FP・専門家に聞く
2026.10.27
【資産形成】値上がりした持ち家は、売却する? 賃貸に出す? それとも住み続ける?(平井美穂氏)
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公開:2026.10.27
今回は、価格が高騰している持ち家を活用するときの考え方や、売却・賃貸にかかる具体的な費用などについて紹介します。
東京をはじめ、都市部では不動産価格が値上がりしています。資産価値の高い地域に持ち家を所有する人のなかには、「自宅を売って売却益を手にしたい」と考えている方もいるのではないでしょうか? あるいは「せっかく値上がりしている自宅を売却するのはもったいないので、賃貸に出してその家賃収入で別の住まいに移り住もう」と計画を練っている人もいるかもしれません。
日頃FP相談をしている筆者のところにも、「自宅を売却するか、それとも売却せずに賃貸に出して別の住まいに移り住んだほうがいいのか、あるいは現状のまま住み続けたほうが経済的によいのか、診断してほしい」といった相談がよく寄せられます。
相談に来られる方々に共通しているのは、「目先の利益を優先して、後で失敗したとなるような事態は避けたい」「これからかかる教育費や老後資金など、住居費以外のお金のことも考えて慎重に判断したい」という思いでしょう。
そこで今回は、住宅価格が値上がりしているときの持ち家の活用方法に関して、一般の人が見落としがちなポイントをいくつかご紹介します。
自宅の買い換えを考えている人の話を聞いていると、住宅の売却や新しい住まいの購入にかかる諸費用の存在を忘れて、売却益や、売却益からローン残高を引いた額がそのまま手元に入ると考えているケースが少なからず見受けられます。
実際には、買い換えには多額の諸費用がかかります。元の自宅の売却と、新しい家の購入のダブルで諸費用がかかるので、初めて家を購入したときよりも注意が必要です。まずは自宅の売却にかかる諸費用、新居の購入にかかる諸費用、その他住み替えにかかる諸費用をそれぞれ確認してみましょう。
・仲介手数料:仲介会社に払う手数料(〔売却価格×3%+6万円〕×1.1の速算式で計算)。
・抵当権抹消登記費用:住宅ローンが残っている場合は、従前の自宅の土地・建物に銀行の抵当権が設定されています。売却資金でローンを完済後、抵当権を抹消する登記費用として3万~4万円ほどかかります。
・ローン完済手数料:銀行により金額は異なりますが、一般的には2万~5万円程度。
・売却益に対する税金:売却益が出た場合は、譲渡所得に対して税金がかかります。古家付きの土地を売却するときには、古家の解体撤去費用や測量費用がかかるケースもあります。
・購入費用:売却益の範囲で購入する人もいれば、売却益を頭金にして不足分は新たなローンを組む人もいます。また売却して残った従前のローンに上乗せして、オーバーローンを組んで購入するケースもあります。
中古住宅を購入してリフォームする場合は、リフォーム費用だけで1,000万円以上かかるケースもあります。
・仲介手数料:中古住宅を購入する場合は、売却時と同様の仲介手数料が必要です。
・住宅ローン手数料:金融機関に借入額の2.2%の手数料を支払うのが一般的です。
・登記費用:所有権移転・保存、抵当権設定登記などが必要です。
・仮住まい費用:売却を先行し、後から購入する場合は仮住まいの期間の賃貸住宅の家賃・礼金等が必要です。
・引っ越し代:引越し時期や距離等によりますが、4人家族で30万円ほどかかる場合もあります。仮住まいが必要な場合は、元の住宅→仮住まい→購入した住宅という2回分の引っ越し代が必要になります。
ここに挙げた住宅売却、新居の購入、住み替えにかかる諸費用をすべて合計すると、1,000万円以上かかることも珍しくありません。「売却価格―ローン残高=手元に残るお金」と考えていると、資金不足になるおそれがあるので注意しましょう。
「値上がりした自宅を売却し、とりあえず利益を確定したい」と考える人に多いのが、買い換え先の新居の希望条件や予算をきちんと把握せずに、売り急いでしまうケースです。
しかし自宅の値段が上がったということは、同じエリアであれば住み替えで購入する住宅の値段も上がっているということです。結局、新居を購入する予算が足りなくなって、エリアや広さ、駅からの距離などを妥協することになり、かえって従前の自宅のほうが住みやすかったとなるケースもあることを知っておきましょう。
一方で、買い換え資金が足りないときに「住み替えローン」を利用するケースもあります。これを利用すると従前の自宅のローンが残っていた場合でも、それに上乗せしてオーバーローンを組むことができます。ただし資金調達はできたとしても、新たにローンを組むことにはリスクもあります。特に定年前後の年齢の場合、ローン残高が増えたり、返済期間が延びたりすることで、老後の資金計画が圧迫され、長期的な生涯収支が悪化する可能性もあるので注意が必要でしょう。
また、住宅を売却して売却益が出たときはそれに対して税金がかかります。売却益(譲渡所得)に対して課される税金は、住宅の所有期間や条件によって大きく異なります。
[不動産の譲渡所得の税率]
・所有期間5年以下(短期譲渡所得):39.63%
・所有期間5年超(長期譲渡所得):20.315%
住宅の所有期間5年以下と5年超とでは税率が約2倍違いますので、売却時期を待てるのであれば少なくとも5年以上経ってから売却したほうが、税金面では断然お得です。
マイホームの場合は、要件を満たしていれば3,000万円の特別控除の特例等の適用を受けることもできます。税負担も考慮して、買い換え時期を検討するのも一案です。
売却よりもさらに誤解が多いのが、自宅を賃貸に出すケースです。現在の自宅のローンの返済が終わっている場合は、自宅を賃貸に出して入ってくる家賃収入をそのまま、新居のローン返済に充てられると考えがちです。
ところが、実際には家賃収入から多くの経費が引かれ、手元に残るお金は7~8割くらいになるのが一般的です。例えば、月の家賃が20万円ならば、経費や固定資産税・都市計画税を引いた後の手残りは14万~16万円になるイメージです。
なかでも最も経費がかかるのが、ファミリータイプの分譲マンションです。これまでどおり管理組合に支払う管理費・修繕積立金とは別に、賃貸管理会社へ支払う管理手数料が新たに発生します。ゲストルームなどの共用施設が多く、ごみ収集サービス、コンシェルジュサービスなどの管理が充実しているマンションほど、管理手数料も高くなります。
このほかに固定資産税・都市計画税、火災保険料といった毎年かかる費用以外に、賃借人が入れ替わるタイミングでクリーニング代や修繕費・設備交換費などが必要です。さらに一定期間ごとに空室期間が発生すると想定し、空室損失も見込んでおく必要があるでしょう。
賃貸経営の投資効率を判断するときには、家賃収入から経費やローン返済額を差し引いた「税引前キャッシュフロー」を「購入時の自己資金」で割って求める「CCR(自己資金配当率)」という指標があります。不動産価格の上昇ほど家賃は上がっていないこと、金利が上昇していること、不動産投資には経費がかかることなどから、CCRが思っていたほど良くないケースは多々あります。実際に、実質利回りの数値を計算して、売却すべきか賃貸に出すべきか合理的に判断する目線も必要でしょう。
最後に、売却でも賃貸でもなく、「このまま住み続ける」という選択も当然あります。むしろ、これから老後を迎える人にとっては、非常に合理的な選択になるケースがあります。
持ち家が戸建ての場合、30年住んだ場合の修繕費の平均は約600万円というデータがあります。昨今は建築費が高騰しているため、近年はさらに修繕費が高くなる傾向にありますが、それでも住み替えにかかる諸費用や将来の収支を考慮した場合、そのまま住み続けるという選択肢も大いにあり得ると思います。
また分譲マンションの場合、30年住んだ場合の管理費・修繕積立金の累計額が、戸建てにかかる修繕費よりもはるかに高くなるのが一般的です。住み替えた後にかかるランニングコストの違いなども考慮して、住み替えするかどうか判断することが賢明です。
もちろん、今は昔と違って、住み方も働き方もライフスタイルに合わせて変えていく時代でもあります。前向きな住み替えには賛成ですし、上手に住み替えをしている方もたくさんいます。大事なのは、周りの情報に惑わされることなく、わが家の最適解が何かを見極めることです。経済合理性を数値で確認することに加え、住まいに求める条件なども含め、長期的かつ幅広い視点で判断するようにしてください。
| 第1回 | 住宅ローンの「50年ローン」は是か非か |
|---|---|
| 第2回 | 資産運用、正しくできていますか? |
| 第3回 | 「なんとなく」入った生命保険、どう見直す? |
| 第4回 | 子育て世代は知っておきたい 平均データに表れない教育費のリアル |
| 第5回 | 値上がりした持ち家は、売却する? 賃貸に出す? それとも住み続ける? |
| 第6回 | 公開をお楽しみに! |
CFP®認定者
平井 美穂 氏
平井FP事務所代表。宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー、証券外務員1種。不動産営業および銀行で融資・金融商品の販売業務を経験後独立。専門は不動産、融資、資産運用。5,500件超の相談実績を誇る、実践派のファイナンシャル・プランナー。
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