公開:2026.07.28

【資産形成】資産運用、正しくできていますか?(平井美穂氏)

チャット風吹き出し最終決定版(中央寄せ修正版)

ベテランFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。

平井美穂氏

今回の「資産形成」では、FPが実務で行っている「資産運用の商品選びやパフォーマンスのチェック方法」について解説します。

「本当にこの運用でいい?」と不安に陥る人も

NISAやiDeCoといった税制優遇制度が普及し、最近になって資産運用を始めたという人が急増しています。SNSで知ったオルカン(オール・カントリー/全世界株式に投資するインデックス型投資信託)を買ってみたという人や、銀行や証券会社に勧められた商品を購入し、そのまま持っているという人も多いでしょう。

一方で、なんとなく見よう見まねで運用を始めたものの、自分のしている運用が果たして正しいのかと悩む人も少なくありません。「この数年は成果が出ているが、今後急落しないか不安」という声や、「運用商品を選ぶときの基準がわからない」「自分の運用方法がベストなのかを知りたい」という相談も多いです。

そこで今回は、実際の相談業務で行っている、資産運用の商品選びやパフォーマンスのチェック方法について紹介します。

「最適な運用プラン」を見極める3ステップ

その人にとって最適な運用プランを確認するには、①今の投資内容の確認②今後の投資金額・期間の検討③自分の家計や投資経験・目的に合わせて再設計、という3つのステップがあります。

① 今の投資内容の確認

最初のステップは、自分がもっている商品の内容やパフォーマンスの確認です。

・何に、いつから、いくら投資しているかを確認

まず自分の投資商品の内容を確認します。実は自分の投資している商品をよく理解していない人も意外に少なくありません。まずは商品名を確認し、それぞれいつから、累計でいくら投資をしているのか、今の時価はいくらかをリストアップして整理します。

できれば、各商品の投資対象も確認できるとよいでしょう。オルカンであれば、米国株が60~70%、日本株が4~5%、新興国株が十数%といった割合です。株式・債券の割合や、投資をしている国・地域も確認してみてください。

今の投資のパフォーマンスをチェック

投資内容のリストができたら、投資額に対して時価がいくらかという騰落率を確認します。そして騰落率を期間で割り、年換算した騰落率を出します。本当は複利で計算したほうが正確ですが、ここは大まかな計算でOKです。例えば5年で+20%なら、20÷5で平均年4%となります。各商品のパフォーマンスを出すと、持っている資産のうち、どの商品のパフォーマンスが良くてどれが悪いのかがわかります。

運用成績の基準になるのが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による公的年金の利回りです。GPIFは私たちの公的年金の保険料の一部を、国内外の株式や債券などで運用している公的機関で、過去25年(2001~2025年度第3四半期)の収益率は4.71%です。投資対象は国内債券、外国債券、国内株式、外国株式がそれぞれ約4分の1という非常に手堅い内容ですが、それでもこれだけの成果を出しています。

その人の運用利回りが2~3%という場合は、年金の運用より低いことになります。私の場合はその方のリスク許容度を確認し、リスクを許容できる方であれば「少なくとも5%以上、より成果を上げたいときは10%を目標にしましょう」とアドバイスをします。

② 今後の投資金額・期間の検討

次のステップとして取り組むのは、投資に回せる金額と、投資を続けられる期間の確認です。

今後5~10年間に使うお金は円預金で確保

原則、今後5~10年以内に使う予定のあるお金は投資しない方がよいでしょう。ときどき、1~2ヶ月後に住宅購入を予定しているのに「資産の大半を有価証券で保有しており、円預金は50万円しかない」というような人がいます。家探しを始めたら契約手付金や自己資金分は円預金で確保しておくのが基本です。過去には、物件引き渡し時に株が大暴落し、見込んでいた自己資金を払うことができなくなり、購入自体をキャンセルされたお客様の事例もあります。数カ月先に使う予定の資金はもちろん、今後5~10年間に使う予定がある資金は、元本確保型で換金性の高い円預金や円建て債券などでもっておくのがよいでしょう。

先々の収支をキャッシュフロー表で確認

現状の家計収支をもとに、今後のキャッシュフロー表を作成します。まず収入は、年間収入から税金、社会保険料を引いた後の手取り年収を求めます。次に、1年間でいくら貯められたかを確認し、手取り年収から貯めた金額を引いた額が、1年間で使ったお金です。支出は、一般的に「生活費」「住居費」「教育費」「支払い保険料」の4項目に分けて支出計上します。

キャッシュフロー表を作る目的は、今の生活費の把握と今後の支出の見通しをもつことです。毎月の生活費の支出が多く、投資に回せる金額が少ないなら、生活費の見直しも必要です。また、これから子どもが生まれる家庭は、10~20年後くらいに教育費がピークを迎えますし、会社員は、定年退職後は収入が下がり、投資に回せる額は少なくなります。こうした変化も予測して、今後、何年間、毎年いくらくらいを積み立てしていけるのか、また運用期間は何歳まで継続できるか作成したキャッシュフロー表で確認していきます。

キャッシュフロー表は、日本FP協会でもPDF版とエクセル版を公開しています。こうした既存の資料を活用すれば、誰でも作ることができます。ただ、一般の人が先々の支出等を正しく見積もるのは難しい面もあります。正確な試算を知りたい場合は、FPの有料相談を利用してみるのもよいでしょう。

運用を続けた場合と、しない場合を比較する

私の場合は、キャッシュフロー表で運用の成果も確認します。運用を続けた場合と、運用をしない場合とでは、将来の資産額に大きな差が生まれます。例えば、30歳の人が毎月3万円を年利5%で35年間複利運用した場合、65歳時点で投資元本1,260万円に対して資産は約3,400万円まで増える見込みです。同じ資金を運用するとしないとでは2,000万円以上の差となります。

③ 自分の家計や投資経験・目的に合わせて再設計

現状の投資内容と今後の運用プランの確認ができたら、自分の家計や投資経験・目的などに合わせて投資対象や配分割合を再設計します。

自分のリスク許容度をもとに、投資対象を選定

投資対象を選ぶ際には、その人の「リスク許容度」も考慮します。
例えば、リスク許容度が比較的高い人が、運用パフォーマンスを上げたいときは、株式中心の投資信託への投資額を増やすとよいでしょう。反対に、リスク許容度が低めという人は、債券への投資割合を高めた運用が向きます。
さまざまな金融機関が無料で提供しているアセットアロケーション診断ツールを複数利用して比較してみるのもおすすめです。

期待利回りをチェックし、20年後・30年後の運用成果を予想する

どの投資対象にどれくらいの割合で投資するかというアセットアロケーションができたら、各投資対象の過去の運用実績から、そのアセットアロケーションの期待利回りも出してみましょう。経費や税金を考慮し、期待利回りは低めに設定しておくこともポイントです。さらに、期待利回りを使って再度、20年後・30年後までの目標に定めた期間で期待できる運用成果を確認します。こちらもインターネット上に無料で提供されている運用シミュレーションツールなどを使うのが便利です。

購入する運用商品を決める

アセットアロケーションが決まったら、その投資対象の商品を一つひとつ選定していきます。非課税口座のNISAを利用することや複数の銘柄に長期分散投資する重要性を考えると、個別の株式や債券に投資するより、まずは投資信託へ投資することを基本とします。
投資信託(ファンド)を選ぶ際には、さまざまな基準がありますが、最低限確認しておきたいのが、「純資産総額」「総経費率」「過去の運用利回り」です。
純資産総額があまりにも少ないと流動性に劣ったり、途中で償還になったりするリスクがあるので、目安として100億円以上のものを選ぶのがよいでしょう。

総経費率は、多くの人に選ばれている主力インデックスファンドは0.2%以下のものが多いため、高くても0.5%以下にしておきたいところです。わずかな差に見えても、運用利回りが0.1%違うだけで大きな差となります。今保有しているファンドの総経費率が高い場合は、同じ投資対象のより経費が安いファンドに乗り換えるのも一法です。
また、過去の運用実績を確認するときには、ここ5年・10年の利回りだけではなく、20年・30年とできる限り長い利回りを確認するようにしてください。

◆運用は「続ける」ことに意義がある!

投資で成果を上げるために最も大切なことは、途中で運用をやめずに、続けることです。前回の記事でも述べましたが、運用は「利回りと時間のかけ算」で決まります。その重要な要素である時間が欠けてしまうと、なかなか成果も出せません。この 5年・10年は運よく資産を増やせた人が多いと思いますが、 本来は20年・30年と長期間運用することで目に見える成果が得られるのが投資です。

人生のなかでは、住宅費や教育費など、大きなお金が必要になる時期があります。そのときに「お金に余裕がないから、投資信託を売ってしまおう」と思いがちです。しかし、そうした誘惑に負けそうになったときでも、当初に決めた運用方針にそって計画的に投資をすれば、「将来の資産形成のために、今は売らず、別の方法で資金を捻出する方法を考えよう」と考え直すことができます。
運用を始めるときや見直すときには、キャッシュフロー表で先々のお金の流れを見通しながら、お金の預け先を分けておくこと、無理なく長く続けられるプランを立てることをおすすめします。

アコーディオン目次
【資産形成】 第1回~第6回はコチラ (平井美穂氏)
第1回住宅ローンの「50年ローン」は是か非か
第2回資産運用、正しくできていますか?
第3回公開をお楽しみに!
第4回公開をお楽しみに!
第5回公開をお楽しみに!
第6回公開をお楽しみに!

お話を伺った方

CFP®認定者

平井 美穂 氏

平井FP事務所代表。宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー、証券外務員1種。大学卒業後、新築マンションの販売会社に就職。用地仕入れ後の商品企画からモデルルームでの営業まで経験。その後、銀行およびモーゲージバンクへ転職し、融資業務・金融商品販売に従事する。出産を機に独立系ファイナンシャル・プランナーとなり、公正中立な立場で「住宅の正しい買い方、ローンの借り方・返し方、資産形成の方法」をコーチしている。5,500件超の相談実績を誇る、実践派のファイナンシャル・プランナー。

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