FP・専門家に聞く
2026.09.25
【事業承継】ガイドライン改訂時にも注目された「従業員承継」とFPの役割(山田&パートナーズ 宇田川氏、金沢氏、西内氏)
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公開:2026.05.07
更新:2026.09.17
「介護・施設」の最終回は、「高齢者施設の見学の仕方とポイント」について解説します。ぜひ、見学に行ってみてください。
ライフプランを考えるうえで、高齢期の住まいについて考えることはとても重要です。FPは相談者の経済状況や身体状況、志向などを考慮し、住まいについて具体的な提案ができることが望ましいでしょう。そのためにも、FPの方には高齢者施設の具体的な探し方、見学の仕方を知っていただきたいと思います。
「見学はできるの?」「どうやって見学するの?」と思われる方も多いかもしれませんが、大丈夫です。
私はこれまで約400回、高齢者施設の見学をしていますが、始めた当時は、FPを名乗って見学をお願いしても、断られることもありました。FPの認知度が高くなかったですし、FPが何のために見学するのか、理解されにくかったのだと思います。しかし現在では、状況は大きく変化。見学を断られることは、ほとんどありません。
「ファイナンシャルプランナーという仕事をしています」「お客様に高齢者施設について相談されることがあります」「ご相談に応じて、施設をご紹介することもあります」。そのようにお話しすることで、多くの施設では見学の目的を理解していただくことができます。高齢者施設に興味があっても、なかなか一歩が踏み出せないFPの方も少なくないようですが、門扉は開かれていると考えていいでしょう。
FPという立場を明かさず、一般人として「家族のために……」と見学するより、「FPとして施設のことを知りたい」と申し出たほうがいいと思います。そうでないと、施設とのつながりができにくく、相談者に紹介したり、問い合わせをしたりする際に不都合が生じます。
施設が開催する見学会を利用する手もありますが、見学会の日は問題行動をする可能性がある入居者を居室に留めたり、日常とは異なる、よそ行きの雰囲気になっていたりする可能性があります。ほかの参加者に遠慮して質問しにくい、最寄り駅から送迎があり、施設までの道の状態や近隣の環境がわかりにくい、などの問題もあります。
では、どの施設に見学に行くのがいいのでしょうか。
有料老人ホームやサ高住などは見学が可能な例が多く、特養でも受け入れてくれる例があります。いろいろな施設を見学するのが望ましいですが、まずは地元の有料老人ホームなど、行きやすいところから始めるといいでしょう。自治体や地域包括支援センターで情報を得るのが便利です。
見学は複数名で行くことをお勧めします。ほかのFPの質問、視点も参考になることが多いからです。施設の負担も考慮し、見学を申し込む際に、何人まで同行していいかを聞いて、調整します。私も以前そうしていましたが、お仲間同士、持ち回りで施設を探したり、手配したりするのもいいと思います。
見学を申し込む際には、食事の試食ができるかもお聞きし、提供いただける場合は、「通常食で」とお願いします(特養では難しい)。無料と言われることがありますが、評価が甘くなりがちなので、支払いを希望し、おつりが出ないように準備します。施設によっては現金でのやりとりが難しいから代金を受け取りたくないなどの事情もあり、その場合は、指示に従います。
また、私はスタッフの方にお時間をいただくことへの感謝として、当日に手土産(菓子折)を持参しています。
見学させていただけるのは、食堂や浴室、娯楽施設などの共用部、空室になっている居室などです(常に満室で、居室内を見学できない施設もあります)。
施設内で入居者の方にお会いすることもあるので、「こんにちは。見学させていただいています」などとご挨拶します。可能であれば入居者の方に、施設のよいところを聞くようにしています。その様子をスタッフの方が見守ってくれるかどうかも重要です。
しっかり情報収集しようとチェックリストを持って行かれる方もいますが、重要事項説明書(重説)などでわかることは事前に調べていきたいところです。多くの施設はホームページに重説を掲載していますし、自治体がホームページで公開している例もあります。
重説では、事業主体、立地や設備、従業員の勤続年数、従業員1人当たりの利用者の数、利用者の入居率、1年以内の退去者数と理由、入居条件、利用料の内訳、入居一時金の償却期間などを確認しておきましょう。不明点があれば当日質問します。
現地で確認したい主なポイントは図表のとおりです。食堂や娯楽室、浴室、居室の広さや造り、設備などはもちろんですが、施設の雰囲気や入居者の方の様子、スタッフの感じの良さ、看取りの実績など、重説に記載されていないこと、現地に行かなければわからないことを感じ取ることが大切です。新しさ、きれいさを気にしがちですが、ほとんどの施設は清潔に保たれており、匂いが気になることもほぼありません。
| 入居者の介護度と認知症の割合は? | 自立度が高い人は同じくらいの人が多いほうが楽しめる可能性。認知症の人が多い場合、自立の人とフロアや棟が分かれているとトラブルが少ない |
|---|---|
| 入居者の介護度と認知症の割合は? | 寝たきりになったら、認知症と診断されたらなど、退去が必要になる場合について具体的に聞いておく |
| 医療措置は? | 静脈栄養、インスリン注射など、可能な医療行為を聞く |
| 看取りは? | 看取り可能としている施設でも、いざというときに緊急搬送しないかや、実際の看取りの数、訪問医の連携について聞く |
| 食事の内容は?飲酒は? | メニューに選択肢はあるか。ミキサー食や、成形食など対応しているか。食堂でも飲酒ができるか、自室ではどうか |
| 入浴の頻度は? | 公的介護保険が適用される入浴は週2回以上と決まっており、週2回が多い。3回以上も可能か(有料か)、自室ではどうか |
| シャトルバスはある? | 銀行や買い物など、シャトルバスがあると便利。有料か無料かも聞く |
見学を重ねていくと、施設による違いや特徴など、ご自身の基準ができてくると思います。それが貴重なストックとなり、相談業務に活用することができます。
私は高齢期の住まいについてアドバイスする際、相談者のお金の状況や介護度などから、どの種類の施設がいいかを検討し、候補となる施設をピックアップして見学をお勧めしています。相談者が希望するエリアの施設でなくても、見学することで施設のイメージや譲れない条件などが明確になり、施設を探す手がかりにしていただくことができます。
施設を決めるには、少なくとも5カ所、できれば10カ所程度の施設を見学するのが望ましいといえます。5カ所程度見ないと比較検討ができませんし、逆にあまり多く見過ぎると、欠点に目が向きがちになり、選びにくくなります。ご高齢の場合は、まずはお子さんやご家族が見学し、いいと思った施設にご本人をお連れするのがいいと思います。
高額な施設への興味から、「入居はできないけれど、目の保養のために見に行く」という方もいますが、実際に自分が入れそうな施設に不満を感じてしまうなど、少し危険です。
紹介事業者がインターネット上で運営している介護施設の検索サイトでは、条件に合わせて検索もできますし、施設の見学の手配をしてくれる例もあります。
便利ですが、紹介事業者を利用する際には、その仕組みを知っておくと安心です。
紹介事業者は施設側から手数料を受けることで事業が成立しています。そのため、中には手数料の水準が紹介される施設に影響していたり、空室の多い施設が紹介業者に高い手数料を払っていたりする可能性も否定できません。また、評判のいい施設は空きも少なく、情報サイトでの入居者募集に頼っていないケースもあります。
高齢者住まい事業者団体連合会の調査によると、施設の運営事業者が紹介事業者に支払っている紹介料の平均額は20万円台が約半数を占め、次いで10万円台が30%、40万円台が13%、全体平均額は21.5万円です(調査期間は令和6年11~12月)。
ちなみに、同じ調査で施設入居に至った経緯を調べたところ、「本人・家族等が探した」が約40%、次いで、「本人・家族等が紹介会社に依頼して探した」が約25%となっています。以下、「ケアマネージャーに依頼して探した」(約23%)、「病院のMSW(筆者注・医療ソーシャルワーカー)に依頼して探した」(約21%)、「知人の紹介で探した」(約8%)です。
親御さんが入院して帰宅が難しいなど、急いで施設探しをすると、「とにかく入れるところ」となりがちです。急ぐあまり、ご本人の意思を尊重することも難しくなりますが、「家族に施設に入れられた」と感じている方は、入居後の満足度が低いように見受けられます。
あわてて探して、満足度の低い施設への住み替えにならないためにも、早い段階で複数の施設を見学しておくことを、FPからアドバイスするのが望ましいと思います。私は個人の事業としては行っていませんが、相談者の希望があれば見学に同行して報酬を得たり、施設から紹介料をいただいたりするビジネスの展開を検討してみてもいいかもしれません。
メディアでも高齢者施設が取り上げられる機会が増えていますし、セミナーで講師を務める際には注目の高さを実感します。資金プランも含め、FPは高齢者施設選びのアドバイザーとして適任だと思います。
高齢者施設に精通したFPが増えていくことを切に願っています。
CFP®認定者
畠中 雅子 氏
家計、保険、教育費、住宅など、幅広い分野で新聞、雑誌、WEBなどに多数連載。セミナー講師や講演、相談業務も行う。2002年から高齢者施設の見学を開始。住み替えなどのアドバイスも行っている。ひきこもりの子どもを持つ家庭に向けた「働けない子どものお金を考える会」なども主宰。
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