FPトレンドウォッチ
2025.10.17
東京の住宅価格の推移と今後【トレンド+plus】

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公開:2025.10.17
東京23区の新築・中古マンション価格は平均で1億円を超えているといわれます。信じられないような高騰ぶりに対して、「もしかして物件の中に、5億とか10億という超高額物件があって、平均値が押し上げられているだけで、分布全体では、必ずしも価格高騰になっていないのでは?」という予測を立てたくなります。
しかし、マンション価格の中央値を調べると、中央値と平均値の価格差は、おおむね約2,000万円程度を保って推移しており、分布全体が高騰していると言えます。
全体的に高騰している東京都内のマンション価格ですが、それを牽引しているのは、都心4区です。
港区、千代田区、中央区、渋谷区は、2025年の新築マンションの平均価格が2億~3億円と都内の他地域よりも数段高くなっています。この地域が平均値をより高く押し上げ、さらに価格高騰を他の地域に波及させていると考えられます。
東京の地価上昇傾向は、コロナ禍の2020年が少し過ぎた頃から始まりました。コロナ当初は一時的に地価が下がりましたが、ゼロゼロ融資など金融緩和策が打ち出されて、2021年頃から資産価格が上昇に転じています。
この変化は、世界的なインフレとも軌を一にしています。資源インフレ、素材インフレがこの時期に海外から上陸してきています。経済危機に対応して、各国が強力な経済支援を講じたためでしょう。緩和効果は、外国人の不動産購入というかたちで、日本へも流れ込んできたのです。
中国、欧米の投資ファンドや個人が東京都心の値上がりしそうな物件を率先して購入するようになりました。報道でもよく耳にするのは、中国人のタワーマンション購入です。
上階部分を購入して、中国人同士で転売するために、誰も住んでいない部屋がぐんぐんと価格上昇するというケースも見られたようです。
外国人の不動産購入の加速は、日本の円安が2022~2024年に加速したことも一因です。
例えば、日本円と米ドルの購買力は、米国の物価上昇と円安の相乗効果で、コロナ直前の2020年初よりも1.61倍(2025年9月時点)も開いています。米国人の1万ドルの価値は、2020年初に1万ドルだったものが、2025年9月には1.61万ドルに膨らんでいます。
逆に言えば、日本の100万円の価値は、62万円(=1÷1.61=0.62)に割安化したということです。外国人にとって、日本の都心の不動産は極端に安いという感覚になったのでしょう。
中国で不動産バブルが弾けて、最近では国内不動産を手放す投資家が多い一方、日本の不動産ではそうした変化があまりみられません。これは単にタイムラグなのか、他に要因があるのかは今後の動向を見ていく必要があります。
また、日本の人口減少は地価下落要因になります。その影響は東京の地価に及ばないのでしょうか。
総務省の調査によると、2022年は東京の人口が減りましたが、2023~2025年の3年間は他地域からの人口流入等で増加に転じています。利便性の高い都心の4区などは、そうした人口流入によって不動産価格が押し上げられているのでしょう。
しかし、都心以外の部分では、人口減少により地価下落圧力が働き、将来的には地価が下がっていくことが考えられます。都心以外には絶えざる下落圧力になる人口減少の影響が一極集中の状況にある東京の地価にもいずれ影響を及ぼすのかも、今後のポイントになりそうです。
なお、都心であっても、少し古くなったマンションや戸建て住宅を中心に、空き家が相当に増えています。総務省が2023年に実施した調査によると都内の空き家率は約10%、実数では90万戸の空き家があるそうです。
新築マンションの価格が高騰している都心4区でも、空き家率は10~13%になっています。仮に、空き家の持ち主がすぐに物件を売って、流通市場に供給されれば、需要と供給の関係から不動産価格は下がると考えられます。人口減少で空き家が増えても地価が下がらない理由は、空き家のままで放置されている物件が数多くあるということも一因なのかもしれません。
記事の内容は、取材先や執筆者等の見解を示したものであり、日本FP協会の意見・方針等を示すものではありません。
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