公開:2026.01.29

【税制改正】改正で注意したい2025年分の確定申告(備 順子氏)

チャット風吹き出し最終決定版(中央寄せ修正版)

ベテランFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。

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備 順子氏

「税制改正」の2回目は、2025(令和7) 年分の確定申告で、税制改正に伴い特に注意すべき人と、留意すべきポイントについて紹介します。

2025(令和7)年の税制改正は、個人事業主等にも影響は大きい

所得税に係る2025年の税制改正については、給与所得者は勤め先の年末調整で反映されます。しかし、個人事業主やフリーランス、年金受給者などは確定申告によって改正後の税制が適用されることになります。改正内容を確認し、当てはまる項目はしっかり申告することで税負担の軽減を図りたいものです。

2025年の税制改正の柱は第1回の記事で取り上げましたが、次の3つは個人事業主等にも影響します(以下、詳細は第1回参照)。

1)基礎控除額の引き上げ

改正により2025年の所得税は、基礎控除が合計所得金額に応じて10万~47万円の引き上げになりました。改正前は合計所得金額が2,400万円以下の場合、基礎控除額は一律48万円だったので、改正によって多くの人は税負担が軽くなります。

改正前は所得税のかからないパート・アルバイトの「年収の壁」は103万円でしたが、給与所得控除と基礎控除の引き上げの改正により、年収160万円までは所得税はかかりません。160万円以下のパート・アルバイト収入で、年末調整を受けられずに源泉徴収されたままの場合(日雇いやスキマバイトなど)は、確定申告をすれば税金の還付を受けられます。

2)扶養親族の所得要件の引き上げ

扶養控除の対象となる生計一親族の合計所得金額は、改正前は48万円以下でしたが、2025年は58万円以下となり10万円引き上げられました。パート・アルバイト収入なら123万円以下で扶養控除等の対象となります。

3)特定親族特別控除の創設

19歳以上23歳未満の大学生年代の扶養親族(合計所得金額58万円以下)がいる場合、特定扶養控除として63万円の所得控除が受けられます。改正前は扶養の対象から外れると63万円の控除がいきなりゼロとなっていました。しかし、2025年から特定親族特別控除の創設により、扶養の範囲を超えていたとしても合計所得金額85万円(給与収入150万円)までは、その親などは特定扶養控除と同額の63万円の控除が受けられます。合計所得金額が85万円を超えた場合でも、123万円(給与収入188万円)までは控除額が段階的に逓減する仕組みとなっています。

以上の3つの改正点を踏まえて、2025年分の確定申告で特に例年と異なる取り扱いや手続きの注意点について説明します。

公的年金受給者の中に申告不要のままでは損をする人も!

公的年金収入が年400万円以下で、公的年金以外の所得が年20万円以下であれば、確定申告は不要とされています。
ところが、2025年分については確定申告をしないと、所得税を多く源泉徴収されたままになってしまう人が発生します。給与所得者は年末調整で改正を織り込んで精算されますが、公的年金については年末調整のシステムがないからです。

公的年金は年6回に分割して支払われますが、支払いの都度、所得税の源泉徴収が行われています。前年に本人から提出された「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に基づいて、配偶者や扶養親族のことを織り込み、さらに国民健康保険料や介護保険料などの年金天引きの社会保険料も考慮したうえで、ほぼ適切な額となるように計算した所得税額を、6回の年金から分割徴収します。

ですから、通常は確定申告しなくてもよいのですが、2025年分については税制改正の影響で確定申告しなければ損をしてしまう人が発生します。

年金受給者は2025年12月分の年金が支払われる際に改正後の基礎控除を踏まえて、源泉徴収税額の精算が行われますが、12月の精算時の基礎控除は「88万円」で計算されます。そのため、基礎控除が95万円の人は12月の精算では完全に控除されず、源泉徴収が過大となっている可能性があります。年金収入金額が198万円超242万円以下 (65歳未満の場合は年金収入154万円1円超~約213万円) の人が過大に徴収されたままとなっている可能性がありますので、確定申告の要否を確認しましょう。

また、扶養親族の所得要件の引き上げで新たに扶養控除の対象となる親族や、特定親族特別控除の対象となる親族がいる場合は、12月の源泉徴収では精算されないので、確定申告で還付申告をする必要があります。生計一親族の合計所得金額を再確認して、確定申告をすべきかどうかを判断しましょう。

2025年中に退職した人は源泉徴収税額の還付の可能性が大!

年の中途で退職した人については、給与所得に係る源泉徴収税額が過大であることが多いため、確定申告をすればほとんどの場合で還付となります。
特に2025年については11月末まで、基礎控除の引き上げ等の改正が源泉徴収税額に反映されていなかったため、確定申告をすれば還付の金額も多くなるものと期待できます。

また、2025年中に死亡した給与所得者や海外赴任等で非居住者となった人も、死亡時や出国時に改正前の税制のまま年末調整を受けているので、確定申告をすれば還付されるでしょう。なお、死亡または非居住者となったために2025年11月末までに「準確定申告」を提出していた場合は、2025年12月1日~2030年12月2日(月)まで、更正の請求書を提出することができます。

マイナンバーカードの2025年問題、有効期限切れで思わぬ損も

マイナンバーカードには2つの有効期限があります。マイナンバーカード自体の有効期限はカード発行から10回目の誕生日まで(18歳以上)、電子証明書の有効期限は電子証明書の発行から5回目の誕生日までです。

5年ほど前、政府はマイナンバーカードの普及を図るため、マイナンバーカードを作るとポイントがつくキャンペーンを実施したので、2025年には電子証明書の有効期限が切れてしまう人が続出しました。電子証明書の有効期限が切れた場合、e-Taxによる申告ができません。個人事業主がe-Taxで申告ができないと、青色申告特別控除の65万円が使えず、55万円の控除しかできないことになりかねません。所得税だけでなく、住民税にも影響しますので有効期限切れには要注意です。

特に2月16日以降の確定申告の時期は、市区町村の更新窓口が混み合うことが予想されます。マイナンバーカードの交付申請から交付通知書が届くまで1カ月~1カ月半ほどかかり、その交付通知書が届いてから市区町村窓口に行かねばなりません。市区町村によっては更新手続きについて2週間先からしか予約が取れないこともあるため、早めに申請手続き等を進めておきましょう。

その他、今回の確定申告で注目したいこと

1) 自動車通勤手当の所得税非課税限度額の引き上げ

交通機関やマイカー等で通勤している給与所得者は、勤め先から通勤手当の支給を受けても一定の金額までは非課税です。交通機関の場合は実費相当額(最高月額15万円)が非課税です。マイカー等通勤の場合は、片道の通勤距離に応じて月額で最大3万1,600円まで非課税でしたが、物価高による個人負担の増加に配慮して、非課税限度額は最大3万8,700円に引き上げられました。2025年4月分以後にさかのぼって適用されるので、限度額を超えて支給を受けたために課税対象となっていた部分の金額がある場合、年末調整で精算されています。

ただし、この改正は2025年11月20日からの施行なので、2025年中に退職した人は、退職した元の勤め先から源泉徴収票の「再交付」を受けて、本人が確定申告する必要があります。再交付の源泉徴収票では、給与の支払金額が訂正され、摘要欄に「再交付」と記載されます。

2) 雑損控除の対象となる資産の所有者の範囲の拡大

雑損控除は、災害・盗難・横領によって資産に損害を受けた場合等に適用を受けられる所得控除です。被災等した「資産」の持ち主の範囲は、扶養親族の所得要件の引き上げの改正により広がりました。

雑損控除の対象になる資産の所有者は納税者本人か、納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、総所得金額等が58万円以下(改正前までは48万円以下)であれば、納税者の雑損控除の対象となります。これらの所有者の居住用不動産や生活用動産(家財、衣類、現金等)が被害を受けた場合に申告できます。例えば、年収123万円のパートの妻の現金が盗難に遭ってしまったなどの場合、夫の雑損控除の対象となります。

3) 内職的な働き方をする人の必要経費の特例の引き上げ

家内労働者(内職・外交員・集金人・電力検針人など特定の者に継続的に人的役務の提供をする人※)の所得は、事業所得か雑所得です。

この場合の所得の計算は、収入金額から実際の経費を差し引いて求めます。ただし、これらの働き方は、与えられた道具と材料で労働力(役務)を提供し対価を受け取るというもので、仕入れなどの支出はほとんどなく、収入金額がほぼ所得金額となるケースも少なくありません。実態は給与所得者と類似した働き方といえるので、家内労働者等の特例として、最大65万円(改正前は55万円)を必要経費とすることができます。

例えば、家内労働者の収入が160万円以下であれば、その本人に所得税はかかりません(収入160万円-必要経費の特例65万円-基礎控除95万円=0円)から、所得税の申告は不要となります(住民税は申告が必要)。また生計一の親族が家内労働者である場合には、その収入が123万円以下であれば、扶養控除の対象(収入123万円-65万円=58万円≦58万円)となります。

※家内労働者の必要経費の特例が受けられる働き方には、次のようなものがあります。(一例) シルバー人材センターからの分配金、電力・ガス等検針員、生命保険の外交員報酬、データ入力、ピアノ教室教師・学習塾教師、食品配達員など(業務形態によって適用の可否が異なります)

次回の【税制改正】分野は、2026年度税制改正大綱より「速報」をお伝えします。
アコーディオン目次
【税制改正】 第1回~第6回はコチラ (備 順子氏)
第1回2025年の改正点を源泉徴収票で確認しよう
第2回改正で注意したい2025年分の確定申告
第3回公開をお楽しみに!
第4回公開をお楽しみに!
第5回公開をお楽しみに!
第6回公開をお楽しみに!

お話を伺った方

税理士(近畿税理士会所属)、CFP®認定者、備順子税理士事務所 代表税理士

備 順子 氏

公認会計士事務所に19年勤務した後、2009年に独立開業。税理士業務のほか、FP受験生向けの養成講座やテキスト制作、FP資格者向けの継続研修のセミナー講師などを務めている。

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