公開:2026.02.16

【106万円の壁】短時間労働者の働き方はどう変わる?

短時間労働者の社会保険(厚生年金・健康保険)加入をめぐるルールが、2026年に大きな転換期を迎えます。

これまで多くのパートタイム労働者が働き方を調整する原因となっていた、いわゆる「106万円の壁(企業規模の要件により、健康保険・厚生年金保険への加入義務が発生)」が、2026年10月をめどに解消される見込みとなりました。短時間労働者の賃金要件(月額8.8万円以上)が撤廃されることにより、社会保険加入の拡大が予想されます。

「106万円の壁」が解消された場合、給与の額に関係なく、労働時間などの条件を満たせば社会保険に加入することになるため、「月収8.8万円未満に抑えれば扶養内でいられる」という考え方はなくなります。

また、働く企業の規模(従業員数)による要件も段階的に縮小・撤廃されることが決定しています。これまでは「従業員51人以上の企業」が対象でしたが、2027年10月からは36人以上、2029年10月には21人以上と対象が広がり、最終的には企業規模に関わらず適用される方針となります。

さらに、これまでは対象外となることが多かった個人事業所についても、2029年10月以降は「常時5人以上の者を使用する全業種の事業所」へと適用範囲が拡大される予定です。法律や税務など一部の業種に限られていたルールが見直され、働く場所による格差が解消されることが期待されます。

ここでクイズ

今回の改正により、今後は給与の額ではなく、短時間労働者が「週何時間以上」働くかが社会保険加入の分かれ目になります。社会保険に加入する時間数は「週何時間以上」でしょうか?

A. ①週20時間以上

解説

制度改正後、短時間労働者が社会保険に加入する労働時間数は、企業の規模や賃金の額にかかわらず、「週20時間以上」となります。

なお、「週20時間」は、原則として「所定労働時間(契約上の時間)」で判断されます。忙しい時期に一時的に残業をして週20時間を超えたとしても、契約変更がない限り直ちに加入義務が発生するわけではありません。

「社会保険に加入すると手取りが減る」とネガティブに捉える見方もありますが、加入には大きなメリットもあります。まず、将来受け取る「基礎年金」に給料に応じた「厚生年金」が上乗せされるため、受給可能な年金額が増えます。

厚生労働省の年金の増額例を参考にすると、例えば月収10万円(年間給与120万円)で厚生年金に25年加入した場合、年金を65歳~80歳まで受給すると、加入しなかった場合に比べて累計220万円もの増額となり、長い老後を支える大きな力となります。 また、病気やケガで働けなくなったときに給与の約3分の2が支給される「傷病手当金」や、産休中の「出産手当金」など、健康保険のメリットも見逃せません。万が一のリスクに備える保険としての機能は、国民健康保険と比べて、かなり手厚いと言えるでしょう。

【図表】厚生年金・健康保険加入のメリット(試算)

※金額は概算であり、実際の加入実績や標準報酬月額により異なります。
出所:厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト」及び「社会保険加入のメリット」、全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」を基に日本FP協会作成

これまでは「年収106万円」を超えないようにシフトを調整していた方も、新制度以降は「週20時間」という時間が基準となります。働き損を気にして労働時間を抑えるよりも、社会保険に加入して「手取りの減少」以上に「将来の安心と現在の保障」を手に入れるという選択が、より現実的になってくるでしょう。

厚生労働省の「社会保険適用拡大特設サイト」などでは、条件に合わせた保険料や年金受給額のシミュレーションも可能です。制度改正実施に向けて、ご自身やご家族の働き方を一度シミュレーションしてみてはいかがでしょうか。

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