公開:2026.09.15

【金融経済教育】30〜40代受講者の多種多様なお金の悩みに答えるセミナーの工夫と話し方のコツ(安藤宏和氏)

チャット風吹き出し最終決定版(中央寄せ修正版)

ベテランFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。

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安藤宏和氏

「金融経済教育」第4回は、企業の従業員に向けたマネーセミナーについて、30〜40代の受講者に向けたポイントと注意点を解説します。

ライフスタイルが多様化しても共通するニーズは「資産形成」

結婚・出産やキャリアの節目などを経て、暮らしやお金の使い方が多様化する30〜40代は、ライフスタイルによって「お金に対する悩み」もさまざまです。

子育て世帯のお悩み第1位は、圧倒的に「教育費」。住宅ローンなどの負担も重なり、日々の生活費と将来資金のバランスに苦労しているファミリーが多いようです。また、シングルの相談者からは将来の生活費や老後の備えへの不安、世帯収入が高い傾向にあるDINKSのご夫婦からは、生活水準が上がりやすく、お互いの財布の管理や将来に向けた資産形成が心配……といったご相談をよく受けます。

こうした多様なお悩みが生まれる世代だけに、セミナーの際はテーマ設定が難しく感じられるかもしれませんが、どんなライフスタイルの方にも共通するニーズが「資産形成」です。
シングル・DINKSなら老後、お子さんがいる家庭なら子どもの大学進学時に資金が必要になるなど、目的や必要時期に違いがあるだけで、基本的な資産形成の考え方は同じだからです。

企業型確定拠出年金(企業型DC)の設計は企業によって異なるので、基本的な仕組みをはじめ、その会社が設定している掛け金や金額、運用商品のラインアップ、iDeCoやNISAとの使い分けなどについてお伝えしています。長期・分散・積み立て投資の基本を学べるよう、「企業型DC・iDeCo・NISA」をセットにして解説する資産形成セミナーを開催することが多くなっています。

セミナー形式の“ひと工夫”が満足度アップにつながる

最近では、人事部担当者がFP資格を保有していることもあり、企業の依頼によっては、オーソドックスなものとひと味違った金融セミナーを開催することも増えてきています。

一般的に、企業セミナーでは大多数に合わせたビギナー向けのテーマになることが多いのですが、以前「投資に興味があるリテラシーの高い社員に向けて、中・上級者レベルの資産運用セミナーにしてほしい」と依頼されたことがありました。そうしたケースでは、担当者と内容を細かく打ち合わせしながら、昨今の経済情勢や不動産投資、リクエストによっては、仮想通貨について取り上げることもあります。

また、とある企業から依頼された金融セミナーでは、いつもと違ったユニークなスタイルをこちらから先方に提案したことがありました。事前に従業員から「FPに聞きたいこと」を募り、セミナー当日は従業員のお悩みや疑問に対して、私が時間の限り次々に答えていく「100問100答(100本ノック)」形式のセミナーです。

30〜40代の受講者からは「持ち家か、賃貸か」「教育費の積み立てには何がいいか」「投資と貯蓄のバランスは」「保険はどのように加入すればいいか」「会社の持株会には入ったほうがいいのか」「子どもの金融教育はどうするべきか」……など、まさに多種多様な質問が寄せられました。

こうしたインタラクティブなセミナーは、受講者の皆さんも能動的に参加できるので、終了後のアンケートも非常に満足度が高かったことを覚えています。座学だけではないセミナーの形態という“ひと工夫”も、講師の腕の見せどころかもしれません。

セミナーで心がけたい受講者を惹きつける話し方

また、これは全世代のセミナーに共通することですが、受講者の関心を惹きつけ、満足度を上げる大きな要素に「話し方」があります。第3回でお伝えしたように、「難しい用語は平易な言葉に言い換えて話す」といった基本に加えて、私が心がけているのは「語尾をぼかさないよう、明確に“言い切る”」ということです。

例えば、「○○ということもありますが、実際は○○のようなケースが多いように思います」といった話し方では、自信がなさそうに聞こえませんか? 私はケースバイケースのことを伝えるときも「○○の場合には、△△することをお勧めします」と、はっきり言い切るようにしています。

話し方のNG例と改善のポイント

NG「ケース・バイ・ケースですね……」
→「ケースバイケースですが、○○の場合は△△することをお勧めします」

NG「○○のような傾向にあるようです」
→「データによると、○○という結果です」

NG「NISAは利用したほうがいいと思います」
→「ぜひ、NISAを活用しましょう」

ほかにも、「あ〜」「え〜と」といったフィラー(つなぎの言葉)を入れない、だらだらと長く話さず、なるべく「短文(句点から句点までの1文を短くする)」で話すといったことも、聞き取りやすくする重要なポイントです。

受講者がFPに求めているのは、お金のプロフェッショナルとしての信頼感。あいまいな表現はなるべく省いてシンプルに、かつ聞き取りやすい工夫を加えて伝えることで、メッセージがより明確になり、説得力も増します。セミナー講師を目指すFPは、「聴衆の心をつかむ話し方」も、ぜひブラッシュアップしていきましょう。

次回の【金融経済教育】分野は、年代別・生活者向けセミナーのポイント③<退職者編>について解説します。
アコーディオン目次

お話を伺った方

CFP®認定者、株式会社あしたば代表取締役社長

安藤 宏和 氏

三井住友海上での勤務を経て、FPオフィス「あしたば」を開業。幅広い業種・規模の企業で「従業員向け金融教育研修」の講師を務め、中学・高校等の教育機関でも「学生・生徒向け金融教育講座」を受け持つなど、生活者が金融リテラシーを高め「ファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)」を実現するための金融経済教育に力を入れている。

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