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公開:2025.12.23
今回の「家計管理」では、年末年始に挑戦してほしい「資産の棚卸し」について解説します。
皆さんは今年の年末年始をどのようにお過ごしでしょうか? 過ぎゆく1年を振り返り、新たな1年に思いをはせる。そんなこの季節は、家計をチェックするのにも最適なタイミングです。
日頃、特に家計管理をしていないという人も、試しに今年の年末時点の預金残高を昨年の年末の金額と比べてみてください。
例えば手取り年収が300万円の人が「昨年の年末残高より今年は50万円増えていた」という場合、「1年の貯蓄額は50万円で、年間支出は300万円-50万円=250万円」と、ざっくりとした収支をつかむことができます。
家計管理というと、どうしても毎日家計簿をつけて1円単位で管理するというイメージがあるかもしれませんが、こうした大きい視野での家計管理も実はとても大切です。
私はよく、家計を「短期」「中期」「長期」という3つの視点(図表1)でチェック・管理をしていこうと提案しています。このうち誰しもに最初に取り組んでほしいのが、真ん中の「中期」の管理です。
| 期間・頻度 | 目的 | 使用アイテム | |
| 短期 | 毎日、週1回など | 何にいくら使ったか等の「支出管理」 | 家計簿、家計管理アプリなど |
| 中期 | 3カ月~1年に1回 | 資産の棚卸し「資産管理」 | 通帳、取引残高報告書、生命保険や公的年金の関係書類 など |
| 長期 | 数年~5年ごと、人生の節目のときなど | 10年、20年先の「キャッシュフロー管理」 | キャッシュフロー表、家計のバランスシートなど |
出所:風呂内氏への取材を基に日本FP協会作成
「短期」「中期」「長期」の家計管理は、それぞれ期間だけでなく、その目的も異なります。「中期」の家計管理の目的は、資産の棚卸し・資産管理です。
資産の棚卸しというと、広い意味では将来受け取れる公的年金や個人年金、持ち家などの不動産のほか、住宅ローンをはじめとした負債の棚卸しも含まれますが、それは「長期」の管理の足がかりにもなっていきます。
「中期」の管理としては、少なくとも1年に1回、すべての口座残高をチェックし、その時点の資産額を確認してみることから始めましょう。その結果、「年間の収支が黒字であり、順調に貯蓄ができていて特に問題はなさそう」という人は、収入と支出のバランスがとれている状態ですから、このまま中期の家計管理を続けていけばOKです。
一方で、「年間の収支を確認したら赤字になっていた」というケースや、「想定したよりも貯蓄ができていなかった」という人は、中期の管理だけでは不十分です。家計簿をはじめとした「短期」の家計管理をして支出を引き締めていく必要があります。
また「収支は黒字だったけれど、将来もこのままでいいのか不安……」という人は、ライフプランをもとに長期の家計収支を考える「長期」の管理に挑戦してほしいと思います。 毎年「長期」のチェックをする必要はありませんが、数年から5年に1回程度、あるいは結婚・出産、就職・転職・退職、転居、子どもの進学といった人生の節目のときには、キャッシュフロー表等で家計管理を確認してみるのがおすすめです。
「中期」の家計管理で具体的にすることは、年に1回など決まったスパンで締め日を設定し、その時点の金融資産を棚卸しして収支をチェックすることです。締め日はいつでもかまいません。12月31日、1月1日など、わかりやすい日付でもいいですし、年度末や給料日がわかりやすい人はそれでもいいでしょう。
ここで必ずチェックしてほしいのは、銀行口座・証券口座の残高です。複数の銀行口座を持っている人は、すべての口座の残高を確認します。図表2のようにノートや表計算ソフト等で「残高チェックシート」を作って管理すると、前年との比較がしやすいうえ、数年にわたる変化や傾向もつかみやすくなります。貯蓄性のある保険に加入している人は、その時点の解約返戻金を資産に加えてもいいでしょう。
| 金融機関名 | 2023年末 | 2024年末 | 2025年末 | 2026年末 |
| A銀行(給与振込口座) | 61万円 | 53万円 | 47万円 | … |
| B銀行(貯蓄用) | 280万円 | 352万円 | 396万円 | … |
| Cネットバンク(決済用) | 33万円 | 28万円 | 29万円 | … |
| D証券(資産運用) | 101万円 | 127万円 | 134万円 | … |
| 合計 | 475万円 | 560万円 | 606万円 | … |
| 前年比の増減 | - | 85万円 | 46万円 | … |
出所:風呂内氏への取材を基に日本FP協会作成
すべての口座残高の合計を確認して、もし想定したペースで貯蓄が増えていなかったときは、その年のお金の使い方を振り返ってみてください。家族が急に入院して一時的に費用を立て替えた、子どもが結婚してまとまった資金援助をした、など、突発的かつ一時的な出費であれば、それほど心配はいりません。
一方、特別にアクシデントもないのに貯蓄が大きく減っていたというときは、要注意です。「短期」の管理に目を向けて、支出をコントロールしていきましょう(「短期」の家計管理の方法は次回のコラムで解説します)。
「中期」の管理でしてほしいことの2つ目は、家計のお金がどこから入ってどこに出ていくか、という“お金の交通整理”です。
例えば保有している金融機関の口座が多すぎると、お金の出入りが複雑になり、どうしても収支がわかりにくくなります。
基本的には、①給与の振込口座兼公共料金の引き落としなど日常使いの口座、②毎月定額を貯める貯蓄用の口座、③資産を増やすための証券口座、この3種類程度に口座を集約しておくと管理がしやすいでしょう。
同様に、多すぎるクレジットカードも要注意です。多種類のカードで買い物をしていると、支出の全貌がつかみにくくなりますし、引き落とし日がバラバラだと家計管理も難しくなります。また、貯まったポイントの使用期限が迫っているからといった理由で、それほど必要でもない買い物をするなど、消費・浪費を増やしてしまうおそれもあります。
昨今のクレジットカードのポイント還元率や各種サービスを見ると、カード使用額・サービス利用の多い人ほど、より優遇される仕組みになっています。あえてカードを分けてもメリットが増える訳ではありませんから、メインで使うカードは1枚に絞ってもいいと思います。
そのほか、「海外旅行のために、国際カードブランドをVisaとMastercardで分けて持ちたい」「毎年帰省のときの新幹線代は、このカードを使うと大幅に得」など、特定の目的があるときにはサブカードを活用する、というくらいが理想です。
「中期」の管理でしてほしいことの3つ目として、固定費の見直しもあります。
毎月一定の金額が出ていく固定費には住居費、通信費、保険料などがありますが、最近特に注意したいのがサブスクリプション・サービスの料金です。
「お試しで1カ月無料」でサービスを使い始め、使わなくなったのに解約するのを忘れて定額を払い続けていた、あるいは1回だけ使用のつもりがサブスク契約になっていた、などのケースも珍しくないようです。3カ月から1年に1回はサブスクの棚卸しをして、ほとんど使っていないものがあれば解約をしましょう。解約予定日をカレンダーにメモしておくのが、おすすめです。
また固定費の「支払い方法」を見直す、というのも有効です。例えば、民間の生命保険は月払いを年払いにすることで、商品によって3%などの割引が受けられます。火災保険も1年でなく5年分などをまとめて払うと保険料が割安になります。
ほかにもNHK受信料(地上契約)は2カ月払いで2,200円ですが、年払いにすると1万2,276円となり、924円分※1割安になります。国民年金保険料は口座振替で2年分を前納すると、2年で1万7,010円※2が得になります。平均月2万円の水道光熱費を銀行口座引き落としで払っていた人が、還元率1%のクレジットカード払いに変えると、年間2,400円分のポイントを得られます。
年末年始などに年1回、「中期」管理で資産と家計の棚卸しをして見直しをすると、「何もしなくてもお金がスムーズに流れ、何もしなくても自動的にお金が貯まる」、強い家計を作っていけるようになります。
(取材:日本FP協会 編集出版部)
※1:2025年11月時点、※2:2025年度時点
| 第1回 | 年末年始は「資産の棚卸し」のチャンス! |
|---|---|
| 第2回 | 公開をお楽しみに! |
| 第3回 | 公開をお楽しみに! |
| 第4回 | 公開をお楽しみに! |
| 第5回 | 公開をお楽しみに! |
| 第6回 | 公開をお楽しみに! |
CFP®認定者
風呂内 亜矢 氏
独身時代にマンションを衝動買いしたことをきっかけに貯蓄、資産運用をスタート。現在は株式、投資信託などでの運用のほか、夫婦で複数のマンションを保有し賃料収入も得ている。テレビ、新聞、雑誌での解説のほか、『マンガでカンタン!NISA・iDeCoは7日間でわかります。』(Gakken)などお金に関する著書・監修書は約30冊。YouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」では、日常の記録に交えてお金にまつわるTipsを発信している。
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