FP・専門家に聞く
2026.02.03
【介護・施設】要介護者が入所できる 3つの公的な高齢者向け施設を知る(畠中雅子氏)
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公開:2026.02.03
「介護・施設」の第3回目は、「特養」「老健」「介護医療院」の3つの公的な高齢者施設について解説します。
公的な高齢者施設には、「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」「介護医療院」があります。いずれも国や自治体が関わっている施設ですが、実際には社会福祉法人や医療法人が経営していることが一般的です。
いずれも要介護認定を受けた人が入所できるもので、要介護度が高い人、また低所得者が優先的に入所できる傾向にあります。
入居一時金などはかからないため、入所時の負担は民間施設より抑えられます。食費や居住費などは自己負担ですが、所得や資産が少ない場合は、「補足給付」という軽減措置を受けることができ、負担を抑えられます。逆に所得や資産が多いと補足給付が受けられないため、民間の施設並みの費用がかかったり、地域や介護保険の自己負担割合によっては民間施設よりも高額になったりする場合もあります。
まずは特養からみていきましょう。
特養は、原則的に要介護度3以上の人を対象とした公的施設です。24時間介護が受けられ、食事は入所者の状態に合わせた内容で提供、入浴は週2回です。認知症でも入所が可能で、看取りまで行われます。
施設によっては医師の指導のもと、医療措置が行われる施設もあります。ただし医療措置は義務ではなく、医療措置の有無や、どこまで受けられるかは施設によって異なります。
4人部屋の多床室や従来型の個室のほか、リビングスペースを中心に8~10室の個室が配置されたユニット型などがあります。多床室や従来型の個室では、広い食堂などがあってそこを入所者全員で利用します。対してユニット型では、ユニットごとに共有スペース(食堂のケースも)があり、そこでユニットのメンバーで食事をとるなどします。
施設によっては、多床室であっても扉があって個室のように設えてあるなど、プライバシーに配慮されている例もあります。実際に見学すると、古さを感じさせる施設がある一方で、明るい、広い、綺麗など、驚かされることも少なくありません。
特養は当初、要介護1から入所可能でしたが、待機者が多いときで52万人にのぼるなど、待機者の多さが社会問題とも言われていました。待機者を減らすため、2016年度からは補足給付に資産基準が導入されるとともに、原則として要介護3以上の人が対象となりました。さらに2021年からは補足給付を受けるための資産基準が厳しくなり、資産が一定以上ある人は補足給付が受けられなくなりました。そのため収入や資産が多い人にとっては、必ずしも特養=安い、とは言い切れなくなっています。
また民間施設である有料老人ホームでも、入居一時金なしでも入所できる施設が増えており、一時費用を抑えたい人の選択肢は特養一択ではなくなっています。
そうしたことから、特養の待機者の数は減少傾向です。地域によっては、やむを得ない事情があれば要介護2、要介護1の人でも入所が認められることもあります。過疎地などで例が多いようですが、今後は全国に広がるとも考えられています。
一方で、入所待ちの人がいる場合には、申し込み順ではなく、介護の必要性の高さで優先順位が判断されます。要介護度が軽い人より重い人、家族と同居している人より独居の人、などが優先となるのが一般的です。判断基準を公表している自治体もあります。
住民登録している人を優先する自治体が多いですが、居住地以外の特養に申し込むこともできます。また、自治体によっては、希望する施設に申し込むことができる場合と、自治体に申し込み、施設の指定はできない(空きが生じた施設などに入所する)場合があります。
全国的な傾向として、介護職員が足りず、満床にできない(要介護者を受け入れられない)施設も増えています。訪問介護を担う介護職の不足が社会問題になっていますが、一部、施設介護の現場でも人材不足に悩まされていることは、知っておきたいところです。
月額費用の目安は7万~25万円で、収入や所得、要介護度、介護保険の自己負担割合などに応じて計算されます。いずれにしても補足給付が受けられる人と受けられない人では、負担が大きく異なります。
たとえば年収70万円・貯蓄額300万円のAさん(要介護5)は補足給付を受けることができ、居住費、食事代、月額利用料、日常生活費で月額の自己負担は約7万6,000円です。
対して、年金収入160万円、貯蓄額800万円のBさん(要介護5)は、補足給付が受けられず、毎月の自己負担は約14万3,000円です。14万円程度となると、都市圏以外では介護付有料老人ホームの費用とそれほど変わりませんから、特養に絞らずに選択肢を広げてもよさそうです。
資産基準については、銀行預金や株式、投資信託などの有価証券、金、タンス預金や国債などは資産に含まれるのに対し、生命保険は資産に含まれないなどの違いがあります。
生活保護を受けている方が特養に入所される例も少なくありません。ちなみに、生活保護を受けている人の介護費用は自治体が負担してくれますが、入所できるのは多床室に限られます。
老健は、病気やケガで長期入院し、すぐには自宅に戻れない人が、自宅復帰をめざし、リハビリを目的に入所する施設です。医師が常勤し、リハビリの専門家も配置されています。入院中、病院から、「老健で機能回復を図ったらどうか」などと提案されたり、ソーシャルワーカーやケアマネジャーから情報提供されたりするケースが多いようです。
特養や介護医療院との大きな違いは、老健は終身で入所する施設ではなく、入所期間が3~6カ月程度に制限されていることです。
たとえば要介護4で病院から老健に移り、老健でのリハビリで機能回復し、要介護2や3になって自宅復帰、あるいは特養に入所、などのイメージです。とはいえ、在宅介護が困難で特養も入所待ち、といった場合には、そのまま老健で契約を更新しながら待機したり、別の老健に移動したりする例もあるようです。
もちろん、病院からの移動先が老健一択というわけではなく、病院から特養、介護医療院、あるいは有料老人ホームなどの選択肢もあります。
老健でも収入や資産の要件を満たせば補足給付が受けられ、費用は月額10万~25万円が目安です。看取りは施設によって異なります。
介護医療院は、要介護で、かつ医療依存度の高い高齢者が長期療養するための公的な介護施設です。看護や医学的な管理のもとで、介護や機能訓練、日常生活の支援が行われ、以前あった、「介護療養型医療施設」(廃止)の移行先でもあります。看取りも行っています。
収入や資産の要件を満たせば補足給付が受けられ、月額費用の目安は10万~25万円です。
対象となるのは、要介護認定を受け、かつ医療依存度が高い方。具体的には、ほぼ寝たきり、点滴治療を受けている、排泄はオムツを利用しているといった状態の方です。4人までの多床室と個室があります。
とはいえ、どんな医療措置も受けられるわけではなく、提供される医療措置は施設によって異なります。たとえば、医療法人が経営し、病院と内廊下でつながっている介護医療院に入所した方の例では、入所後に透析が必要になったものの、入所中の介護医療院では対応が不可能で、退所したなどのケースもあります。
いうまでもありませんが、どこまで医療措置が受けられるかはしっかり確認すべきです。とはいえ、ご本人の容態がどのように変化し、どのような医療措置が必要になるかを正しく予想することはできません。「介護医療院に入れば、誰でも看取りまで任せられる」というわけにはいかないのが現実だと知っておいたほうがよいでしょう。
医療措置の必要度合いなどによって入所を続けることが難しくなる場合があるのは、特養でも、老健でも、民間の施設でも同じです。医療措置が充実した施設に移る、病院に入院する、メディカルホーム(医療・介護サービスが充実した高齢者向け施設)に入所する、などの選択肢がありますが、相談者の方には、その可能性があることをお伝えし、資金には余裕を持たせておくことが重要です。
| 特別養護老人ホーム(特養) | 介護老人保健施設(老健) | 介護医療院 | |
|---|---|---|---|
| 対象となる介護度 | 要介護認定を受けている必要がある | ||
| 対象となる人 | 原則として要介護3以上。事情により要介護1,2でも入所できる可能性がある | 長期入院のあとリハビリをして自宅復帰を目指す人など | 要介護で長期療養が必要な人 |
| どんな施設か | 24時間介護が受けられ、看取りも可能 | 医師などのもと、リハビリを行う | 看護や医療的な管理のもと、介護や機能訓練、日常生活の支援を受ける |
| 入居金 | 不要 | ||
| 月額費用目安 | 7万~25万円 | 10万~25万円 | 10万~25万円 |
| 認知症でも入所できるか | 入所可能 | ||
| 看取りは可能か | ○ | △ | ○ |
CFP®認定者
畠中 雅子 氏
家計、保険、教育費、住宅など、幅広い分野で新聞、雑誌、WEBなどに多数連載。セミナー講師や講演、相談業務も行う。2002年から高齢者施設の見学を開始。住み替えなどのアドバイスも行っている。ひきこもりの子どもを持つ家庭に向けた「働けない子どものお金を考える会」なども主宰。
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