公開:2025.10.31

最低賃金が過去最高の1,121円に。その影響は?

2025年度の地域別最低賃金は10月より順次適用が始まりました。今年度の最低賃金の平均額は1,121円で、昨年度より66円引き上げられました。この引き上げ額は1978年度に最低賃金改正の目安制度が始まって以来、最高額となります。

図表 2025年度の各都道府県の最低賃金

出所:厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金答申状況」を基に日本FP協会作成

厚生労働大臣の諮問(しもん)機関である中央最低賃金審議会は、引き上げ額の目安を全国平均で63円と示していました。しかし、長引く物価高や深刻さを極める人手不足などの課題を背景に、39道府県がその目安を上回りました。

今回の改定により、全都道府県の最低賃金が1,000円を超えました。政府は2020年代に全国平均1,500円を目指すという方針を掲げており、その達成に向けて引き上げ額や引き上げ率は年々上昇しています。

しかし、賃上げ傾向が続くことで地域の中小企業や小規模事業者に大きな負担がかかることが予想されます。今年度の賃上げ交渉においても、労使間の交渉が難航する地域が相次ぎました。各企業に十分な準備期間を設けるため、最低賃金の適用を来年に延ばす県も出ています。

そこで政府は、賃上げで影響を受ける中小企業や小規模事業者を対象に、補助金や助成金などの支援策を強化する方針を打ち出しました。具体的には、事業場内最低賃金の引き上げや生産性向上に資する設備投資を行った場合に受けられる「業務改善助成金」の対象拡大、「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「省力化投資補助金(一般型)」の要件緩和などが行われます。

継続的な賃上げには、各企業が生産性向上や付加価値向上に努めるだけでなく、政府や各都道府県の後押しも重要だと言えるでしょう。

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