公開:2025.11.20

更新:2025.11.28

【住まい】老後の住み替え資金、どう確保する?リバースモーゲージ活用法と相続時の注意点(有田美津子氏)

チャット風吹き出し最終決定版(中央寄せ修正版)

ベテランFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。

有田美津子氏

「住まい」第6回目(最終回)は、シニア世代の「住み替え」をテーマに、資金確保のための多様な選択肢と、その1つであるリバースモーゲージの活用法、そして将来を見据えた注意点について、有田美津子氏に解説していただきます。

シニア世代の住み替えと資金調達の選択肢

日々ご相談をお受けする中で、「子どもが独立し、夫婦2人には家が広すぎる」「庭の手入れや家の管理が負担になってきた」といった、シニア世代の住まいに関するお悩みをお聞きする機会が非常に増えています。人生100年時代といわれる現代、セカンドライフをより快適で安心なものにするため、ライフステージに合わせた住み替えを検討するのは自然な流れといえるでしょう。

住み替えのための資金調達の方法として、最もシンプルなのは「自宅の売却」です。自宅を売却し、よりコンパクトな住居や生活利便性の高い地域の物件に住み替える「ダウンサイジング」を行えば、差額を老後の手元資金として確保できます。一方、「いまの家に住み続けたい」という方であれば「リースバック」があります。これは自宅を一度不動産会社などに売却し、その後は賃貸契約を結んで同じ家に住み続ける方法です。まとまった現金を一括で得られるというメリットがありますが、長期間住み続けたい場合は売却して手にした資金が枯渇するリスクもあります。たとえば、2,000万円で売却して月20万円の賃貸契約を結べば、単純に考えても10年間でお金が尽きてしまいます。売却資金を何に使いたいのか、今後の住まいをどうするのかといったライフプラン全体の視点から、慎重に契約することが大切です。

新居への住み替えを検討される方もいるでしょう。その際の大きな課題が、不動産購入資金の確保です。多くの方が主な収入源となる公的年金だけでは住宅ローンが組みにくく、新たな住まいの購入は難しいと感じるかもしれません。そこで有力な選択肢となるのが、自宅を担保に融資を受ける「リバースモーゲージ」です。これは、毎月の返済を利息のみに抑え、元金は契約者が亡くなられた際に担保物件を売却して一括返済する仕組みです。

例えば、郊外の広い一戸建てから、駅に近いコンパクトなマンションへ住み替えたいケースを考えてみましょう。現在の自宅の売却資金だけでは購入費用に届かない場合でも、新居を担保にして不足分を「リバースモーゲージ」にて借りられれば、手元の預貯金を大きく取り崩すことなく新しい生活をスタートできます。また、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供する【リ・バース60】は住み替えだけでなく、住宅の建設やリフォームなどを中心に、住まいに係るお金に限定して融資を受けられますが、民間金融機関の商品によっては生活資金なども対象となる場合があり、幅広い用途に利用できるのも大きなメリットです。

いずれの方法も一長一短があり、どの方法が最適かは、ご相談者の資産状況、健康状態、そして「子どもに家を残したいか」といった意向によって全く異なるため、ご本人、ご家族の意向をよくお聞きしたうえでご提案するのがベストだと思います。

拡大する「リバースモーゲージ」市場の現状と活用の注意点

日本におけるリバースモーゲージ市場は、高齢化社会の進展とともに近年拡大傾向にあります。主な金融機関におけるリバースモーゲージの融資残高は増加傾向にあり、「【リ・バース60】の利用実績等について(2025 年1月~3月及び 2024 年度分)」によると、2024年度の申請金額(累計)は約1,490 億円まで増加しています(前年度1,247億円)。また、同データによると利用者の平均年齢は69.5歳、平均融資額は約1,667万円となっており、資金使途で最も多いのは「注文住宅」(33%)で、「戸建てリフォーム」(24%)、「借換え」(15%)と続きます。これらのデータは、リバースモーゲージがより豊かで安心なセカンドライフを実現するための「資金戦略」としても活用されていることがよくわかります。

データを公表している住宅金融支援機構の【リ・バース60】は、担保となる対象物件が一戸建てだけではなく、マンションも対象になること、また、前述したとおり、住み替え、リフォーム、住宅ローンの借り換えやサービス付き高齢者住宅の入居一時金といった住まいに関する多様な用途に利用できる点がメリットです。しかし、「リバースモーゲージ」には注意点もあります。まず、金利は変動型が主流のため、将来の金利上昇リスクを考慮する必要があります。また、あくまで借金であることには変わりなく、利用にあたっては相続人との事前協議が不可欠です。特に、担保物件の売却額がローン残高を下回っても相続人に返済義務が生じない「ノンリコース型」を利用しない場合は、相続人に思わぬ負担を残す可能性もゼロではありません。これらのデメリットがご自身の価値観と合わないと感じる場合は、ほかの選択肢を幅広く検討すべきです。

相続で揉めないための家族会議と長期的な資金計画

いずれの選択肢を選ぶにせよ、最も重要なのは「長期的な視点での資金計画」と家族の合意です。特に「リバースモーゲージ」を利用するうえで、資金計画と並んで最も重要なのが「相続」に関する問題です。この制度は、契約者の死亡後に担保物件を売却して元金を返済する仕組みであるため、相続人の協力が不可欠となります。

契約者が亡くなられた場合、相続人は「自己資金で一括返済して家を引き継ぐ」、または「担保物件を売却して返済に充てる」、いずれかの選択を迫られます。どちらを選ぶにせよ、まずは誰がその家を相続するのかを遺産分割協議で確定させなくてはなりません。​

こうした手続きを円滑に進めるため、取扱機関によっては「リバースモーゲージ」の申込時に推定相続人の同意や、制度説明時に推定相続人の同席を求めます。これは親が亡くなってから初めてローンの存在を知り、困惑するような事態を避けるためです。特に「将来は実家を自分が引き継ぎたい」と考えているお子さんがいる場合、事前に話し合わなければ深刻なトラブルに発展しかねません。

FPとしては、借入時の金利だけでなく、将来金利が上昇した場合でも家計が破綻しないか、100歳ぐらいまでのキャッシュフロー表を作成してシミュレーションすることが不可欠です。また、推定相続人がいる場合は、親が元気なうちに家族全員で将来の住まいや資産について話し合い、全員が納得できる形を見つけておくことが、後のトラブルを避けるために何よりも大切です。こうした相続のリスクを事前に丁寧にご説明し、場合によっては家族会議の場を設けて、関係者全員の円満な合意形成をサポートすることも、FPの役割といえそうです。

推定相続人がいない場合は、将来の判断能力低下に備えた任意後見契約や、死後の手続きを託す死後事務委任契約、身元保証会社との契約なども視野に入れる必要があります。これらを踏まえて、FPとしては金融知識に加え、法律や介護の分野まで含めた幅広い視点から、お客様一人ひとりに寄り添うことが求められているのではないでしょうか。

アコーディオン目次

お話を伺った方

CFP®認定者 相続診断士、住宅ローンアドバイザー、住まいのお金相談室 代表

有田 美津子 氏

大学卒業後、地方銀行にて法人・個人向け融資業務に従事。その後、子育て専業主婦を経て、不動産販売会社、損害保険会社、メガバンクでの住宅ローン相談窓口業務を経験。実務経験と生活体験を活かし、FPとして独立。現在は、住宅購入、住み替え、リフォームの資金計画から実行支援、介護や相続を見据えた世代をまたぐ相談など、住まいのお金に関するコンサルティングを中心に活動。特に、中立の立場から顧客に寄り添ったアドバイスに定評があり、各種セミナー講師や雑誌等への執筆も多数。

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