公開:2026.09.17

【不動産調査】ここに注意!登記事項証明書取得の実務と「登記義務化」への対応(置鮎謙治氏)

チャット風吹き出し最終決定版(中央寄せ修正版)

ベテランFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。

置鮎謙治氏

顧客が不動産を安全に購入・賃借するためには、現地調査や役所調査に加えて、法務局での調査が欠かせません。連載第4回目となる今回は、前回解説した登記事項証明書や各種図面の効率的な取得方法と実務上の注意点、そして2024年4月にスタートした「相続登記の義務化」をはじめとする最新の法改正動向について解説します。

オンライン取得の普及と「かんたん登記・供託申請」の活用ポイント

法務局で登記事項証明書や各種図面を取得する方法としては、大きく分けて「法務局の窓口での請求」「郵送での請求」「オンラインでの請求」の3つがあります。近年は利便性の高さからオンラインでの取得が急速に普及しており、私自身も実務ではほぼオンラインを利用しています。オンライン請求であれば、交通費や移動時間も節約できます。郵送請求は法務局に行く手間は省けますが、書類が手元に届くまで日数がかかってしまいます。

オンライン請求を行うには、法務局ホームページの“登記・供託オンライン申請システム”にある『かんたん登記・供託申請』を利用します。利用にあたっては、事前に申請者情報の登録(申請者氏名、住所、申請者IDとパスワードの設定など)が必要です。なお、1年間利用がないと登録情報は自動削除されるため注意が必要です。

実際の請求手順としては、申請者情報を入力する画面で、必要な証明書や図面の種類、受け取り方法(窓口か郵送か)、発行してもらう法務局を選択します。その後、手数料を納付すれば完了です。スピードを重視する場合は、オンラインで請求し、最寄りの法務局窓口で受け取る方法が最もスムーズです。窓口で書類受取後に追加で別の書類が必要になった際も、スマホ等でその場からオンライン請求するほうが、紙の申請書を書いて並び直すより手間も費用も抑えられます。

ただし実務上、土地の「地番」と建物の「家屋番号」が一致していないケースには注意が必要です。証明書を取得したい建物の家屋番号がわからない場合、システム内の「土地からの建物検索指定」にて地番から建物を検索できますが、表示された家屋番号が目的の建物と必ずしも一致するとは限りません。過去の分筆などの影響で複雑になっているケースもあるためです。

もし家屋番号の特定が困難な場合は、土地の登記事項証明書を先に取得して所有者を確認したうえで、直接法務局の窓口へ出向き、「この土地の付近で、同じ所有者名義の建物の登記事項証明書はありませんか」と相談するのも1つの有効な手段です。必ず特定できるわけではありませんが、窓口の担当者が調べて教えてくれることもあります。

なお、公的な証明文は不要で、単に登記の状態だけを確認したいという場合には、一般財団法人民事法務協会が運営する「登記情報提供サービス」の利用をおすすめします。登記事項証明書と同等の情報を安価に取得できるため、目的に応じて使い分けるとよいでしょう。

図表1 不動産登記関連書類の取得方法と実務上の特徴

取得方法請求手段交付(受取)方法手数料スピード・実務上のメリット・留意点
オンライン請求
(かんたん登記・供託申請)
インターネット窓口受取割安移動の手間・コストを削減。窓口受取なら受け取り後に追加請求が必要になっても、スマホ等でその場で安く追加請求可能。
オンライン請求
(かんたん登記・供託申請)
インターネット郵送受取割安法務局へ行く手間は省けるが、郵送のタイムラグが発生する。
窓口請求法務局窓口窓口受取標準オンライン未登録でも即時発行可能だが、窓口への移動時間・交通費がかかる。
郵送請求郵送郵送受取標準申請・受け取りともに郵送のため、最も時間がかかる。
登記情報提供サービス
(参考情報)
インターネット画面閲覧・印刷最安証明文が不要な場合に活用。公的な証明力はないが、内容(権利関係等)を確認するだけなら最も安く即時に取得可能。
置鮎氏監修のもとに日本FP協会作成

2024年4月スタート「相続登記の義務化」で、顧客へのアドバイス

次に、不動産登記に関する重要な法改正動向を確認しておきましょう。社会問題化している「所有者不明土地」の発生を防ぐため、2024年4月1日から「相続登記」が義務化されました。

この制度では、相続や遺贈によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請を行わなければならないと定められています。複数の相続人による遺産分割協議を経て不動産を取得した場合も、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記が必要です。正当な理由なく登記を怠った場合は、10万円以下の過料の適用対象となります。

FPが実務上、特に注意すべき点は、2024年4月1日の施行日より前に相続した不動産であっても義務化の対象となることです。過去の相続で未登記のまま放置されている不動産については、法律の施行日から3年間の猶予期間が設けられており、2027年3月31日までに登記を申請しなければなりません。

とはいえ、相続人が多数にのぼるケースや、遺産分割協議が難航しているケースなど、期限内に必要書類を収集して登記を完了させることが難しい場合もあるでしょう。そのような事態に備えて「相続人申告登記制度」も新設されました。これは、自分が相続人の1人であることを法務局に申し出ることで、ひとまず相続登記の義務を果たしたとみなされる制度です。特定の相続人が単独で手続きできるため、期限が迫っている場合には有効な選択肢となります。

顧客の中には、過去の相続手続きを終えていない未登記の不動産を所有している方がいらっしゃるかもしれません。そうした相談を受けた際は、まず登記の義務化と過料の罰則があることをしっかりと伝え、速やかに登記を行うようアドバイスすることが重要です。

相続登記の手続きを放置すればするほど、代替わりによって相続人の数が増え、手続きは雪だるま式に複雑になります。誰が相続人なのかを正確に把握するため、戸籍を出生から死亡まで遡って収集するだけでも膨大な労力がかかります。「自分たちの代で権利関係をきれいにする」という覚悟を持って作業に臨んでいただくよう促してください。

また、長期間放置された相続の場合、疎遠になっている親族や、関わりを持ちたくないと考えている親族が相続人に含まれることもあります。登記を進めるには親族間でのやり取りが不可欠になるため、「これまでの交流が少なくとも、手続きを進めるうえでは良好なコミュニケーションをとるように心がけてください」とアドバイスし、円滑な話し合いができる環境づくりをサポートすることも、FPの大切な役割です。手続きの負担が重いと予想される場合は、司法書士などの専門家へ登記の代理を依頼することを提案しましょう。

2026年「住所等変更登記の義務化」と専門家ネットワークの構築

相続登記の義務化に続き、2026年4月1日からは「住所等変更登記」も義務化されました。不動産の所有者が引っ越しで住所を変えたり、結婚などで氏名が変わったりした場合、その変更日から2年以内に変更登記の申請を行うことが新たに義務づけられました。こちらを怠った場合は、5万円以下の過料の対象となります。

相続登記の義務化と同様に、施行日より前に生じていた住所や氏名の変更も義務化の対象となり、施行日から2年以内(2028年3月31日まで)に変更登記を行わなければなりません。

ただし、この住所等変更登記に関しては、簡単な手続きによって法務局が職権で変更登記を行ってくれるサービス「スマート変更登記」が新しく創設され利用可能となっています。あらかじめ手続きをしておけば、住所等変更のたびに自分で登記申請を行わなくても、法務局側で情報を更新してくれる仕組みが整備されたため、義務違反に問われるリスクは軽減されるでしょう。

図表2 近年の不動産登記義務化とFPの実務対応ポイント

項目相続登記の義務化住所等変更登記の義務化
施行時期2024年4月1日〜2026年4月1日〜
申請期限所有権の取得を知った日から3年以内住所・氏名の変更があった日から2年以内
怠った場合の罰則10万円以下の過料5万円以下の過料
施行日前の放置物件対象となる(2027年3月31日までに
申請が必要)
対象となる(2028年3月31日までに申請が必要)
救済・補助制度相続人申告登記制度
(単独申し出で義務履行とみなす)
スマート変更登記
(法務局による職権で変更するサービス)
FPの顧客アドバイス放置すると代替わりで複雑化するた
め、「自分たちの代で解決する」覚悟を促す。必要に応じ司法書士へ連携。
引っ越しや結婚時の変更登記を周知。過料を防ぐための事前アドバイスを実施。
置鮎氏監修のもとに日本FP協会作成

不動産の権利関係を最新の状態で明確にしておくことは、資産を安全に管理し、円滑に承継していくための基本中の基本です。相続登記や住所等変更登記がなされていないと所有者不明土地問題を深刻化させるだけでなく、将来いざ土地を売却しようとした際や、不動産を活用しようとした際に権利関係の整理に多大な手間と時間がかかり、大きな障壁となってしまいます。

最後に、不動産調査や資産承継の実務においては、専門家との連携が不可欠です。相続登記であれば司法書士、土地の売却にあたって隣地との境界線がはっきりせず測量が必要になるような場合は土地家屋調査士など、直面する課題に応じて適切な専門家の力を借りる必要があります。

いざというときに顧客へ信頼できる専門家を紹介し、またFP自身が実務上のアドバイスをもらえるよう、日頃から不動産登記や資産承継に強みを持つ専門家とのネットワークを構築しておくことが大切です。日本FP協会の支部活動やスタディ・グループの勉強会に参加するほか、各種異業種交流会などにも足を運び、顔の見える関係性を築いておくことが課題解決力を高めることにつながります。

次回の【不動産調査】分野は、「現地調査」について取り上げます。
アコーディオン目次

お話を伺った方

CFP®認定者、不動産鑑定士、住宅ローンアドバイザー、おきあい事務所代表。

置鮎 謙治 氏

福岡県福岡市出身。早稲田大学商学部を卒業後、政府系金融機関において住宅ローン業務全般に携わる。その後、大手監査法人勤務を経て、不動産鑑定事務所にて不動産の鑑定・デューデリジェンス等、評価業務全般に従事。2008年におきあい事務所を設立し、不動産鑑定やコンサルティングを中心に活躍。実務経験に基づいたわかりやすい解説で、研修や執筆活動も精力的に行っている。

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