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2026.01.20
【社会保障】公的年金とiDeCoで最強の自分年金を作る(井戸美枝氏)
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公開:2026.01.06
「介護・施設」の第2回目は、高齢者施設を検討する際の費用や要介護状態ごとのポイントなどについて解説します。
高齢者施設を検討する際にはいくつかのポイントがあります。「費用」、「施設の種類や体制」の順に見ていきましょう。
費用の中身を知る前にまず認識しておきたいのは、「費用は入居する本人が負担するのが原則」ということです。親が入所するなら費用は親が出すのが基本であり、親の経済力に合った施設を選択すべきです。
親の年金が少ないなど、一部を子が負担しなければならないと考える人もいますが、子が費用を負担することにはリスクが伴います。「月に数万円ならなんとかなる」と考えたとしても、高齢者施設に入所後、何年暮らすか(何年費用を出し続けることになるか)は明らかではありません。高齢男性では、「生きてもせいぜい5年」などと言って、その想定で考えてしまう方も多いのですが、施設に入居すると栄養バランスが整ったり、お酒が減ったりすることで体調がよくなり、長生きされる方もいます。
元気で長生きされるのはなによりですが、お金を出す子世代が経済的に息切れしてしまう危険性もあります。また、光熱費や食材費の上昇もあり、長期になれば途中で費用が値上がりする可能性もあります。月3万円程度を5年くらい、などと考えていたら、4万円、5万円となり、7年、8年となっていけば、子世代がご自身の老後資金を準備できなくなってしまうことにもなりかねません。
「入居する本人の経済力に合った施設を探す」ことを基本として、まずは親の年金と資産を確認しましょう。
年金は主に毎月の費用に、資産は入居一時金や年金では払いきれない費用の補填に使います。持ち家があれば、売却して費用に充てる手もあります。親子でお金の話をするのは難しいと考えがちですが、それをしないと施設選びの一歩が踏み出せません。年金額や資産額を書き入れる表を作り、それに記入してもらうのもいいでしょう。コンサルティングをしてきた経験から言うと、親がかたくなに話してくれない場合、資産や年金がかなり少ない、実は借金を抱えているなどの可能性があり、要注意です。
親の資産状況と年金額を確認したら、その範囲で無理なく暮らせる施設を探します。
費用の目安は施設によって異なります(施設の種類ごとの目安は次回以降で解説します)。
毎月かかる月額利用料(家賃、食費、介護費、雑費など)は年金の範囲でまかなうのが基本です。預貯金を取り崩すこともできますが、長生きしたり、利用料が値上がりしたりすることを想定すると、あまり無理はしない方が無難です。年金に1~2万円を足した額を基本として、資産が多い人はいくら上乗せしても大丈夫かを計算してみましょう。「年金で足りない額×12カ月×年数」が資産を取り崩して払う金額となります。
年数は予想できませんから、平均寿命(女性87歳/男性81歳)+10年程度を目安にすると安心です。女性は95~100歳、男性は90~95歳くらいです。
さらにお小遣いや衣服費、携帯電話代、イベントへの参加費など、私的な費用もかかります。1カ月に3万円でも、3年では100万円を超えますから、そうした費用も考慮しておく必要があります。イベントを頻繁に行う施設もありますが、高級な施設ではオペラ鑑賞やクラシックコンサートに2万円など、高額な費用がかかる例もあります。もちろん参加は自由ですが、あまり経済力と見合わない施設に入居すると、なにかと無理が生じかねないことも知っておきましょう。
有料老人ホームなどでは、入居一時金(以下、一時金)がかかるのが一般的です。一時金は家賃の前払い金であり、数十万円、数千万円など、施設によって大きく異なります。「一括払い」「一部前払い」「ゼロ」があり、一時金を払うと、その分、月額利用料が抑えられます。
長生きしても追加で一時金を請求されたり、月額利用料を上乗せされたりすることはありません。したがって、長生きするほど前払いした方が有利、入居期間が短ければ前払いせずに月額利用料を多く払う方が有利となります。何年生活できるかは予想できませんが、70代で元気なうちに入居するなら一時金を支払ってもよさそうですし、80代半ば以降や持病がある場合はゼロや一部前払いを検討するのがよさそうです。
一時金は資産から支払いますが、資産が減ってしまい過ぎると、何かあったときに不安です。入居一時金として支払うのは総資産の1/3程度までに抑えるといいでしょう。
自宅を売却したお金を一時金に充てる方法もありますが、施設で生活できることが明らかになるまでは自宅を維持しておきたいものです。「施設での生活に慣れることができたら自宅を売却して一時金を払いますので、まずは月払いを選択します」など、途中でプランを変更することも可能です。
なお、一時金は償却期間が定められています。「初期償却」(15~30%程度)は、90日以内のクーリングオフ期間を過ぎると戻ってきません。それ以外の分は償却期間に応じて償却されます。償却期間の長さは入居時の年齢などによって決められており、償却期間内に退去する場合は、未償却分が返還されます。
「親のお金だけでは施設に入れない。子が出さざるを得ない」と考える人は多いですが、前述のとおり、適切とはいえません。親の経済力に合った施設を選べばいいのです。
例えば特別養護老人ホーム(特養)は入居金がかかりませんし、月額費用は7万~25万円が目安です。基本的に福祉目的ですから所得が少ない人へのサポートが厚く、「補足給付」という軽減措置により、費用負担が抑えられます。具体的な例をご紹介すると、同じ特養でも、年金収入160万円・貯蓄800万円のAさんは、居住費・食費・月額利用料・日常生活費で14万3,200円ですが、年金収入70万円・貯蓄300万円のBさんは、7万5,970円と、約半額です(いずれも要介護5の場合)。
そのほか、費用が抑えられる施設には「ケアハウス」もあります。 「お金がないから自宅で介護するしかない」といった声、その結果として悲しい結末を迎える例もあります。しかし補足給付によって少ない負担で入居できるケースもありますし、年金も貯蓄もない場合は、生活保護を受けて特養に入る道もあります。親が生活保護を受ける際、子が支援できないのかは、子世帯にかなりの余裕があるケースを除けば、それほど厳しく問われません。そうしたことも、ぜひ知っていただきたいと思います。
経済的な要素のほかに、介護の必要度合いや健康状態によっても施設の選択肢が異なります。特養は介護が必要な人を対象としていますが、高齢者施設の中には、要支援でも入居できるところ、なかには自立した人でも入居できる施設もあります。ケアハウス(一般型)は自立~要支援の方が対象ですが、民間施設である有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、シニア向けマンションは、自立、要支援、要介護と、幅広い方を対象としています。今の段階で入所するならどんな選択肢があるかを把握しておきましょう。
医療への対応も重要です。どのような医療行為に対応しているかは施設によって大きく異なります。医療ケアが手厚い有料老人ホームや、医療機関と介護サービス事業者が運営または連携したメディカルホームもあります(メディカルホームは数が少なく、費用が高額なケースが多い)。自立度が高いときはサ高住に住み、医療依存度によっては介護医療院や、希望する医療行為が可能な有料老人ホームに住み替えたり、在宅に切り替えたりするのもよさそうです。今の段階でどのような選択肢があるか、将来どうするかなど、プランを立てておくのが理想的です。
さらに気になるのが看取りです。病院ではなく、施設での最期を望まれるのであれば、それが可能な施設を選ぶというのも大きなポイントです。救急搬送できなかったために施設で亡くなられたなどではなく、救急搬送などをせずに施設で看取る体制があるか、どのくらいの方を看取られてきたかなど、「実際のところ」を確認します。私がこれまで見学した施設のなかでは、施設に入所された方すべて施設で看取られた、という例もありました。
このように、何を望むかを整理して、施設を選ぶことが大切です。
ある方は、「いいことが多い施設より、いやなことが少ない施設がいい」と話されました。例えば、「施設内で季節ごとにイベントがある」、「充実した図書ルームがある」など、いいことが多い施設より、「急病時に救急車を呼んでくれるけれど同行してくれない」など、いやだと感じる点が少ない施設がいいというのです。体が不自由になっていくと、イベントや充実した施設を楽しむ気力・体力は減っていき、反対に、悪いところがますます気になるようになっていくからです。
こうしたポイントを押さえるためにも、やはり、早めの準備が大切です。
CFP®認定者
畠中 雅子 氏
家計、保険、教育費、住宅など、幅広い分野で新聞、雑誌、WEBなどに多数連載。セミナー講師や講演、相談業務も行う。2002年から高齢者施設の見学を開始。住み替えなどのアドバイスも行っている。ひきこもりの子どもを持つ家庭に向けた「働けない子どものお金を考える会」なども主宰。
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