公開:2025.09.22

「認知」の土台には何があるのか?【トレンド+plus】

最新の経済情報や日々のくらしに役立つ情報をお届けしている「FPトレンドウォッチ」。
「トレンド+plus」では、さらに一歩踏み込んだ情報をお届けします!

「講義型」の授業やセミナーでは、複数人が一斉に同じ情報を同じ環境で受け取ります。しかし、同じものを同じ条件で与えられても、その理解度は人によって異なります。

同じ情報を与えられたとしても、自分の知識の多寡で、容易に受け止められたり、受け止めが難しかったりするのです。

では、なぜそのような差が生じるのでしょうか。

それは、人によって情報の「受け皿に違いがある」からでしょう。情報→知識に変換されるのは、そこに理解の文脈があるからです。

情報の受け皿となる「スキーマ」

では、その文脈を作る受け皿とは何でしょうか。認知心理学の言葉ではスキーマ(Schema)と呼ばれています。知識の土台になる枠組みのことです。

人間が見聞きしたとき、脳内にすでに知識ネットワークがあって、情報がそこに落ちてくると、次々に所定の場所に整理整頓されます。整理整頓が簡単にできると、その情報を学ぶことを苦痛とは感じないはずです。

事前に予習してきた人は、新しく目にした情報でもすぐに解釈して、自分の脳内の知識ネットワークの所定の場所にその解釈を配置できます。

「土地勘」と同じように、よく知っている場所ならば、迷子にならずに目的地に歩いていけるのです。学習課程とは、その知識ネットワークを積み上げて、グレードアップする作業だと考えられます。

視認できないものをどのように知覚するのか

この概念を考えた認知心理学者ジャン・ピアジェは、幼児の認知に発展段階があると述べています。

おそらく、幼児ではなく大人にも何段階もの発展段階があるのでしょう。小学校の算数、中学・高校の数学、大学・大学院の数学は、求められる思考空間の大きさも質も違うでしょう。高次の段階になるにつれ、目に見えない抽象概念の思考になる傾向があります。また、重力や加速度、気候変動の原理なども、直接的に目に見えません。視認できないものは、頭の中に抽象概念を扱うスキーマができていないとその実存を知覚できません。

FPが提供している知識の多くは、目に見えない価値だと考えられます。ライフプランを考えながら将来に備えるとか、若い頃から金融知識を蓄えておくなどは、経験的な知識ですが、もう一方で普遍的により良く生きていくための知恵でもあります。

目には見えないけれども重要な情報を、顧客にわかりやすく伝えられるよう、自分自身のスキーマの拡張に日々努めていく…これもFPとしてのスキルアップに必要なのかもしれません。

記事の内容は、取材先や執筆者等の見解を示したものであり、日本FP協会の意見・方針等を示すものではありません。

ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • いいね数
  • コメント数