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2026.01.27
【家計管理】「家計簿」は必ずしもつけなくていい!?(風呂内亜矢氏)
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公開:2026.01.22
「住宅購入」の第2回目は、2025年4月に全面施行された改正建築基準法・改正建築物省エネ法について、その背景と実務への影響、これからの住宅選びについて解説します。
私たちの住まいには、その質を担保するための法律がいくつか存在しますが、中でも注目したいのが「建築基準法」と「建築物省エネ法」という2つの法律の改正です。2025年4月に施行された改正の内容を理解する前に、まずはこの2つの法律の基本的な役割を整理しておきましょう。
「建築基準法」は、戦後の昭和25年に制定されました。一言でいえば「安心と安全を確保するための法律」です。建物が地震で倒壊しないか、火災時に燃え広がらないか、あるいは換気や採光が不十分で健康を害するおそれはないか。国民の生命、健康、そして財産を守るために、建物が満たすべき最低限のルール(基準)を定めています。
対して、「建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)」は、2015年に制定された比較的新しい法律です。こちらは「環境負荷の低減と省エネを推進するための法律」といえます。かつての「省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)」では住宅は規制の対象外でしたが、地球温暖化対策が急務となる中、住宅分野でも省エネ性能の高い建物の普及が求められ、建築基準法と関連付けられながら法律として整備されました。
今回の法改正の根底にあるのは、2050年の「カーボンニュートラル」実現という国の目標です。実は、この改正法自体は2022年に成立しており、そこから段階的に施行が進められてきました。
具体的には、2022年には住宅ローン「フラット35」での省エネ基準要件化や金利優遇が始まり、2023年には省エネ改修に伴う高さ制限等の特例許可、2024年には不動産広告における「省エネ性能表示制度(ラベル表示)」がスタートしました。そして2025年4月、「省エネ基準への適合義務化」と「4号特例の縮小」が施行されたのです(図表1)。つまり、今回の改正は、脱炭素社会の実現に向けたロードマップの集大成と位置付けることができます。
| 施行日 | 内容 |
|---|---|
| 2023年4月1日 | ・住宅トップランナー制度の拡充 ・省エネ改修や再エネ設備の導入に支障となる高さ制限等の合理化 等 |
| 2024年4月1日 | ・建築物の販売・賃貸時における省エネ性能表示 ・再エネ利用促進区域制度 ・防火規制の合理化 等 |
| 2025年4月1日 | ・原則全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合の義務化 ・構造規制の合理化 ・建築確認審査の対象となる建築物の規模の見直し ・4号特例の縮小 |
出所:国土交通省「改正建築基準法について」を基に橋本秋人氏作成
今回の改正における最大のポイントは2つあります。
1つ目は「全ての新築住宅・非住宅に対する省エネ基準への適合義務化」です。これまで小規模な住宅では努力義務にとどまっていましたが、今後は断熱性能や一次エネルギー消費量について一定の省エネ基準を満たさない建物は建てることができなくなりました。
これにより、日本の住宅は「夏は涼しく、冬は暖かい」高断熱・高気密な仕様が標準化されます。購入者にとっては、住環境の快適性が向上するうえに、光熱費(ランニングコスト)が安くなるという明確なメリットがあります。一方で、高性能な断熱材やサッシ、省エネ機器の導入が必要となるため、昨今の資材価格高騰とも相まって、建築費(イニシャルコスト)はどうしても上昇する傾向になります。
2つ目は、建築基準法における「4号特例の縮小」です(図表2)。これは建築業界にとって非常に大きなインパクトがありました。これまで、一般的な広さの2階建て以下の木造住宅などは「4号建築物」とされ、建築確認申請において構造関係規定などの審査を省略できる特例(いわゆる4号特例)が認められていました。しかし、大地震への備えや省エネ義務化による住宅の重量増加への対応の必要性などから「審査を省略してよいのか」という議論がなされ、今回の改正でこの特例が大幅に縮小されました。
法改正後は、木造2階建て住宅や延べ面積200平方メートルを超える平屋建て住宅などは従来の「4号建築物」ではなく「新2号建築物」に区分され、構造審査が必須となりました(図表2)。これにより、「これまで審査が不要だった木造2階建て住宅のほとんどが構造審査の対象になった」ということです。審査の手間や期間、コストは増えますが、第三者の厳しい目で構造安全性がチェックされることになり、住宅の信頼性は格段に向上します。
出所:国土交通省「改正建築基準法について」
なお、2025年3月以前に建築確認を受けた住宅は、構造審査の対象外です。そのため、今後は「構造審査を受けた住宅」と「構造審査を受けていない住宅」が市場に混在することになり、安心感を中古住宅購入の判断材料にする消費者が増えるかもしれません。
しかし、構造審査の対象外の建物であっても、安全性が高いと判断できる建物もあります。その安全性を判断する目安となるのが2000年から運用されている「住宅性能評価制度」です。これは第三者機関が住宅の性能を「通信簿」のように評価するもので、耐震性、耐火性能、耐久性、省エネなどが審査対象項目として記載されています。
中古住宅を選ぶ際は、この「性能評価を受けている住宅か」や、「長期優良住宅の認定を受けている住宅か」などを確認することで、一定の安心材料とすることができるでしょう。
今回の法改正は、日本の住宅市場が「質より量」から「質の高い住宅ストックの重視」へと本格的に舵を切ったことを意味します。これからの住まい選びでは、「耐震性」と「省エネ性」はもはや付加価値ではなく必須の条件となります。
FPとして顧客にアドバイスする際、避けて通れないのが住宅価格上昇への対応です。建物価格だけを見れば負担増ですが、国や自治体は省エネ住宅へのシフトを後押しするため、さまざまな補助金や税制優遇制度を整備しています。例えば、「子育てエコホーム支援事業」のような補助金を使えば、コスト上昇分の一部をカバーできる可能性があります。さらに、月々の光熱費削減効果をシミュレーションに組み込むことで、「イニシャルコストは高いが、トータルの住居費ライフサイクルコスト(建築費+ランニングコストの総費用)で見れば納得できる」という判断が可能になります。
また、今回の改正法の目的には、環境配慮の観点から「木材利用の促進」という政策意図も含まれています。鉄やコンクリートに比べて製造時のCO2排出が少ない木材、特に国産材の活用は、住宅分野における脱炭素の推進による地球環境への貢献にもつながります。
欧米では、新築住宅よりも中古住宅の流通が圧倒的に多く、良質な住宅が適正に評価され、長く住み継がれています。日本もようやく、質の高い住宅が資産として評価される土壌が整ってきました。「価格」だけでなく「性能」と「将来の資産価値」を見据え、補助金制度などを賢く活用した資金計画を提案することもFPに求められる役割だといえるでしょう。
| 第1回 | 「問題不動産」にしない・させないために |
|---|---|
| 第2回 | 改正建築基準法・建築物省エネ法で家づくりの基準が変わる |
| 第3回 | 公開をお楽しみに! |
| 第4回 | 公開をお楽しみに! |
| 第5回 | 公開をお楽しみに! |
| 第6回 | 公開をお楽しみに! |
CFP®認定者、1級FP技能士、公認不動産コンサルティングマスター、FPオフィス ノーサイド 代表
橋本 秋人 氏
早稲田大学卒業後、大手住宅メーカーに30年以上勤務。在職中は、顧客の相続対策や資産運用としての賃貸住宅建築など、不動産活用の実務に長く携わる。独立後は、不動産活用、相続・終活、住宅取得などを中心に、講演や執筆、コンサルティングを通じて、実務経験に基づいた実践的なアドバイスを提供している。
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