FP・専門家に聞く
2025.09.11
【生命保険】使わないともったいない?“付帯サービス”とは(平野敦之氏)

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公開:2025.09.11
ベテランのFPや経済の専門家が、FPに関わるさまざまなテーマやトピックスについて、全6回にわたり解説します。「生命保険」第4回目は、新たな付加価値として広がりを見せる生命保険の付帯サービスについて紹介します。
生命保険の付帯サービスとは、保険商品としての保障ではなく、保険契約をすることで契約者が利用できるサービスです。保険会社が契約者に対して健康や医療、介護、生活などに関する相談やサポートを行うもので、単に保険金や給付金を支払うだけでなく、これまでとは異なる価値のサービスを提供しています。
保険商品に直接的に関係しないサービスまでを行うようになった理由は、保険会社間の競争が厳しくなる中、保障内容以外で差別化を図るためです。また、さまざまな技術が進化し病気の発症や再発の予防ができるようになってきたことから、保険会社が健康診断や治療のサポートを行うことで、予防や早期発見、重症化を防止することが可能な時代になりました。これらは保険会社にとって給付を減らすことにもつながるため、さらに契約者への還元を拡大してサービスを充実させることができます。契約者にとっても、保険金などを受け取る前から保険加入のメリットを感じられるため満足度が高いといいます。保険会社と契約者の双方にとってメリットもたらしているのが付帯サービスなのです。
付帯サービスとして提供されているものには、具体的にどんなサービスがあるのでしょう。多くの生保会社が提供しているものを大きく分けると、「健康・医療」「介護・福祉」「生活全般」の3分野に分類されます(図表1)。
「健康・医療」分野の主な付帯サービスとしては、健康情報全般について医師や看護師などへ相談できるサービスがあります。24時間対応しているものも多く、深夜・早朝の急な体調不良などの際は役に立ったという声が多いようです。
病気がわかったときは、現在の自分の病状や治療方針について主治医以外の見解を聞いたり、セカンドオピニオンを依頼する医療機関を紹介してくれるサービスもあります。重篤な病気の場合、違う医師の話も聞いてみたい、別の治療方法もあるのではないかと思う人は多いのではないでしょうか。今はインターネットで多くの情報を得られる時代ですが、体調が悪いと調べるエネルギーや余裕がないことも考えられます。そんなとき、電話などで病院や専門医を紹介してくれるのは心強いサービスといえます。
ほかにも、心の問題や精神的な悩みの相談に、心理カウンセラーが対応してくれるサービス、健康診断や人間ドック、PET検診などを行う提携医療機関の紹介や予約代行、割引・優待、入院や転院に関わる手続きや移送手配のコーディネートなどを行っている生保会社もあります。
「介護・福祉」関連としては、公的介護保険の利用などに関する情報提供をはじめ、介護について看護師やケアマネジャーに電話などで相談したり、介護施設や介護サービス事業者などを紹介してもらうことができます。
「生活全般」に関するものとしては、ホテルや旅館、レジャー施設などの優待利用や、保険の更新時や保険料の支払いで提携する共通ポイントなどが付与されるといったものがあります。また、ご近所トラブルや消費者契約、税金、相続といった問題について、専門家からアドバイスを受けられるサービスを行う会社もあります。
サービスの種類 | サービスの主な内容 | |
---|---|---|
健康・医療 | 健康相談サービス | 医師・看護師等から健康・医療・育児等に関する電話相談を受けられる。訪問相談やネット(メール)で相談ができる会社も |
セカンドオピニオンサービス | 主治医以外の医師(総合相談医)と面談し、現在の診断に対する見解や今後の治療方針について意見を聞くことができる。セカンドオピニオンの結果、より高度な専門医療が必要と判断された場合に専門医を紹介してくれるサービスも | |
情報提供・検索サービス | 契約者専用サイト等を通じて、健康、医療に関する情報等を閲覧したり、夜間・休日に受診できる医療機関を検索できる | |
人間ドック・検診サービス | 人間ドックや脳ドック、PET検診等を受診できる施設の紹介・予約・優待利用のサービス。がんや生活習慣病、ピロリ菌等の検査キットを使って自宅で検査できる郵送検査を優待利用できるサービスも | |
がん相談サービス | がんなどの特定の疾病についての治療など様々なことをサポートする。他にも糖尿病など特定の疾病に特化したサポートなどを提供するケースもある | |
メンタルサポートサービス | 「精神的な悩み」や「こころの問題」などについて、医師、臨床心理士、精神保健福祉士等からのカウンセリングを受けられる。がんと告知された場合のメンタルサポート等、症状を限定しているサービスも | |
入院・転院サポート | 国内での転院や患者移送にかかわる手続き・手配を無料でコーディネートするサービス。移送費などの実費は契約者負担となるが、転院・移送手配の代行料は無料 | |
介護・福祉 | 介護相談サービス | 看護師・ケアマネジャー等から介護の方法、公的介護保険の利用方法等に関する電話相談を受けられる。訪問相談やネット(メール)相談もある |
介護施設等の 紹介・利用サービス | 介護サービス事業所や有料老人ホームの紹介、介護用品・福祉機器の取扱業者への取り次ぎ。 利用を申し込んだ場合、一定期間無料または割引料金で利用できる。配食、家事代行(室内清掃、洗濯、買い物等)の優待利用サービスも | |
情報提供・検索サービス | 契約者専用サイト等を通じて、介護、日常生活に役立つ情報等を閲覧できる。また、有料老人ホーム等 の介護施設、介護事業者を検索できる。他にも介護施設などの紹介や介護用品などの業者への紹介・取り次ぎなどを行う紹介・利用サービスなども | |
生活全般 | 各種優待・ 福利厚生代行サービス | 引っ越しサービス、旅行やレンタカー、スポーツクラブ、家事代行など、幅広いサービスを割引価格で利用できる。福利厚生サービス代行会社と提携し、サービスを提供している会社もある |
ポイントサービス | 契約内容の確認、家族情報の提供、契約更新時など、定期的に付与されるポイント・マイルを貯めて、カタログギフト等の景品と交換できる | |
くらしの相談サービス | 弁護士・税理士等の各種専門家から法律・税務・年金等に関する電話相談を受けられる |
多くの生保会社が用意している付帯サービス以外にも、独自色が強いサービスを行っている会社もあります。
たとえば、少量の採血で認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)のリスクを調べたり、自宅で尿を採取するだけでがんのリスクを判定できるスクリーニング検査を受けられるなど、健康診断や人間ドックよりも手軽な方法で病気の早期発見を促すサービスがあります。あくまでリスク判断的なものではあり、診断ではありませんが、本格的な検査を早期に受けるきっかけになるのではないでしょうか。
ほかにも、高齢期の資産管理に不安を感じる人が増えていることから注目されている民事信託の制度に関する相談から、信託設計先の紹介までを行うサービスも提供されています。また、契約者が存命中は照れくさくて伝えにくいメッセージを動画として残し、保険金の受取人へ死亡保険金などの支払い後に届けるといったサービスを行っている会社もあります。事前に家族へ知らせることなく登録ができ、作成したメッセージ動画は内容を更新することもできます。
契約者にとってメリットがある付帯サービスですが、上手に使いこなすためには注意すべき点もあります。というのは、あくまで商品に付帯されるサービスで、約款に定められたものではないからです。付帯サービスの内容については2014年に成立した保険業法の改正で、保険加入の適否を判断するのに必要な情報として保険募集時には内容を伝えなくてはならないとされましたが、内容が変更される可能性もあるので定期的に確認する必要があるのです。
おすすめの方法としては、保障や契約内容の確認のため毎年送付される「契約内容のお知らせ」が届いたタイミングで、①付帯サービスの内容と利用条件、②誰が利用できるのか、③連絡方法、を確認します。というのは、付帯サービスの中には急に必要になるものも多いからです。そのため、定期的に内容を確認し、理解しておくことが大切です。いざというときに利用し損ねることになってしまいますし、契約後に付帯サービスの内容が変更・中止されることや、逆に新たなサービスが追加される場合もあるからです。
また、利用できるのは契約者だけと思い込みがちですが、サービスによっては同居家族など利用できる対象を広げている場合もあります。いざというときはすぐに付帯サービスの利用について連絡できるよう、アプリをダウンロードするなどして必要な情報を登録しておくとよいでしょう。
付帯サービスと保険料の関係は開示されていないため詳細は分かりませんが、原則として無料のサービスなどは保険会社がコストを負担しています。これが保険業法第300条第1項第5号の特別の利益の提供の禁止に該当するのではという議論がありました。金融庁は付帯サービスが消費者の商品選択の判断に影響を及ぼしかねないことなどを考慮して、保険会社向けの総合的な監督指針(2019年10月改正)にて、保険商品と関連性が大きい付帯サービスは、保険商品の認可折衝時に顧客保護関連情報として報告が必要となる旨を定めています。
付帯サービスは、保険選びにおいて第一優先ではありません。保障内容と保険料を比較した上で、さらに複数の候補が残った場合は確認してみるのもいいかもしれませんが、あくまで保険に付帯してプラスされているものと考えましょう。
とはいえ、現時点では付帯サービスについて十分に理解していない方も少なくありません。一方で内容を知っている人は必要なときに上手く活用しています。医療関係のサービスは使う機会がないことが一番ですが、役立つものも多いため、必要に応じて利用することで病院や専門医を紹介してくれたりと有用な情報が得られます。せっかく用意されているサービスを知らないことほど、もったいないことはありません。積極的に利用することは、加入期間中も保険商品のメリットを享受することにつながります。
CFP®認定者、平野FP事務所 代表
平野 敦之 氏
証券会社、損害保険会社などでの実務経験を活かし、1998年から独立系FPとして活動。リスク管理の側面から家計の相談業務や、企業の支援を行う。各種媒体での情報発信をはじめ、行政や企業の研修、大学、消費者向けセミナーなど、講演や執筆活動も積極的に行っている。
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