火地域の指定によって構造が制限される」といった、規制が持つ意味合いを理解しておくことは大切です。そうした知識があれば、マイホームの新築や建て替えを検討している顧客に対して、「この土地は少し規制が厳しい地域なので、希望どおりの間取りが実現できるか、事前にハウスメーカーや役所にしっかり確認したほうがいいですよ」といった的確なアドバイスが可能になります。
役所調査を実際に行う際の注意点として挙げたいのは、役所内の担当部署が複数に分かれている点です。用途地域を確認する都市計画の窓口、道路の幅員を確認する道路管理の窓口、建築基準法上の制限を確認する建築指導の窓口などが、それぞれ別のフロアや、場合によっては本庁舎から離れた別館に配置されていることもあります。効率よく調査を進めるためには、あらかじめ総合案内の窓口などで、確認したい事項と該当する部署をまとめて聞いてから回るのがコツです。役所調査で確認すべき主な項目と、それが建物にどのような影響を与えるのかを整理しましたので参考にしてください(図表)。
| 確認項目 | 主な 所管窓口 | 建物への影響・FPが押さえておくべきポイント |
|---|---|---|
| 用途地域 | 都市計画課 | 建てられる建物の用途(住宅、店舗、工場など)が制限される。周辺環境にも影響する。 |
| 建ぺい率・容積率 | 都市計画課 | 敷地に対して「どれだけの広さの建物が建てられるか」の上限が決まる。前面道路の幅員によっても変動する。 |
| 市区町村道の幅員 | 道路管理課 | 幅員が4m未満の場合、敷地を後退(セットバック)させる必要がある。 |
| 建築基準法上の道路の種別 | 建築指導課 | 建築基準法上の道路に接していないと建物を建てられない。 |
| 防火規制(防火・準防火地域) | 都市計画課 | 火災を防ぐため、建物の構造(木造、鉄筋コンクリート造など)や外壁・窓の材質に厳しい制限がかかり、建築コストに影響する。 |
| 景観条例・地区計画 | 都市計画課 まちづくり課等 | 自治体独自のルール。建物の高さ、外壁の色、デザイン、緑化の義務など、街並みを守るための特別な制限がかかる場合がある。 |
近年では、多くの自治体が都市計画情報の地図をインターネット上で公開しており、パソコンやスマートフォンから手軽に調べることができるようになりました。相談の初期段階において、「この地域は大体どのような規制があるのか」と当たりをつける目的であれば、ネットの情報を活用するだけでも十分に役立ちます。
しかし、実際に建物を建築する計画が具体化している場合や、ネットの公開情報だけでは判断に迷うような場合は、やはり現地に足を運び、役所の窓口で直接確認することが確実です。自治体によってネットで公開している情報の充実度には大きな差がありますし、細かい地区計画や条例による制限などは、画面上の地図だけでは読み取れないことがあります。
また、窓口で担当職員と対話することによるメリットも見逃せません。例えば、「この場所の用途地域を教えてください」と尋ねた際、単に用途地域を教えてくれるだけでなく、「ここは特別な景観形成の条例が適用されるエリアなので、建物の高さや外観のデザインにもこのような制限がかかります」と、こちらが質問していなかった追加の関連情報を丁寧に教えてくれるケースがよくあります。こうしたプラスアルファの情報は、ネット検索だけでは得られない貴重な収穫となります。最近では役所の窓口に専用端末が置かれ、自分で検索するスタイルの自治体も増えていますが、疑問点があれば遠慮なく職員に声をかけて確認することが大切です。
顧客から不動産の相談を受けた際、FPに求められる最も重要な姿勢は、まず相談者が一番知りたいことは何かをじっくりと聞き出すことです。間取りにこだわりたいのか、将来の資産価値を重視しているのか、あるいは取引の安全性を心配しているのか。そのニーズを正確に把握したうえで、それを解決するために必要な調査内容を結びつけることが第一歩です。
もちろん、FP自身がすべての調査を抱え込む必要はありません。専門的な権利関係の調査や複雑な建築規制の確認については、不動産業者(宅建業者)や司法書士、建築士といった各分野の専門家につなぐことが重要です。FPが普段からこうした専門家と連携できるネットワークを構築し、「わからないことがあれば信頼できる専門家に質問・相談できる体制」を整えておくことこそが、実務において不動産調査を顧客の利益に結びつける最大のカギとなるでしょう。次回(第2回)は、役所調査の後編として、建物の建築可否に直結する、道路(接道)の確認や、生活に欠かせないライフラインの調査など、より具体的な実務のチェックポイントを深掘りして解説します。
| 第1回 | 「物件」にまつわるトラブルを未然に防ぐ! 不動産調査の全体像と役所調査の概要:前編 |
|---|---|
| 第2回 | 公開をお楽しみに! |
| 第3回 | 公開をお楽しみに! |
| 第4回 | 公開をお楽しみに! |
| 第5回 | 公開をお楽しみに! |
| 第6回 | 公開をお楽しみに! |
CFP®認定者、不動産鑑定士、住宅ローンアドバイザー、おきあい事務所代表。
置鮎 謙治 氏
福岡県福岡市出身。早稲田大学商学部を卒業後、政府系金融機関において住宅ローン業務全般に携わる。その後、大手監査法人勤務を経て、不動産鑑定事務所にて不動産の鑑定・デューデリジェンス等、評価業務全般に従事。2008年におきあい事務所を設立し、不動産鑑定やコンサルティングを中心に活躍。実務経験に基づいたわかりやすい解説で、研修や執筆活動も精力的に行っている。
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