公開:2025.08.22

中央銀行の「タカ派」「ハト派」って何?【トレンド+plus】

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景気と物価の間には、「景気が良くなると物価が上がる」、「景気が悪くなると物価は下がる」という関係性があります。こちらを立てれば、そちらが立たずという関係です。この関係性をトレードオフと呼びます。

過去の日本銀行総裁が、景気と物価のどちらを重視しているかは、人によって多少異なっているように思われます。そのタイプは「物価上昇を犠牲にしてでも景気を拡大しようとする」人物と、「景気を多少は犠牲にしても物価上昇を抑えようとする」人物の2つに色分けすることができます。

前者をハト派=景気重視派、後者をタカ派=物価安定重視派と呼びます。これは米国から来た言葉で、平和的に金融緩和を続けようとするのがハト、強硬に利上げを進めようとするのがタカになぞらえられていると言われています。

「物価を何とか下げてほしい」という世論が高まった際には、中央銀行が利上げをして、為替レートを自国通貨高に向かわせる代わりに、ある程度の景気悪化を我慢しなくてはいけません。トレードオフの関係での間で、微妙な政策判断を求められるということです。

今の日本は、消費者物価上昇率が3%台で推移しており、「物価が高くて生活が苦しい」という声もあります。2022年4月以降、ずっと物価目標の2%を超えていますから、物価上昇が過剰に進んでいるという見方もあります。このような現状を受け、日銀は遠くない将来に利上げを再開して、為替レートを円高にすることを通じて、輸入物価の下落=物価抑制に動くという予想があります。

世界中でこの「ハト派vsタカ派」の関係が一番の頭痛のタネになりそうなのは米国です。 トランプ大統領は、極めてハト派の人物といわれています。

現在、トランプ関税が自国の物価上昇の要因になることを警戒する、米国の中央銀行のFRB(連邦準備制度理事会)に対し、トランプ大統領は利下げを求め続けています。FRB現議長が2026年5月の任期を迎えた際や、その前に辞任することがあれば、トランプ大統領と同じ「ハト派」にFRBが傾くだろうという見方があります。

ハト派は物価上昇を犠牲にしてでも景気を拡大しようとするタイプですので、FRBがハト派に傾いた場合、米国のインフレ・リスクは加速します。これが将来、米国経済を混乱させる火種になり、後々でFRBが大幅に利上げに動かざるを得なくなるリスクが生じる可能性があるのではないかという見方もあります。そのようなことが起きれば、日本には、急激な円高など、為替相場が荒れてしまう弊害が及ぶかもしれません。

各国の金融政策を決めるキーパーソンが「ハト派」なのか「タカ派」なのかを見極めることで、今後の流れを読む助けになるかもしれません。

記事の内容は、取材先や執筆者等の見解を示したものであり、日本FP協会の意見・方針等を示すものではありません。

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