公開:2026.10.09

【謎解きクリエイター/松丸亮吾さん】AI時代にこそ必要な「思考力」と「チャレンジする勇気」(後編)

さまざまなフィールドで活躍する方々に、自身を成長させてくれた学びや人生における挑戦、夢や目標の実現について語っていただく本企画。今回は、謎解きクリエイターの松丸亮吾さんのインタビューを前後編でお届けします。後編では、AI時代に問われる「思考力」をはじめ、スキルアップのためのモチベーション維持の方法やリスクテイクに対する考え方について聞きました。

AIが台頭する現代だからこそ必要な「思考力」

——松丸さんが代表を務める謎解き制作会社RIDDLERの企業理念は「最高の“ひらめき体験”を生み出し、考えることを誰もが好きになれる世界をつくる。」です。インターネットですぐに検索でき、AI(人工知能)も手軽に活用できる今、「自分で考えること」や「学ぶこと」にはどのような価値があるとお考えですか。

AIが台頭する現代だからこそ、「人間の思考力」が、より重要になってくると思います。AIは膨大なデータを処理して瞬時にアウトプットを出してくれますが、指示したり、それを最終的に判断したりするのは人間じゃないですか。AIのアウトプットは、それを使っている人の思考力をダイレクトに反映しているんですよね。AIを活用して、面白いものを生み出すためには、客観的かつクリティカルな視点と柔軟な思考力が必要です。

——著書では、謎解きを通して鍛えられる「思考力」について、「5つの力」に分類されています。

子どもたちでも直感的にわかるように、「思考力」を5つの力に分けてみました。多角的に物事を見る力=「スイッチ」、論理的に組み立てる力=「プログラム」、ねばり強く取り組む力=「エナジー」、正しく伝え読み取る力=「コミュニケート」、自由に考えひらめく力=「クリエイト」というように、ゲームの能力のイメージでそれぞれの力を名付け、その頭文字を合わせて「SPECC(スペック)」と呼んでいます。子どもだけでなく、大人にとっても、これからの時代には必要な力なんじゃないかなと思っています。

「考えることを楽しくする」という僕たちの理念を裏返してみると、今の教育システムでは、「あらゆる“勉強”と呼ばれるものが楽しくないし、勉強が苦手になるような仕組みが多すぎる」ということなんですよね。一例を挙げると、学校の成績順位表。このシステムでモチベーションが上がるのは、成績上位者のみでしょう? 上位の成績が取れない子にとっては、自己肯定感ややる気が下がるシステムでしかないと思います。

ほかにも、「テストで悪い点を取ることは恥ずかしい」という風潮もそうです。わが家では、両親が「最初はわからないからバツで当たり前。マルになったら自分が頑張ったっていうことなんだよ。バツをマルに変えていく過程が勉強なんだよ」と言ってくれたので、僕は勉強嫌いにならなかったのかもしれない。

バツがあるということは、“伸びしろ”があるということ。本来、「成長する」ことはとても楽しいことのはずなのに、なぜ勉強となるとネガティブにとらえてしまうんだろうと。知らないことを調べたり、試行錯誤して正解にたどり着いたりする過程を楽しむ教育システムが必要だと思い、今は謎解きを活用した教育プログラムの開発も始めています。

モチベーションをうまく管理すれば夢は実現する

——FP資格取得を目指す人は社会人が多く、「スキルアップ」という目標はあるものの、仕事と勉強の両立が難しく、モチベーションが続かない……という悩みがあります。松丸さんは何か目標を立てたとき、どのようにモチベーションを維持されていますか。

僕の場合、目標を「短期」と「長期」で分けて、それぞれモチベーションアップにつながるものを紐付けるようにしています。例えば、ダイエット。コロナ禍で太ってしまった一時期、自宅で運動するようにしていたんです。ちょうど、ハマっていたアニメがあったので「ランニングマシンに乗っているときだけ、そのアニメを観られる」というルールを自分に課しました。そうしたら、すごく走れるんですよ(笑)。それまでは20分くらいが限界だったのに、2話観たいから1時間走るようになって、みるみる体重が落ちていった。これが「短期的なモチベーションアップ術」ですね。

一方で、長期的なモチベーションを支えるのは、「それが実現したときに、どんな自分になっているのか、どんないいことがあるのか」をイメージすることです。ダイエットや筋トレをすることで、第一印象も健康的でアクティブな感じに変わりますよね。

だから、「メディアを通じて僕を見る子どもたちの視線」をモチベーションに、トレーニングしていました。もしかしたら、「謎解きってちょっとオタクっぽい」と敬遠していた子どもたちにも「謎解きって、カッコいいんだな」と思ってもらえるかもしれないでしょう?

——まず明確なビジョンを描いて、短期・中長期で目標を分ける。目標を設定したら、自分が楽しみながら続けられる仕組みをつくるということですね。

実は、僕が参考にしているのは「スマホゲーム」なんです。スマホゲームって、ログインボーナスやチュートリアルをクリアしたら報酬がもらえて「タスクとご褒美」が明確に設定されているじゃないですか。大学受験のとき、まさにあれを真似て、一日のタスク表をつくってから、“ログインボーナス”的なご褒美を自分で設定していたんですよ。「数学の過去問を一年分解いたら、ケーキを食べられる」とかね。資格の勉強も、こういう自分のモチベーションを楽しく持続できる仕組みを考えればいいんじゃないかと思います。

「リスクを取らないこと」こそが最大のリスク

——若い世代を中心に、「失敗したくないから、リスクはなるべく取らない」という傾向が強くなっているように感じます。「やりたいことがあっても、失敗を恐れて一歩踏み出せない」という人に、松丸さんはどのようにアドバイスされますか。

これは個人的な意見なんですけど、まったくリスクを取らずに「現状維持」を目指して生きていくのは、単純に楽しくないんじゃないかな、と思います。僕だったら、絶対に退屈してしまう。おまけに、「現状維持」の考え方って、実際はそれほど安定していないと思うんですよ。気がついたらまわりがどんどん成長して追い抜かされていくから、何もしないままだと、結局のところ「現状維持」もできなくなる。

投資の世界も同じことですよね。世の中はインフレになっているのに、デフレ時代の感覚で資産は現金のみ、という「現状維持」を貫いていたら、お金はどんどん目減りしていきます。僕は「リスクを取らないことこそが、リスク」だと思うんです。何かやりたいことや目標があるなら、思い切ってチャレンジしてみる。たとえ失敗しても、立ち上がって粘り強く取り組んでいく。そうして何かを成し遂げたときの達成感や喜びは何ものにも代え難いですよね。

ほかにも、リスクを取って挑戦するときに支えとなるのは、自分が持っているスキルだと思っています。「将来や老後が不安」という人も、資産形成で備えるだけでなく、常に自身のスキルを磨いていくことが、不安の解消につながるのではないでしょうか。

お話をうかがった方

謎解きクリエイター
RIDDLER(リドラ)株式会社 代表取締役

松丸 亮吾さん (まつまる・りょうご)

1995年千葉県生まれ。東京大学在学中に謎解き制作集団AnotherVisionの2代目代表を務め、「謎解きブーム」の火付け役に。2019年に謎解きクリエイター集団RIDDLER(リドラ)を設立し、代表取締役に就任。「考えることを誰もが好きになれる世界をつくる」を理念に、謎解きの魅力と面白さを、さまざまなメディアやイベントを通じて伝えている。 2023年には「謎解き」の考え方を活かしたひらめき学習プログラム「リドラボ」を開発するなど、教育事業にも注力する。2024年に本格的な謎解きが楽しめる「リドラの謎解きスタジオ 池袋店」を東京・池袋にオープン。著書に『松丸くんが教育界の10人と考える 答えがない時代の新しい子育て』(小学館)、監修に「東大ナゾトレ」シリーズ(扶桑社)、『東大松丸式ナゾトキスクール』『東大松丸式 名探偵コナンナゾトキ探偵団』(いずれも小学館)など多数。

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