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公開:2026.01.15
【資産運用】第2回目は新NISAのスタート以来、投資初心者から経験者まで幅広く人気を集める「全世界株式インデックスファンド」と、その代表的なベンチマークである「MSCI ACWI(MSCI All Country World Index)」について解説します。
2024年からスタートした新NISAをきっかけに、大きな注目を集めた「全世界株式インデックスファンド」。インデックス投資ブロガーなどの発信をきっかけに流行語やヒット商品に選ばれるなど、資産運用に興味がない人も含めて話題となりました。
そんな、全世界株式インデックスファンドの多くがベンチマークに設定している指数がMSCI ACWI (MSCI All Country World Index)です。
メディアなどでしばしば使われる“オルカン”という言葉は、三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の愛称として商標登録されたもので、一般的な全世界株式インデックスファンドを総称するワードではありません。
全世界株式インデックスファンドの多くがベンチマークとするMSCI ACWIは、米国のインデックス・プロバイダー(指数提供会社)、MSCI Inc.が算出する指数で、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)をはじめ、世界の機関投資家といわれる運用の専門家たちに最も活用されている全世界株式を対象とした指数です。
これを構成しているのは、先進国23カ国と新興国24カ国、合計47カ国(図表1)の株式市場に上場している銘柄です。先進国と新興国の分け方については、業界として統一定義があるわけではなくインデックス・プロバイダーによって異なりますから、これはあくまでMSCI基準での分類になります。また、構成国も固定されているわけではありません。直近でいうと、ウクライナ侵攻を受けてロシアが新興国から除外され、2022年3月9日から現在の47カ国になりました。

構成する株式は、前述の47カ国の投資可能な株式の時価総額の約85%をカバーする2,509銘柄(2025年9月30日時点)です。銘柄は1年に4回、定期的に入れ替えが行われ、時価総額が小さくなった企業は除外され、85%の水準に入る規模になった企業は新たに組み入れられます。直近の銘柄数はハイテク株の大型化が進んでいることから、やや減少傾向です。具体的には、2024年6月末時点の組み入れ数は2,760銘柄で、1位はマイクロソフトの4.28%、上位10社が占める割合は22.28%でした。これが2025年9月末時点の1位はエヌビディアで5.04%、上位10社の合計は24.52%です。逆の視点から見ると、残りの約75%を2,499社で構成しているということになり、構成銘柄のうち最下位の2,509番目の企業が占める割合は極めてわずかであるだろうことが推察できます。MSCI ACWIは時価総額の上位85%をカバーすると定義されているため、上位銘柄の時価総額規模が大きくなると銘柄数が減少することになります。
構成国や構成銘柄の選択基準はすべてルール化されて外部へも開示され、恣意的に行われない形になっています。一定のルールのもとで計算され続けているのがMSCI ACWIです。
MSCI ACWIの構成内容について、もう少し詳しく見ていきましょう。
直近(2025年9月30日時点)のファクトシートによると、構成国ごとの株式時価総額比率は日本を除く先進国が約85%でそのうち約65%は米国です。日本が約5%ですから、世界の株式時価総額は先進国だけで約90%を占めていることになります(図表2)。

1993年12月時点においては米国が約35%、日本が約23%だったこともあり、現在の米国比率約65%について“全世界株式”と称しているものの米国に集中している現状をリスクだという声もあります。確かに、時価総額で見ると米国企業の割合が高いことは間違いのない事実です。ただ、米国企業の株式時価総額は“米国”として100%カウントされますが、経済がグローバル化している現在では米国企業であっても国内だけでビジネスを行っているわけではありません。
実際のビジネス上の売り上げを見ると、グローバルにバランスが取れているというデータもあります。どの地域でビジネスをしているかという視点で見ると見え方が変わってくることから、必ずしも米国経済の動向のみがMSCI ACWIにとって大きなリスクであるとはいえないのではないでしょうか。
私は以前から、資産形成は全世界株式インデックスファンド1本でいいと提案してきました。その真意は、すべての国のすべての企業の株主になれば、リスクは幅広く分散され、世界経済の成長に合わせてリターンを得ることができるからです。
個別株のリスクを極力取らず、企業分析などをして銘柄選択をする必要もなく、誰もが世界中の株式に分散投資することを実現できるのが全世界株式インデックスをベンチマークとするファンドです。
もちろん、全世界株式インデックスはMSCI ACWIだけではありません。MSCIと並ぶインデックス・プロバイダーとして知られる、英国のFTSE(Financial Times Stock Exchange)Russell が算出するFTSE Global All Cap Indexという指数もあります。
いずれも、世界の株式を対象とした時価総額加重平均型の株価指数で、構成国にも大きな違いはありません。異なるのは構成銘柄で、MSCI ACWIが大型株、中型株のみで市場カバー率は約85%なのに対し、FTSE Global All Cap Index は大型株、中型株だけでなく小型株も含み市場カバー率は約98%です。MSCI ACWIよりも幅広く小型株までカバーしたいと考えるならば、FTSE Global All Cap Index をベンチマークとするファンドを選択するというのもいいでしょう。小型株まで含むためボラテリティとリターンがやや高めともいわれますが、パフォーマンスについて大きな違いはありません。
ちなみにMSCI ACWIは1987年12月31日から計算が始まり、設定来の年平均利回りが2025年9月30日時点において9.215%です。約38年を経過して、この実績は素晴らしいパフォーマンスといえるでしょう。直近10年の14.85%、5年の22%という年率リターンは少し割り引いて考える必要があると思いますが、いずれにしても高い水準であることは確かといえます。
全世界株式インデックスは全世界の株式を対象にした平均のようなものですから、ある特定の期間を区切ればアウトパフォームする個別株やアクティブファンドが出てくるのは当然です。株価は需要と供給のバランスによって決まりますが、その要因には企業業績や景気、金利、為替、政治・社会情勢などさまざまなものがあり、これらを一般生活者がモニタリングすることはほぼ不可能といえます。また、数年から十数年に一度は××ショックといわれる大暴落も起きます。そういった状況では、業種によって早く回復するところもあれば、なかなか回復しづらいところもあるでしょう。全世界株式インデックスであれば、早めに業績が回復して時価総額が回復した企業の割合が自動的に高まっていくことになりますから、銘柄の取捨選択に手間をかける必要もありません。
ファンドのパフォーマンスをモニタリングしている調査会社のデータを見ても、インデックスファンドを上回るアクティブファンドは多くないという事実があります。そのくらい、将来を予想して値上がりする銘柄を選択することは運用の専門家であっても難しいことですから、国内で販売されている6,000本近い公募投資信託の中から、一般投資家がインデックスを上回るアクティブファンドを見つけて投資し、保有し続けることは至難の業であろうことは想像に難くありません。ならば、シンプルに全世界株式インデックスファンドを保有し続けることが、手間がかからず資産形成できる方法として、多くの人に共通する最大公約数的な最適解といえるのではないでしょうか。
※本記事にて記載した情報は、取材対象者の見解を掲載したものであり、当協会の意見・方針等を示すものではありません。本記事に掲載されている内容に関して、資格・認可が必要となる業務が含まれている場合があります。そのような業務を行う場合、当該資格や認可を得るか、もしくはそれらを有する専門家と協働して実行することが必要になります。
| 第1回 | ファイナンシャル・ウェルビーイングを実現するための資産形成 |
|---|---|
| 第2回 | 「全世界株式インデックスファンド」がシンプルで手間のかからない資産形成に最適な理由 |
| 第4回 | 公開をお楽しみに! |
| 第5回 | 公開をお楽しみに! |
| 第6回 | 公開をお楽しみに! |
CFP®認定者 株式会社ウェルスペント 代表取締役
横田 健一 氏
野村證券株式会社勤務を経て、2018年1月に独立。「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」を運営。家計相談やライフプラン・シミュレーションの提供を行い、個人の資産形成をサポート。ウェルビーイング学会会員(ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会所属)。「ファイナンシャル・ウェルビーイング検定」全面監修。近著「増やしながらしっかり使う 60歳からの賢い「お金の回し方」」(KADOKAWA)
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