公開:2025.09.02

40代からのキャリアチェンジと資産形成戦略(上)

キャリアチェンジの収入減リスク

40代からのキャリアチェンジは、長期的にはキャリアアップにつながる可能性がある一方、一時的に収入が減少するリスクを伴います。特に、未経験の分野へ挑戦する場合は過去の実績が評価されにくく、前職よりも低い年収でスタートするケースは少なくありません。

職場が変わると、みなし残業制に変わったり歩合給の割合が高まったりなど給与体系が変化する可能性もあります。独立開業の道を選んだ場合は、事業が軌道に乗るまでに数年かかることも珍しくありません。

一方、40代は子どもの進学に伴う教育費の増加や住宅ローンの返済などが重なり、家計の負担が重くなりやすい時期です。新しいキャリアに必要なスキルを習得するため、自己投資が必要になることも多いでしょう。その結果「毎月の生活費が足りない」「老後に向けた貯蓄が進まない」といった事態に陥る可能性があります。

年収以外に確認すべき長期的視点

40代からのキャリアチェンジは目先の月収だけではなく、長期的な収入にも影響を及ぼします。例えば、多くの企業の退職金制度は勤続年数が長いほど有利になるように設計されています。40代で転職すると、定年まで勤め上げた場合にもらえるはずだった退職金を失い、生涯年収で見たときにマイナスになってしまうこともあるでしょう。

図表 事務・技術系(総合職)の退職金モデルケース

勤続年数大卒(年齢)高卒(年齢)
10年305万7,000円(32歳)203万8,000円(28歳)
20年1,021万6,000円(42歳)653万1,000円(38歳)
30年2,054万5,000円(52歳)1,470万5,000円(48歳)
定年2,858万4,000円(65歳)2,162万5,000円(65歳)
出所:厚生労働省 中央労働委員会「令和5年賃金事情等総合調査」を基に日本FP協会作成

また、会社員から個人事業主になる場合は厚生年金から国民年金に切り替わるため、将来受け取れる年金額が減少するリスクがあります。

しかし労働人口の減少や人材の流動化が進む中、一つの職場やキャリアにとどまることが必ずしも安泰とは言えない現状があります。環境が変わっても能力を発揮し続けられるよう、自身のスキルやキャリアの棚卸しを定期的に行うとともに、収入減にも対応しうる家計管理が必要です。

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