公開:2025.09.17

更新:2025.09.19

米ドル以外にユーロにも投資するメリットはあるか?~対円レートから読み解く~【トレンド+plus】

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ユーロ投資のメリットはあるか、という問いを聞くことがしばしばありますが、この言葉の裏には、「ドル投資だけで良いのか」という疑問が隠れているケースも多いと考えられます。
それに対する考え方の一つとして、為替変動のリスクを少なくしようと思えば、ドルだけではなく、ユーロにも分散投資をするという見方があります。

2025年9月時点でのドル建て長期国債(10年)は税引き前で4.0~4.2%程度の利回りです。それに対して、ユーロ建て長期国債(10年)は税引き前で2.5~2.7%です。
利回り比較ではドル建て長期国債だけに投資した方が良いと感じる方もいるかもしれません。
しかし、外貨投資は為替変動のリスクを負うため、ドル建て長期国債のみを選んだときはドル円の為替変動に運用成績が大きく振り回される可能性があります。

もしも、為替変動リスクを軽減したいならば、ドル円とは反対の値動きをする資産を同時に持っておく手があります。

今後、ドル円が円高になるかどうかははっきり言って、誰にもわかりませんから、ドル一本で外貨投資をするよりも、分散投資をしておく方がよいと考えることができるでしょう。

その候補の一つとなり得るのがユーロです。
理由は、ドルとユーロの値動きがそれぞれに違っているからです。その関係性を見るために、主要通貨として、ドル(米ドル)・英国ポンド・豪ドル・カナダドル・スイスフラン・NZ(ニュージーランド)ドル・カナダドルを取り上げ、2024年1月を100として、対円での各国通貨のレートがどう変化したかを比較してみしょう(図表1)。

図表1■主要通貨の対円レートの推移

出所:日本FP協会作成

7種類の通貨のうち、ドルと豪ドル、カナダドル、NZドルの4つは同じように動くグループを形成しており、ユーロとスイスフラン、ポンドの3つはまた別の変動をしているように見えます。

2025年4月にトランプ大統領が相互関税を発表してから、株式・債券・通貨の各市場が大きく荒れました。そして、4~9月にかけてはドル安の傾向がありました。

日本からドル円ばかりを見ているとわかりづらいのですが、同時期の各国通貨のレートを調べていくと、ユーロなど欧州通貨にシフトしているようにも見えます。世界の投資家がドル安のリスクに対して、ユーロを分散保有することでリスクヘッジしようと考えているのかもしれません。

こうした各国通貨の変動を別の分析手法でみてみましょう。相関係数を調べる分析です。2024年1月から現在までのドル円と他の6つの主要通貨の間の相関関係を調べました。

図表2■主要通貨の対ドル円レートの相関係数(2024年1月~2025年9月)

出所:日本FP協会作成

ドル円との相関が高いのは、カナダドル、NZドル、豪ドルでした。

ユーロは逆相関(マイナス)にはならないものの、相関係数は約0.30程度と低い傾向にあります。
なお、スイスフラン円はドル円との相関がほぼゼロです。分散という観点で見るとスイスフランに投資する手もありますが、スイスフラン建て長期国債(10年)の利回りは0%台なので、ある程度の収益性を求める場合は魅力に乏しいと感じるかもしれません。

このような背景があり、ドル投資をするときに為替変動を相対的に小さくしようと思えば、ドルとの相関が比較的薄く、ある程度の利回りもあるユーロに投資するという見方につながるのでしょう。
ドルとユーロに半分ずつ投資をすれば、ドル安とユーロ高が相殺し合って、いくらかデコボコが均されます。これこそが、分散投資の効果なのです。

人によっては、収益性が第一という考え方もあるでしょう。図表1のようにドル円よりもユーロ円の方が現時点ではパフォーマンスがよいので、ドル投資は止めてユーロ一本の投資にしようという考え方です。
しかし、外貨投資のすべてをユーロに集中投資すると、今度は将来ユーロ安円高に振れたときに相対的に大きなリスクを負います。

ドルであってもユーロであっても、外貨投資である以上、為替変動リスクは避けられないため、分散投資をして、それぞれの変動によるデコボコを均す方が相対的に効率的だというのがポートフォリオ理論の教えるところです。

記事の内容は、取材先や執筆者等の見解を示したものであり、日本FP協会の意見・方針等を示すものではありません。

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