公開:2026.05.21

【住宅購入】変動金利を選ぶ人が押さえておくべきポイント(橋本秋人氏)

チャット風吹き出し最終決定版(中央寄せ修正版)

ベテランFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。

橋本秋人氏

これまで長く続いた超低金利時代が終わり、いよいよ金利上昇期へと移行してきました。しかし、住宅ローンにおいては依然として変動金利を選択する人が多いのが実情です。「住宅購入」の第6回目は、金利上昇傾向にある現在でも変動金利が選ばれる理由と、選択する際に必ず押さえておくべきポイント、そしてFPとして提供すべきアドバイスについて解説します。

金利上昇期でも変動金利が選ばれる理由

金利が上昇傾向にある中で、なぜ多くの人が固定金利ではなく変動金利を選び続けるのでしょうか。理由をシンプルに言えば、やはり金利差にあります。

現在(2026年5月1日時点)、住宅金融支援機構のフラット35の金利は2.71%程度(ポイント制による当初引き下げ期間を除く)まで上がっており、大手金融機関の全期間固定金利も3%を超えるものも出てきました。これに対し、変動金利は以前より上がったとはいえ、依然として1%前後あるいはそれ以下で借りられるケースが多く見られます。つまり、固定金利と変動金利の間には1%から2%以上の金利差があり、これが選択の最大の要因となっています。

この傾向はデータにも表れています。住宅金融支援機構の「2026年1月 住宅ローン利用者調査」によると、変動金利を選択した人は75%に上ります。さらに、固定金利期間選択型(実質的には変動金利の派生型)を選んだ人の14.9%を合わせると、約9割(89.9%)の人が変動金利型の住宅ローンを利用していることになります。前回の調査から固定型を選んだ人がわずかに増えたものの、依然として圧倒的多数が変動金利を選んでいるのが現状です。

変動金利を選択する際に押さえておくべきポイント

圧倒的多数の人が選ぶ変動金利ですが、金利上昇というリスクを伴う以上、安易な選択は禁物です。変動金利を選ぶ際に押さえておくべきポイントは主に3つあります。

まず1つ目は、金利が上がったときでも対応できる能力(余力)があるかどうかです。現在の返済比率を確認することは当然ですが、金利が1%、2%と上がった場合に毎月の返済額がいくらになるのか、そのときに家計が耐えられるのかを、将来の収入動向も押さえながらあらかじめシミュレーションしておくことが重要です。

2つ目は、金利上昇時に「繰り上げ返済」が可能かどうかという点です。一部繰り上げ返済を行うことでその後の返済額を減らすことができますが、ここで注意したいのは、手元の資金をすべて繰り上げ返済に充ててしまうと、本来必要だった教育資金や緊急資金が不足してしまうことです。ライフプラン・ライフステージと資産のバランスを見ながらコントロールしていく視点が必要です。

3つ目は、変動金利型のルールを正しく知っておくことです。変動金利型住宅ローンの多くは、「5年ルール」と「125%ルール」を採用しています。金利が変動しても5年間は返済額が変わらず、見直し後の返済額はこれまでの1.25倍を上限とする仕組みです。これらは一見安心に見えますが、金利が上がった分の支払いが免除されるわけではなく、返済に占める利息の割合が増え、元金が減りにくくなるだけです。結果的に返済期間が延びたり、最後に一括完済を求められたりするリスクがあることを理解し、備えておく必要があります。

長期にわたる返済期間に向け、FPが提供すべきこと

変動金利の利用者の中には、「将来金利がさらに上がりそうになったら、そのときに固定金利へ借り換えればいい」と安易に考えている人もいます。しかし、通常、固定金利は変動金利よりも先に変動します。そのため、変動金利が上がってきたと気づいたときには、すでに固定金利はそれ以上に跳ね上がっているケースがほとんどです。借り換えのタイミングを逸してしまうだけでなく、借り換え自体に数十万円単位の諸費用がかかります。最初から自己資金(頭金)を多めに入れて借入額を抑えておくなど、入口の段階から事態を見越した戦略を立てておくことが重要です。

今後の金利動向については、昨今の地政学リスクなども絡み非常に不透明です。FPへの相談現場でも「将来の金利はどうなりますか?」と聞かれることが多いですが、誰にも正確な予測はできません。そのときにFPが果たすべき重要な役割は「リスクと解決策の見える化」だと考えています。相談者の「金利が上がったら怖い」という漠然とした不安に対し、「〇%上がったら返済額はこれだけ増えます」「この時期にいくら内入れ(繰り上げ返済)をするとこれくらいの負担軽減効果があります」などの具体的な数字を示すことで、相談者の不安が軽減され、判断材料としても役立ちます。

住宅ローンの返済中の負担軽減策としてもっとも効果が高いのは、やはり繰り上げ返済です。住宅金融支援機構の調査によると、借入者の平均借入期間は約27年であるのに対し、平均完済期間は約16年と、実際には平均で約11年も前倒しで完済しています。こうした実態を踏まえると、相談者に対しても、「10年前倒しで完済する」という視点を提案することは有効です。早期完済後は返済負担がなくなるだけでなく、その後の金利変動の心配もしなくて済みます。その具体的なプランまで提示することで、相談者の不安を和らげることにもつながります。

さらに、よくおすすめしているのは、「返済計画は固定金利で計算する」という方法です。実際の借り入れは1%前後の変動金利を選択するとしても、家計のシミュレーションはフラット35などの固定金利(例:2.49%)などを用いて計算します。そのうえで、変動金利での実際の返済額との差額を毎月貯蓄したり、新NISAなどで運用に回したりします。こうすることで、将来の金利上昇に対する備えをつくりながら、精神的な安心感を得ることができます。

最終的にどの金利タイプを選ぶか決めるのは相談者自身です。FPには、相談者が冷静に判断できる客観的な材料を提供し、不確定な将来のシナリオに対応できる家計づくりをサポートすることが求められています。

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お話を伺った方

CFP®認定者、1級FP技能士、公認不動産コンサルティングマスター、FPオフィス ノーサイド 代表

橋本 秋人 氏

早稲田大学卒業後、大手住宅メーカーに30年以上勤務。在職中は、顧客の相続対策や資産運用としての賃貸住宅建築など、不動産活用の実務に長く携わる。独立後は、不動産活用、相続・終活、住宅取得などを中心に、講演や執筆、コンサルティングを通じて、実務経験に基づいた実践的なアドバイスを提供している。

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