公開:2026.06.01

ESR(経済価値ベースのソルベンシー比率)<リスクと保険>

CFP®資格審査試験の過去問題に登場した重要ワードをピックアップして解説します。
今月は「リスクと保険」分野から、「ESR(経済価値ベースのソルベンシー比率)」を取り上げます。

ESR(経済価値ベースのソルベンシー比率)

 2026(令和8)年3月、保険会社の健全性を測る新たな指標としてESR(Economic Solvency Ratio:経済価値ベースのソルベンシー比率)が、従来のSMR(Solvency Margin Ratio:ソルベンシー・マージン比率)に代わって採用されました。
SMRは、算出が比較的簡単で、消費者等にも広く認知されてきたのに、なぜ新たな指標が採用されることになったのでしょうか。

 従来のSMRでは、基本的には保有資産は時価評価ですが、保険金等の支払原資となる責任準備金に対応する部分は、原価(簿価)評価となっていました。

 金利が上昇する局面では、時価ベースでは差損が発生しますが、原価(簿価)評価では差損は発生せず、含み損となりますが、SMRへの影響は限定的です。このため、保険会社の資産運用のチェックが甘くなる恐れがあります。
2003年の金利上昇時、一部の生命保険会社では保有債券の評価損が大きく問題視されましたが、SMR比率は高い水準を維持しており、その実態が大きく報道されることもありませんでした。

 また、SMR導入以後に、中堅生保8社が破綻しており、その信頼性に疑問が呈されています。直近でも、ゼロ金利政策の解除で金利のある世界となり、生命保険会社の保有する債券に対する巨額な評価損を懸念する報道がありました。これらを踏まえて、より実態に合ったリスク管理を行おうと、ESRが採用されることになりました。

 ESRでは、すべてを時価評価するとともに、毎決算時点での最新の金利、死亡率などのデータを反映し、より実態に即したリスク評価を行います。これは、リスク管理の厳格化を求める国際的な潮流にも合致しています。
なお、少額短期保険については、ESRの導入が見送られ、従来どおりSMRによる規制が継続されます。

 ESRは導入されたばかりで、実務面・運用面での詳細は今後公表されていきます。今後の発表には注視しておきましょう。

図表■保険会社に対する早期是正措置

ESR
(経済価値ベースのソルベンシー・マージン比率)
SMR
(ソルベンシー・マージン比率)
対象保険会社少額短期保険業者
非対象区分水準:100%以上水準:100%以上(200%以上)
第一
区分
水準:100-70%
・改善計画の提出およびその実行の命令
➢監督指針上は原則1年以内に100%以上に
回復すべき旨を規定
水準:100-50%(200‐100%)
・改善計画の提出およびその実行の命令
➢監督指針上は原則1年以内に100%以上に回復すべき旨を規定
第二
区分
水準:70-35%
・保険金等の支払い能力の充実に資する各種措置に係る命令
➢監督指針上は原則6ヵ月以内に70%以上に回復すべき旨を規定
水準:50-0%(100‐0%)
・保険金等の支払い能力の充実に資する各種措置に係る命令
➢監督指針上は原則1年以内に50%以上に回復すべき旨を規定
第三
区分
水準:35%未満
・期限を付した業務の全部また一部停止命令
➢監督指針上は原則3ヵ月以内に35%以上に回復すべき旨を規定
水準:0%未満
・期限を付した業務の全部また一部停止命令
(※)
ソルベンシー・マージン比率は、支払余力(マージン)を、通常の予測を超える危険(リスク)に2分の1をかけたもので割ることで算出される。
ESRの算出にあたっては、分母のリスクに2分の1をかけることはしない。
このため、ESRとソルベンシー・マージン比率を共通の尺度での比較を可能にする観点から、括弧内にて、ソルベンシー・マージン比率における数値を記載。

出所:金融庁「経済価値ベースのソルベンシー規制の概要」(2025年7月23日)を基に一部修正

解説:嶋田 雅嗣氏(CFP®認定者)

本記事は執筆時点の情報に基づいており、最新の情報と異なる場合があります。

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