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公開:2025.12.03
2025年10月に例年この時期に発表されるノーベル経済学賞を経済史のジョエル・モキイア氏、理論経済学のフィリップ・アギヨン氏、ピーター・ホーウィット氏の3氏が受賞しました。「イノベーション主導の経済成長の解明」が受賞理由です。
かつて、「イノベーション」(技術革新)という言葉を生み出したのは、ジョセフ・シュンペーター(1883-1950年)です。
新しい技術が生まれると、それに伴って古い技術が淘汰されて世代交代していきます。この世代交代が経済成長を引っ張るという考え方です。
昔は音楽を聴くときはカセットテープに録音していましたが、その後CDが普及して、カセットテープは姿を消しました。そのCDも現在は音楽をスマホにダウンロードすれば手軽に聴けるようになったため、消滅しつつあります。
この世代交代で多くのオーディオ業者とレコード・CDショップが淘汰されましたが、音楽市場は何倍にも膨らんでいます。生成と淘汰がセットになって、市場を膨らませていくことが、技術革新=イノベーションによる成長です。
シュンペーターは、どうすれば技術革新が起こるのかという点は、新しい知識が組み合わされることだ、つまり「新結合」だと言っていました。
この議論は素晴らしいものですが、よく考えてみると「なぜ、イノベーションが起こるのか?」、「どうして新結合が進むのか?」という重要な点がぼやけています。技術革新の種は、経済活動の外側から成り行き上で生じてくる存在のようにも感じられます。これを外生的イノベーションと呼びます。
今回ノーベル賞を受賞した3名のうち、アギヨン氏とホーウィット氏の研究は、ここを見直して定式化したところが、高く評価されたと考えられます。
イノベーションの種は、研究開発投資です。成功する保証はありませんが、成功すれば巨大な利益を手にすることができます。この成功の利益とは、既成の技術から利益を得ている事業者から利益を奪い取るものにもなります。世代交代とは、パッケージとなっていた1世代の技術を陳腐化させる次の新世代技術を確立することで利益を奪うというプロセスに定式化できます。ならば、これを数式にして定式化できます。経済の外ではなく、内部の要因で動かせるという意味で内生的イノベーションのモデルを描いたところが、アギヨン氏とホーウィット氏の研究の凄いところです。
定式化したと聞くと、「何だ、数式にしただけか!」と思われるかもしれませんが、そうではありません。数式にすると、この仮説が正しいかどうかを実証できます。数式にすることで仮説が否定される可能性もあり、次なる定式化が進む可能性もあります。内生変数として様々な要因を加えて、イノベーションのメカニズムを検証できる点も大きな可能性を秘めた研究と言えます。
あらためて、今回の研究がなぜノーベル賞級なのかという点を考えると、今まで所与の条件であった技術とその進歩を「それを動かすメカニズムは何か?」と捉え直して、数式の中に落とし込んで分析したところでしょう。何となく専門家が当たり前と思っていたことを精緻に分析し直すという発想がノーベル賞級だったのだと思います。
記事の内容は、取材先や執筆者等の見解を示したものであり、日本FP協会の意見・方針等を示すものではありません。
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