公開:2026.10.22

【不動産調査】図面だけではわからない! リスクを見抜く現地調査のポイントとFPの役割(置鮎謙治氏)

チャット風吹き出し最終決定版(中央寄せ修正版)

ベテランFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。

置鮎謙治氏

顧客が不動産を安全に取引・活用するためには、役所や法務局での事前の書類調査に加えて、実際に現地へ足を運んで状況を確認する「現地調査」が欠かせません。連載第5回目となる今回は、現地調査へ行く前の準備や、図面と現況のズレを発見するポイント、土地や建物の物理的なチェック事項、そして調査結果を踏まえてFPが顧客に行うべきアドバイスについて解説します。

“現地調査”の目的と必須アイテム

不動産は実態のあるモノです。そのため、書類上のデータだけでなく、現地に出向いて実際に調査することが、状況を正確に理解するための基本となります。土地の形状や道路とどのように接しているかを調査し、また建物の利用状況などを把握することは、不動産の市場性や収益性、利用のしやすさを判断するうえで不可欠といえます。例えば店舗やオフィスであれば、通りからの視認性の良さや車でのアクセスのしやすさなども重要な確認ポイントになります。ほかにも、登記上の面積や用途が現況と一致しているか、未登記の増築がないか、建物が他人の土地に越境していないかなど、事前に法務局等で取得した資料と現況との相違を確認することも現地調査の大きな目的です。

現地へ赴く前に準備しておくべき資料としては、住宅地図など現地の地図情報に加え、法務局で取得した登記事項証明書、公図、地積測量図、建物図面などが挙げられます。建物に関して設計図書が残っていれば持参してください。また、役所で取得した道路台帳や配管図、都市計画に関する資料も手元にあると、より精度がアップするでしょう。

持参する道具については、筆記用具や名刺はもちろんのこと、現地の状況(境界標や高低差など)を記録するためのカメラやスマートフォンが必須です。また、前面道路の幅員や敷地の間口を測るためのメジャー(巻き尺や、ウォーキングメジャー)、方位磁石、暗い場所を確認するための懐中電灯なども役立ちます。測定が難しい場所のためにレーザー距離計を用いたり、撮影時に状況をメモして一緒に写し込める小さなホワイトボードを用意しておくと、後で写真を見返す際に大変便利です。

これらは不動産仲介業者が行う業務範囲でもありますが、FPとしても売却等の相談を受けた際、仲介業者に依頼する前の段階からある程度リスクを把握し、「ここは事前に調べておいたほうがいい」と顧客に的確なアドバイスができるよう、調査の視点を持っておくことが大切です。

土地の高低差、越境物、建物の老朽化と未登記に注意

現地での土地の調査においてまず確認したいのは、外周や地形、間口、奥行き、そして現況の地目です。現況が立派な宅地であっても、登記上の地目が「田」や「畑」「山林」のままになっているケースも見受けられるため、資料との照らし合わせが必須です。さらに、過去の登記事項証明書の地目が「池沼」であった場合は、地盤が弱い可能性があるため、より慎重な調査が必要となるでしょう。また、図面や地図だけでは把握しきれないのが「高低差」です。公図上では対象地と前面道路が接しているように見えても、実際には両者の間に大きな段差があり、そのままでは出入りができないといった事態も起こり得ます。

そして、将来のトラブルの火種になりやすいのが越境物です。隣地の樹木の枝や建物の庇(ひさし)、古いブロック塀が対象地に入り込んでいたり、逆に対象地から越境していたりする場合は注意が必要です。今すぐ取り壊すことが難しくても、将来建物を建て替える際などに越境状態を解消する旨を定めた覚書を隣地所有者と交わしておくことが、後々のトラブル防止につながります。なお、こうした覚書は公的な文書ではなく、私製文書として当事者間で取り交わすものであり、FPとしてその必要性を助言することも十分可能です。

加えて、土地の四隅にあるべき境界標(コンクリートの杭や金属の鋲、プレートなど)の有無も確認しますが、境界標を盲信しない姿勢も必要です。道路との境界など行政が入って確定させた官民境界の杭は正確性が高いですが、隣地との民民境界の杭は、過去に抜け落ちたものを所有者が適当に打ち直しているケースもゼロではありません。場合によっては古いフェンスのほうが長年の正しい境界を示していることもあり得ます。いずれにせよ、先入観を持たずに現況を観察することが大切です。

一方、建物の調査においては、外観から老朽化の程度を確認することが最優先事項となります。老朽化が著しい場合、購入後に多額の修繕費用が発生し、賃貸物件であれば収益計画に大きな悪影響を及ぼします。可能であれば、居住者の許可を得て建物内部の目視調査も行いたいところです。さらに、建物調査で特に注意すべきは「未登記建物」や「小規模な未登記の増築」の存在です。これらは登記事項証明書がないため、現況の床面積や概要を把握するのが困難となります。その場合は、所有者からの委任状を得たうえで、役所で固定資産評価証明書などを取得し、市町村が固定資産税の徴収目的で把握している建物の概要を確認するという手法が有効となります。なお、所有者と同行したりスケジュールを調整したりと手間がかかるため、時間的な余裕を持って進める必要があります。

図表 土地・建物の現地調査における主なチェックポイント

調査対象主な確認事項実務上の注意点
土地地形・現況地目登記簿上の地目と実際の利用状況が異なっていないか確認する。過去の地目(池沼など)から地盤の脆弱性が推測される場合もある。
境界標の有無四隅に境界標が存在するか確認する。ただし、民間同士で任意に設置されたものは必ずしも正確とは限らないため、絶対視しないように注意する。
越境物の有無樹木、ブロック塀、庇などが隣地へ越境、または隣地から越境していないか。将来の建て替え時に解消する旨の「覚書」を取り交わすことが有効。
高低差・傾斜公図上は道路に接していても、現地を見ると大きな段差があり、そのままでは建物の建築や車の出入りができない場合もある。
建物老朽化の程度外観および内部(可能な場合)から目視で確認。購入後に多額の修繕費用が発生するリスクや、賃貸物件における収益低下リスクを把握する。
未登記建物・増改築登記されていない建物や増改築部分がないか。存在する場合は、役所で「固定資産評価証明書」などを取得し、概要を把握する。

図面とのズレに「大きなリスク」、その時、FPは…

法務局で取得した図面と、現地が異なっているケースは決して珍しいことではありません。法務局に備え付けられている図面のうち、地籍調査が進んで作成された正確な「14条地図」であれば現況との違いは少ないですが、明治時代に作られた地図をベースにしている「公図」しか存在しない地域では、現地の規模や形状と合致していないことが多々あります。また、分筆時などに作成された「地積測量図」が存在していても、図面上の境界と現地のフェンスの位置がわずかにズレていたり、登記面積と実測面積に差異があったりすることも比較的よく見受けられます。図面と現況のズレを現地で発見するコツとしては、交差点や水路など「絶対に動かないポイント」を起点として、図面上の境界と現況を照合していくのが比較的容易な方法です。

もし面積のズレが判明した場合、将来の不動産取引において大きなリスクとなります。具体的には、土地を売却する際、登記簿の面積ではなく実測面積に基づいて売買代金を精算する実測売買を行うケースがあります。その場合、実測した面積が減れば、売却金額が減る可能性があります。さらに、更地を買って建物を新築しようとした際、土地の面積が変わることで建ぺい率や容積率などの建築制限に影響が生じ、予定していた規模の建物が建築できなくなるおそれもあるのです。

現地調査の結果を踏まえ、FPとしては、的確な情報提供とアドバイスを行う必要があります。土地に高低差がある場合や地盤に不安がある場合は、「家を建てるための造成工事などに多額の費用がかかる可能性がある」としっかり伝えてください。また、建物の老朽化が進んでいれば、想定される将来の修繕リスクについても助言が必要となります。そして、現況と図面の差異や未登記の建物が判明した場合は、将来の売買や建築計画に支障をきたさないよう、早めに手続きを行うよう伝えましょう。なお、測量や登記にはまとまった費用と時間を要するため、売却や解体などの場合は直前になって慌てないよう、日程に余裕を持って準備を進めることが大切です。

現地調査後、FP自身が測量を行ったり、登記の手続きを代行したりすることはできません。しかし、未登記建物の表題登記や、建物を解体した際の滅失登記が必要になった場合に土地家屋調査士を紹介し、解決を目指すことは可能です。現地の状況から課題を抽出し、信頼できる専門家への橋渡しを行うことで、顧客の大切な資産をトラブルから守るサポートを心がけてください。

次回の【不動産調査】分野は、「周辺環境調査」について取り上げます。
アコーディオン目次

お話を伺った方

CFP®認定者、不動産鑑定士、住宅ローンアドバイザー、おきあい事務所代表。

置鮎 謙治 氏

福岡県福岡市出身。早稲田大学商学部を卒業後、政府系金融機関において住宅ローン業務全般に携わる。その後、大手監査法人勤務を経て、不動産鑑定事務所にて不動産の鑑定・デューデリジェンス等、評価業務全般に従事。2008年におきあい事務所を設立し、不動産鑑定やコンサルティングを中心に活躍。実務経験に基づいたわかりやすい解説で、研修や執筆活動も精力的に行っている。

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