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2026.01.20
【社会保障】公的年金とiDeCoで最強の自分年金を作る(井戸美枝氏)
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公開:2026.01.13
今回の「経済動向」は、2026年の日本経済の展望について解説します。
2025年の日本経済は、トランプ関税の影響などで厳しい状況にありました。ですが、2026年は年後半以降、回復に向かうでしょう。この背景には米国を中心とする世界経済の回復に加えて、日本国内で高市早苗政権による経済対策が実施されることがあります。
米国の経済動向については第1回でも解説しましたが、2026年11月に行われる米国連邦議会の上下両院を改選する中間選挙に向けて景気を引き上げ、トランプ政権への支持を高めようとするでしょう。突発的な金融システム不安などが起きない限り、2026年の米国経済は2025年よりはよくなり、日本にもよい影響を与えると考えられます。
日本独自の好材料もあります。その一つが冒頭で触れた経済対策です。今回の経済対策は、“真水”と呼ばれる国費などの規模が21.3兆円程度(一般会計の歳出17.7兆円程度、減税2.7兆円程度、特別会計0.8兆円程度)にのぼるものです。その第1の柱に物価高への対応が掲げられています(図表1)。
家計への直接的な影響が大きな対策としては、ガソリン暫定税率の廃止や電気・ガス代支援、重点支援地方交付金の拡充、物価高対応子育て応援手当などがあります(図表2)。かなり規模の大きな対策ですから、家計にとってプラスに作用し、個人消費が上向くことにつながるでしょう。
景気が上向く要因は、それだけではありません。足元では国内の個人消費が上向き始めています。これはデフレマインドが解消しつつあるためではないかと考えられます。
日本では20年以上にわたってデフレが続いてきた影響で、物価が上がっているにもかかわらず、消費者にはデフレマインドが残ったままでした。私はこの状況を「新型インフレ」と呼んでいます。
教科書的にいえば、インフレが起きると消費が刺激されて景気が拡大し、賃金も上がるはずです。企業の生産コストが上がったために、モノやサービスの価格が上がる「コストプッシュ型」がインフレのきっかけであったとしても、消費者の需要が喚起されれば、需要の増加によって物価が上昇する「デマンドプル型」のインフレの要素も出現して、経済全体が回り始めます。
しかし、日本では消費者のデフレマインドが続いていたために、物価が上がっているにも関わらず節約志向が強く、消費が活性化しませんでした。
ここへきて、ようやくその状況が変わりつつあります。物価上昇が続いたことによって、消費者の間に「物の値段がどんどん高くなってしまうから、買わずに我慢していないで、欲しいときに買おう」というマインドが少しずつ浸透してきている可能性があります。
例えば、内閣府の「消費動向調査」(2025年10月実施分)では、消費者態度指数が3カ月連続で上昇しており、「10月の消費マインドは、持ち直している」とされています(図表3)。
後述する図表4のように、さまざまなアンケートなどにもそれが表れているようです。日本の消費者に長らく定着していたデフレマインドは、ようやく解消されつつあるといえるでしょう。
この連載の第1回でもお伝えしましたが、日本銀行が10月31日に公表した「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、「来年度前半にかけて、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと考えられる」としています。
エコノミストの予想を取りまとめたコンセンサス調査でも同様の見方がされています。また、内閣府が実施した物価の見通しに関するアンケート調査の結果は図表4のとおりです。
2026年の春闘での賃上げ率が、2025年の5.26%より若干低い程度になるとすれば、2026年度は実質賃金がプラスになる可能性があります。前述の経済対策では賃上げに取り組む中小・小規模事業者に向けた支援策も示されました。実質賃金がプラスになり、より多くの消費者が賃金の上昇を実感できれば、消費の活性化につながると思います。
経済対策の第1の柱(家計向け支援:前掲・図表2)も家計にプラスの作用を及ぼすことが予測されます。消費マインドが改善することによって、個人消費のあり方も変わる可能性があります。
個人消費が活発になれば、企業の売り上げが伸びて利益が増加し、設備投資の増加や従業員の賃金上昇につながり、消費をさらに拡大するという好循環が生まれるでしょう。2026年度はこの好循環が景気を後押しすると考えています。
個人消費が活発になり、企業業績が好転し、実質賃金が上昇して、消費がさらに拡大するという好循環は企業業績にもプラスです。企業業績がよくなれば、日本株の上昇につながります。2026年度については、日経平均株価は4万5,000円~5万5,000円のレンジでの推移を予想しています。
なお、日本株の代表的な指標である日経平均株価は、半導体関連銘柄が占めるウエートが大きいため、その動向が株価に影響する傾向があります。
半導体業界全体の動向を表す経済指標としては、SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数〈PHLX Semiconductor Sector Index〉)がよく知られています。これは米国の証券取引所に上場する半導体関連企業主要30社の株式で構成されています。
第1回でも触れましたが、私はSOX指数に加えて日本、台湾、韓国の半導体の出荷・在庫バランスにも注目しています(図表5)。半導体産業の在庫調整の状況を示す経済指標の1つで、「出荷の前年同月比増減」から「在庫の前年同月比増減」を差し引いて計算されます。
半導体サイクルを把握するのに役立ち、株価や景気の先行指標であるともされます。中でも重要なのが、世界の半導体の3分の2を出荷する台湾の半導体の出荷・在庫バランスの動向です。この指標が上向いているときには半導体サイクルは好調、下向きのときには不調と判断されます。
インフレが落ち着きを見せていることもあり、日本銀行による利上げは2025年度中に1回行われるものの、それ以降は2026年度中に1回あるかどうかではないかと考えています。1回の利上げ幅が0.25%だとすれば、政策金利は0.75%から1%という見通しです。
景気を刺激もせず、抑制もしない中立的な政策金利の水準のことを「中立金利」と呼びます。政策金利が中立金利よりも高ければ金融引き締め、政策金利が中立金利よりも低ければ金融緩和と判断されます。日本の中立金利は1%程度と考えられるため、政策金利が0.5%である今の状況は、利上げの方向にはあるものの、金融緩和的な環境だといえるでしょう。
11月21日に米国でニューヨーク連邦準備銀行のウィリアムズ総裁が「近々利下げされる」という発言をしたことによって、利下げ期待が急速に高まりました。米国で利下げが行われ、日本で利上げが行われたなら、為替相場(ドル円相場)は円高ドル安に動くでしょう。
2026年度のドル円レートは1ドル=140円~160円のレンジで推移すると予想しています。ただし、2026年度の米国がリセッション(景気後退局面)に近い状況になった場合には、さらなる円高の可能性もありえます。
| 第1回 | 2026年の世界経済を知る重要ポイントを解説 |
|---|---|
| 第2回 | 2026年度の日本経済は個人消費が上向き、景気も回復に向かう |
| 第3回 | 公開をお楽しみに! |
| 第4回 | 公開をお楽しみに! |
| 第5回 | 公開をお楽しみに! |
| 第6回 | 公開をお楽しみに! |
第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト
永濱 利廣 氏
早稲田大学理工学部工業経営学科卒業、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社、日本経済研究センターを経て、2016年より現職。内閣府経済財政諮問会議民間議員、景気循環学会常務理事、衆議院調査局内閣調査室客員調査員、跡見学園女子大学非常勤講師。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。景気循環学会中原奨励賞(2015年)。
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